2015 Fiscal Year Research-status Report
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた胎盤薬物透過性評価系の構築に関する研究
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26460242
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
池田 賢二 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (10434812)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | iPS / シンシチオトロホブラスト / 胎盤 / 胎児移行性 / 妊娠時薬物療法 / 薬物透過性 / 評価モデル / Drug Placental Transport |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までで、既に樹立されているヒトiPS細胞株の分与(以下iPS細胞)を受け、シンシチオトロホブラストへの分化条件を検討し、分化試薬の特定など一定の成果を得た。今年度はまず、フィーダーレス培養法への移行に際し、マトリゲルコーティングによって安定した分化誘導が行えることが判明した。また、胎盤関門モデルとして最も重要な細胞層となるシンシチオトロホブラストへの分化誘導については、既報の分化条件である高濃度(bone marrow protein 4)BMP4に加えてよりシンシチオトロホブラストへの分化率が高いと考えられる分化誘導剤の検討に取り組んだ。これによってiPS細胞から分化誘導を行ったシンシチオトロホブラストは、指標であるHuman Chorionic Gonadotropin (hCG)の十分な分泌能を有した細胞への分化が認められるものの、分化条件によってその分化率は大きく異なることが明白となった。さらに、胎児移行性を評価するための細胞層形成の初期段階として、一極集中的に増殖するiPS細胞を広範囲で増殖させるための分散培養法の検討にも取り組んだ。次年度では、シンシチオトロホブラストへの高効率的な分化条件、および広範囲分散培養法の確立を行い、シンシチオトロホブラスト層モデルの構築を行う。一方、同時に次年度に展開する医薬品の胎児移行性評価に向けて、セルカルチャーインサートのメンブレン上での培養が可能であること、加えて経上皮電気抵抗値TEERが十分に高値となることを確認する。さらには、胎児側層にマイクロウェルを備えた透過性評価法によって細胞レベルでの透過性評価の検討も引き続き視野に入れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らはこれまでに、妥当なバリア能および胎盤における物質透過を制御しているシンシチオトロホブラスト層を表現し得るin vitroモデルを確立してきた。しかしながら、実地医療上必要となる服用後定常状態における胎児血/母体血中濃度比をin vitroモデルで測定したところ、治療濃度域での正確な胎盤薬物透過性指標とするには、シンシチオトロホブラスト類似性をさらに改善する必要があることが明白となった。そこで本申請課題は、指標としての意義を高めるために人工多能性幹細胞(iPS細胞)の生体内類似性に着目し、iPS細胞を用いた胎盤薬物透過性評価モデルの構築を検討するものである。 目的達成のため、これまでにiPS細胞の維持培養および分化誘導法の導入を行い、シンシチオトロホブラストへの分化誘導が可能であること、またより適正な分化誘導剤を確認した。現在までの達成度は概ね順調に進行していると判断できる。しかしながら、薬物透過評価モデルの構築のためには、細胞層の形成が不可欠である。iPS細胞をシンシチオトロホブラスト様に分化誘導し、さらに細胞層を形成させるためには、さらなる分化条件および維持培養条件の検討が必要であり、当初の計画以上に進んでいるとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後早急に解決すべき項目は、細胞層としての広範囲分散培養法の確立である。これを確立したのち、セルカルチャーメンブレン上にiPS細胞由来シンシシオトロホブラスト層を形成させるための条件探索を行い、バリアー能の確認として経時的TEER値の測定を行う。また、hCG分泌能を維持しつつ細胞層を形成する条件とセルカルチャーメンブレン上での維持培養条件の検討を並行して行い、薬物透過評価モデルとしての至適条件を決定する。iPS細胞由来胎盤薬物透過性評価モデルとしてのシンシチオiPS細胞の培養条件が概ね特定された後は、P-gpの基質であるバルプロ酸やBCRPの基質であるシメチジンを用いて、シンシチオトロホブラストで機能している各種トランスポーター機能が反映されていることを実証し、最終的に培養条件を確定する。また、既知の生体情報は、BriggsらによるDrugs in Pregnancy and Lactationなどの文献よりFetal/Maternal比(F/M比)を抽出し、本シンシチオiPS細胞モデルによるF/M比(F/MSiPS)との相関関係を確認する。次いで、確認された相関関係を背景としてF/MSiPSの妥当性を評価し、各疾患において妊娠時に用いられる可能性のある薬剤群間でのF/MSiPSの比較検討を行う。さらに妊娠時薬物療法安全性評価としての本指標の重要性を催奇形性との相関も含めて最終段階で評価し、公的機関への胎盤薬物透過指標の提案段階に向けて、本モデルの明確な胎盤薬物透過性指標としてのエビデンス蓄積を行う。
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Causes of Carryover |
現在までの達成度は、概ね順調に進行していると判断できる。購入試薬の金額の幅によってのみ生じた差額であり、計画に変更は無い。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点では特別計画に変更は無いため、次年度使用額と翌年分助成金使用額とを合わせた使用計画は、翌年分助成金使用額の使用計画と変更は無い。
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