2017 Fiscal Year Research-status Report
舌咽神経の発生を統御する分子基盤と咽頭弓分節の連関
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26460257
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大久保 直 北里大学, 医学部, 准教授 (10450719)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Ripply3 / レチノイン酸 / 咽頭弓分節 / 舌咽神経 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ripply3は、マウスの咽頭弓の分節過程で咽頭弓内胚葉と外胚葉に特異的に発現し、Tbx1の転写能を調節するだけでなく、鰓上板由来の舌咽神経節の初期のマーカーになると示唆されている。しかし、Ripply3の詳細な作用機序や転写抑制複合体の実体、上流制御機構はまだ不明である。 平成29年度は、Ripply3の発現を上流で制御する因子の候補としてレチノイン酸に注目して研究を進めた。まず、妊娠マウスにおいて胎生7.5-10.5日の間に、レチノイン酸シグナルを阻害するための薬剤(BMS493)の投与条件、および過剰なレチノイン酸シグナルに曝露するためのAll Trans-Retinoic Acid (ATRA)の投与条件を検討した。その結果、BMS493を腹腔投与すると、胎生9.5-10.5日にかけて第3,4咽頭弓が低形成になり、Ripply3ノックアウトマウスと非常に似た表現型になることが分かった。一方、ATRAを腹腔投与した場合も、咽頭弓の異常が観察された。このように、適正レベルのレチノイン酸シグナルが、咽頭弓の形成に重要であることがわかった。そこで、BMS493およびATRAに曝したマウス胚において、Ripply3 mRNAの発現をin situ hybridizationにより解析したところ、対照群のマウス胚と比べRipply3の発現に顕著な差は見られなかった。以上の結果から、Ripply3の発現はレチノイン酸シグナルの直接的な制御下にないことが示唆された。しかし、BMS493ではレチノイン酸シグナルを完全に阻害できていない可能性があることから、今後は、レチノイン酸合成酵素Raldh2のノックアウトマウスをゲノム編集により作製し、Ripply3の発現への影響を解析し、咽頭弓形成および舌咽神経節の表現型を詳細に解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Yeast-Two-hybridスクリーニングにより単離されたRipply3と相互作用する因子のうち、Glyr1という遺伝子の機能解析を進めている。昨年度から、マウス受精卵へのエレクトロポレーションによるCas9導入システムを立ち上げ、Glyr1ノックアウトマウスの作製を進めており、F0世代のマウスが3ライン得られている。今後、これらノックアウトマウスを系統化し、さらにホモ個体を得るとともに、咽頭弓形成における表現型解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのBMS493やATRAの投与実験の結果は、予想とは異なっていた。恐らく子宮内にいるマウス胚においてレチノイン酸シグナルを十分に阻害するには、アンタゴニスト(BMS493)の処理だけでは不十分だと考え、レチノイン酸合成酵素Raldh2のノックアウトマウスを作製し、Ripply3の発現への影響を調べようと考えている。Raldh2のノックアウトは、当初計画していた単純なin-delを誘発するgRNAのデザインを変更し、2種類のgRNAを同時にマウス受精卵に導入しlarge deletionを誘発するような方法で作製を進めている。
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Causes of Carryover |
CRISPR Cas9によるゲノム編集に必要なgRNAの作製を、高額なキットを用いて自作で行っていたものを外部委託することにより格安でできるようになり、大幅にコストダウンできた。さらにエレクトロポレーションの条件検討を進めた結果、ノックアウトマウスの作成効率が上昇した。その結果、当初の予算の使用計画に変更が生じた。今後、差額分はマウス系統化のための飼育費などに使用する予定である。
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