2014 Fiscal Year Research-status Report
肺癌におけるR-spondin-Lgr6シグナル系の発現・機能解析
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26460436
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
橋本 修一 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00243931)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺癌 / 幹細胞 / Lgr6 / R-spondin / Wnt / beta-catenin |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的] R-spondin/Lgr6(ヒト肺幹細胞マーカー)受容体シグナルはWnt/β-cateninシグナルを増強する。本研究では肺癌(幹)細胞における同シグナル系の遺伝子変異解析と機能解析を目的とする。 [材料と方法] 初年度は、まず、Lgr6の構成exonに対するPCR用プライマーを作成し、ヒト肺腺癌細胞株(A549、PC9)およびヒト非肺癌細胞株(VA10、BEAS2B)に対し、Lgr6の変異解析をdirect sequence 法にて行った。次に、Lgr6プロモーター領域の非メチル化、メチル化特異的PCR用のプライマーを設計し、それらのPCR解析を行った。 [結果] Lgr6すべてのexonのdirect sequence 解析から、exon3、exon16に1ヵ所、exon20に3ヵ所の一塩基置換変異を認めた。このうち、exon16の1ヵ所、exon20の2ヵ所はsilent mutationであったが、exon3、exon20の1ヵ所はこれまでに報告のない新たな有意な1塩基置換変異であった。また、メチル化特異的PCR解析から、A549はメチル化のパターンが有意である結果を得た。以上の結果より、肺癌細胞においては、Lgr6遺伝子が変異によりあるいはそのプロモーター領域のメチル化のパターンにより発現の特異性が制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の [結果] の項で示したように、肺癌細胞株に対する予備実験においてLgr6遺伝子の全exon1~20をターゲットとしたそれぞれの至適PCR条件の設定もうまくいき、direct sequence解析も問題なく遂行することが出来ている。その結果、Lgr6 variant3のexon3の1ヵ所とvariant1のexon20の1ヵ所に有意な1塩基置換変異を見い出し、これまでに報告のない新たな結果を得ることが出来た。 また、メチル化特異的PCR解析もうまくいくことを示し、これにより、肺癌細胞株A549のLgr6遺伝子のプロモーター領域のメチル化の優位性を明らかにした。 これらの結果より、肺癌細胞のLgr6遺伝子が変異によりあるいはそのプロモーター領域のメチル化のパターンにより発現の特異性が制御されている可能性を示し、これまでに報告のない新たなヒト肺癌におけるLgr6発現制御機構の可能性を示すことが出来、有意義な結果を得ている。 以上のような理由から、判定は、(2)おおむね順調に進展している、と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、まずはヒト肺癌症例癌細胞および非癌部細胞からDNAを精製し、そのサンプルの収集を行う。これらのサンプルに対し、1年目のヒト肺癌細胞株を対象とした基礎実験より得られた条件をもとに、Lgr6の全exon PCR解析に基づくdirect sequence解析、およびメチル化特異的PCRによるLgr6プロモーター領域のメチル化解析を行い、ヒト肺癌症例を対象とした臨床研究を進めていく。次に、これらの解析から得られる結果をヒト肺癌細胞株から得られた前述の結果と対比することで、Lgr6遺伝子のヒト肺癌における機能解析を進めていく。また、これら遺伝子解析の結果と実際の肺癌症例の病理組織学的あるいは免疫組織学的Lgr6発現解析結果を比較することからもLgr6蛋白の機能解析を進めていく。 2年目から3年目(最終年度)にかけては、まず、Lgr6の野生型遺伝子をpIRESpuro3 (Clontech) に組込み、野生型Lgr6の発現プラスミドを作成する。次に、野生型Lgr6から変異型Lgr6遺伝子をQuikChange site-directed mutagenesis kit (Stratagene) を用いて作成する。これら、野生型、および、変異型Lgr6遺伝子プラスミドをVA10およびBEAS2B、ならびに肺癌細胞株に導入し、それぞれの細胞動態、発現遺伝子動態、発現蛋白動態を解析し、Lgr6の肺癌細胞における機能を明らかにすることを目標とする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、微量分光光度計 Bio Drop の価格が実際の購入時にはキャンペーン価格となっていたため当初の予定価格より安価で購入することができたために次年度使用額が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が生じた分は、次年度公布予定額の物品費と合わせて物品費として使用する予定である。
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