2014 Fiscal Year Research-status Report
舌咽神経の発生を統御する分子基盤と咽頭弓分節の連関
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26460257
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大久保 直 北里大学, 医学部, 准教授 (10450719)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 咽頭弓 / 舌咽神経 / Ripply3 / Tbx1 / 神経分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
成体において無数の神経細胞が、秩序だって連結し機能するには、胎仔期に神経細胞が適切な数生み出され、適切な場所へ移動し、そして標的に軸索を伸長しネットワークを構築しなければならない。特に胎仔期は、神経系の組織以外の細胞もダイナミックに増殖、移動、分化しており、マウスでは、胎生8.5~10.5 日の間に咽頭弓の分節化が起こる。その間に外胚葉の鰓上板から派生した神経前駆細胞は、脳神経節(VII, IX, X)を形成し、その軸索は各咽頭弓分節に沿って、軸索を確実に標的へ投射する。例えば、舌咽神経(IX)は、舌の有郭乳頭や葉状乳頭の味蕾へ軸索を伸ばし味覚受容に関わる。 平成26年度は、2つの変異マウス(Tbx1ノックアウトとRipply3ノックアウトマウス)を用いて、咽頭弓分節の異常が神経分化および軸索伸長に影響を及ぼすことを見出した。Tbx1は、ヒトの先天性心疾患(DiGeorge症候群)の原因遺伝子で、一方Ripply3はTbx1の転写調節因子である。両ノックアウトマウスは、咽頭弓の表現型には違いが見られるが、結果的に舌咽神経の減少、軸索の伸長が大きく阻害され、その結果、舌の有郭乳頭の味蕾形成に異常が生ずることが明らかとなった。これらの結果は、Tbx1とRipply3が咽頭弓分節に続く舌咽神経の分化にも重要であることを示している。 また、酵母のTwo-hybrid スクリーニングにより、Ripply3タンパク質と結合する遺伝子をいくつか同定しているが、今年度はそのうちのWtipという遺伝子について解析を進めた。その結果、Wtipは咽頭弓領域で発現がみられ、Ripply3タンパク質と結合することが分かった。現在WtipのRipply3に対する作用機序について解析を進めている。もう一つの候補遺伝子Glyr1についても同様の解析を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tbx1およびRipply3ノックアウトマウスにおける舌咽神経の表現型に関して、定量的、形態学的な解析についてはほぼ終了した。現在第2咽頭弓から舌の前方域に投射する顔面神経の形成、および舌咽神経の伸長ルートと鰓弓動脈との関連性を形態学的に解析を進めている。そちらも結果が出始めており、咽頭弓の分節性の異常と脳神経の走行異常が生ずるphenotypicな推移を詳細に解明することができつつある。 また、Ripply3と結合する因子についていくつか新たな知見を得ることができた。今後、特異抗体の作製、遺伝子改変マウスの作製および培養細胞を用いた生化学的な機能解析を進めるための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
レチノイン酸(RA)シグナル関連遺伝子のノックアウトマウスの表現型と網羅的な遺伝子発現解析の結果から、RAシグナルによるRipply3遺伝子の発現調節制御と舌咽神経形成への影響があると予想し、その分子機構について解析する。RA 受容体のインバースアゴニスト(BMS493)やアンタゴニスト(BMS614)に暴露したマウス胎仔についてRipply3 の発現解析および舌咽神経形成への影響を形態学的に検討する。Ripply3の発現に関しては、Ripply3のプロモーターにEGFPをつないだトランスジェニックマウスを用いることで簡便にRAの影響を可視化できると考えられる。 Ripply3と相互作用する新規遺伝子Glyr1については機能が全く分かっていないが、そのアミノ酸配列情報からよく保存されたAT-hookモチーフを見出した。このモチーフに注目しGlyr1の機能に迫りたいと考えている。一方Wtipに関しては遺伝子改変マウスの作製を行い、咽頭弓の表現型解析を進める。 Ripply3の機能をより顕在化するため、Ripply3過剰発現トランスジェニックマウスの作製を行い、表現型解析を進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度、本研究課題に関連する論文を投掲中で、掲載料を計上していたが、リバイス等で時間がかかり、まだ論文受理に至っていない。そのため、本年度は未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿、掲載料に使用する予定である。
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