2018 Fiscal Year Research-status Report
舌咽神経の発生を統御する分子基盤と咽頭弓分節の連関
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26460257
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大久保 直 北里大学, 医学部, 准教授 (10450719)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Ripply3 / レチノイン酸 / 咽頭弓分節 / 舌咽神経節 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ripply3は、マウスの咽頭弓の分節過程で咽頭弓内胚葉と外胚葉に特異的に発現し、Tbx1の転写能を調節するだけでなく、鰓上板由来の舌咽神経節の初期のマーカーになると示唆されている。しかし、Ripply3の詳細な作用機序や転写抑制複合体の実体、上流制御機構は不明である。平成30年度は、Ripply3の発現とレチノイン酸シグナルの関係に注目して研究を進めた。レチノイン酸アゴニストATRAやレチノイン酸受容体RARの阻害剤BMS493をE7.5~9.5日に処理したマウス胚の解析を行った。その結果、ATRAやBMS493処理したE9.5日胚ではRipply3の顕著な発現変化は認められなかったが、BMS493処理により典型的な第3,4咽頭弓の分節異常と舌咽神経節の形成異常が観察された。しかしBMS493処理では、レチノイン酸シグナルを完全に阻害できていない可能性があるため、レチノイン酸合成酵素Raldh2のKOマウスをゲノム編集により新たに作製しRipply3の発現を解析した。その結果、E8.5~9.0日のRaldh2 KO胚では重篤な体節形成異常が観察され、咽頭弓領域ではRipply3の発現がほぼ消失することがわかった。これらの結果から、アフリカツメガエルとは異なり、マウスのRipply3の発現は時期依存的に直接もしくは間接的にレチノイン酸によって調節され、咽頭弓分節や神経節の形成を制御している可能性が考えられた。以上、Ripply3の発現にはレチノイン酸シグナルが不可欠ではあるが、RARを介して直接発現が誘導されているかどうかは検討を要する。今後、Raldh2 KOマウスに対しレチノイン酸投与によるレスキュー実験を行い、Ripply3の発現が回復するか検証するとともに、レチノイン酸とRipply3がそれぞれどのような下流因子を介して咽頭弓分節を制御しているか解明していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レチノイン酸合成酵素Raldh2のノックアウトマウスの作製が当初予定した計画から遅れた。その原因は、単純なin-delによるフレームシフトを誘発したゲノム編集マウスでは、機能的なRaldh2 KOマウスを得ることができなかったことにある。そこで、gRNAのデザインを変更し、2種類のgRNAを同時にマウス受精卵に導入し、Raldh2の触媒ドメインを全て欠損させるlarge deletionを誘発するような方法に切り換えたことで、Raldh2 KOマウスを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Yeast-Two-hybridスクリーニングにより単離されたRipply3と相互作用する因子のうち、Glyr1の機能解析を進めている。現在Cas9システムを用いてGlyr1遺伝子座を改変したF0世代のマウスが得られている。今後、交配しgermline transmissionが確認された個体は系統化し、ホモ個体の作出を進め、咽頭弓分節および舌咽神経節の形成における表現型解析を行う。また、培養細胞を用いてGlyr1の細胞内局在やRipply3の転写抑制に対する影響についても解析し、アダプター分子としてのRipply3の作用機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
Raldh2ノックアウトマウスの作製方法の変更により、当初の完成予定から遅れた。それに伴い、Glyr1の遺伝子改変マウスの作製が最終年度にずれ込み、表現型解析や飼育、系統維持に掛かる費用を次年度に持ち越し、研究期間を延長することになったため、差額が生じた。
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