2015 Fiscal Year Research-status Report
アクアポリン2のトラフィッキングに重要な分子の同定とトラフィッキング機構の解明
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26460267
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松崎 利行 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30334113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向後 寛 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20282387)
向後 晶子 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20340242)
青木 武生 群馬県立県民健康科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70150919)
澤井 信彦 日本医科大学, 医学部, 講師 (70307916)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アクアポリン2 / アクアポリン3 / 腎臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、アクアポリン2の269番目のセリンのリン酸化が、バソプレシンに反応して細胞内でおこり、細胞膜へ移行すること、またバソプレシン拮抗薬を投与すると急激に細胞内へ取り込まれるが、その過程で脱リン酸化がおこることを原著論文としてまとめ、投稿した。また、追加実験として、リン酸化アクアポリン2に対する抗体の特異性を検討し、再投稿の準備をおこなった。また、アクアポリン2を含めて、腎臓でのアクアポリン全般について総説として学術雑誌に発表し、国際会議においてはキーノートプレナリーレクチャーとして成果を発表した。 加えて、27年度は、アクアポリン2とともに腎臓の集合管細胞で、水の再吸収にはたらくアクアポリン3について、胎仔マウスの造血細胞でも発現するという興味深い現象をみつけたので解析した。胎仔期の造血はまず卵黄嚢で始まり肝臓へ移行し、生まれる直前に骨髄へ移行する。生後骨髄での造血細胞、とくに赤芽球から赤血球ではアクアポリン1の発現がみられることはよく知られているが、造血がおこなわれているマウス胎生13日や16日の肝臓をRT-PCRと免疫組織化学で解析したところ、アクアポリン3の発現が多くの細胞でみられることが判明した。肝芽細胞と造血細胞とを判別するため、肝芽細胞マーカーであるアルファフェトプロテインや、赤芽球マーカーであるアルファ1スペクトリンとの二重染色をおこなったところ、アクアポリン3陽性細胞は肝芽細胞ではなく、ほとんどは赤芽球であることが判明した。また、アクアポリン1についても解析した結果、胎生13日ではほとんど発現がみられなかったが、16日ではアクアポリン3と同程度に陽性細胞が認められた。つまり、胎仔造血細胞ではアクアポリン3は早期から必要とされるが、アクアポリン1は遅れて必要となることがわかった。造血環境により必要とされるアクアポリンのアイソフォームが異なると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アクアポリン2のリン酸化の変化について、これまでの成果を原著論文としてまとめる過程で、確認のための実験等をおこない、時間がかかってしまった。また、追加実験をおこない再投稿の準備をおこなった。アクアポリン2のトラフィッキング機構の解明についてはやや遅れているが、アクアポリン3について新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アクアポリン2の269番目のセリンについては、バソプレシン刺激で細胞内小胞から細胞膜へ移行したアクアポリン2が細胞膜へ留まるために、リン酸化されることが重要であると思われる。我々の研究結果から、バソプレシン拮抗薬を投与すると、アクアポリン2が細胞内に取り込まれながら急激に脱リン酸化されることがわかった。このことから、脱リン酸化酵素のはたらきもアクアポリン2のトラフィッキングの調節には重要であると考えられる。これまでにカルシニューリンがアクアポリン2の脱リン酸化酵素として挙げられているが、アクアポリン2のカルボキシ末端付近の4つのセリンのうち、いずれのセリンの脱リン酸化に、トラフィッキングのどの過程ではたらくのかは調べられていない。我々は現時点で256番目のセリンと269番目のセリンのリン酸化に特異的な抗体を有しているので、これらセリンの脱リン酸化におけるカルシニューリンのはたらきを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
26年度の物品費の未使用額が大きかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に充てる。
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