2015 Fiscal Year Research-status Report
芽殖孤虫のゲノム解読による条虫類幼虫における無性増殖機構の解明
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26460510
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
丸山 治彦 宮崎大学, 医学部, 教授 (90229625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 泰生 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20353659)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 寄生虫 / ゲノム / 芽殖孤虫 / プレロセルコイド / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
芽殖孤虫は、マンソン裂頭条虫と近縁の擬葉目に属する裂頭条虫のプレロセルコイドと考えられているが、マンソン裂頭条虫と違って芽殖孤虫はきわめて悪性で、人体感染が起きるとこれまでに救命し得た例がない。マンソン裂頭条虫との著しい違いであり病原性の根幹をなす特徴はプレロセルコイドが中間宿主/待機宿主内で無制限に分裂増殖することである。本研究では、芽殖孤虫のゲノムを解読してマンソン孤虫のそれと比較し、プレロセルコイドの無性増殖メカニズムの解明およびゲノム情報に基づく新規薬剤の標的を見出す。 昨年度は、芽殖孤虫のゲノムサイズが予想以上に大きかったことからゲノムシーケンスデータが不足して満足なアセンブリの作成ができなかったが、今年度は芽殖孤虫およびマンソン裂頭条虫のそれぞれについて、Illluminaペアエンドとメイトペア(3kb、8kb、15kb)を作成しHiseqでデータの追加取得を行った。追加データを含めたde novoアセンブリの結果、芽殖孤虫ではトータルサイズ約700Mb、マンソン裂頭条虫では約1Gbのアセンブリが得られた。フラグメント数は約5万と4万、N50サイズは600kbと300kb、N90サイズは約8kbと約35kbであった。現状のアセンブリはギャップサイズが大きく繰り返しが多くみられることから、まだ改良の余地があるように思われる。今後は、ハプロタイプのマージや再スキャッフォールディング、ギャップ領域の充填を行い、更にアセンブリ品質を向上させる。 一方、これまでに獲得したmRNAリードは、芽殖孤虫およびマンソン裂頭条虫のそれぞれが7 Gbaseであり、RNAリードのde novoアセンブリは約30,000のコンティグにまとまっている。配列は他の条虫の遺伝子に高い類似性を示したことから、RNAseqの品質は高いと考えられた。ゲノムのアセンブリの固定を行った後、これらのRNAseqをゲノムにマッピングし、マッピング結果をヒントにした遺伝子予測を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までのデータに加えて、今年度新たにIllluminaペアエンドとメイトペア(3kb、8kb、15kb)を作成しHiseqでデータの追加取得ができたことで、芽殖孤虫のおおよそのゲノムサイズが確定し、アセンブリも固定できるほどの情報量が得られたため。また、コントロールのマンソン裂頭条虫に関しても、同様にしてゲノムサイズが約1Gbであることが確認できた。これは、英国サンガー研究所からの報告(Genome Biol. 2014;15(11):510)とほぼ同程度であり、われわれのアセンブリが一定以上の精度を備えていることを意味する。 さらに、これまでに獲得したmRNAリードは芽殖孤虫とマンソン裂頭条虫のどちらも7 Gbaseであり、RNAリードのde novoアセンブリは約30,000のコンティグにまとまっている。配列は他の条虫の遺伝子に高い類似性を示したことから、RNAseqの品質は高いと考えられる。RNAリードはどちらもプレロセルコイドから得られているので直接の比較が可能であり、次年度にはゲノム配列と遺伝子発現の両面から芽殖孤虫とマンソン裂頭条虫の違いを明らかにすることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、ハプロタイプのマージや再スキャッフォールディング、ギャップ領域の充填を行い、更にアセンブリ品質を向上させてゲノムアセンブリを固定させる。プレロセルコイドから得られたRNAリードは十分に高品質と考えられることから、RNAseqデータをアセンブル固定したゲノムにマッピングし、マッピング結果をヒントにした遺伝子予測をおこない、芽殖孤虫とマンソン裂頭条虫の遺伝子の種類と数を確定させる。 概要ゲノムと遺伝子予測ができた段階で、個々の遺伝子の塩基配列の異同、タンパク質ファミリーの違い、プレロセルコイドにおける発現量の違いなどを詳細に比較し、特徴的な発現の違いを見せる遺伝子に関しては調節領域の塩基配列の違いなどを検討する。これらの比較により、何が芽殖孤虫のプレロセルコイドに歯止めのない増殖を可能にしているのかの作業仮説を立てる。 作業仮説の検証は、幼虫が無性的に増殖する円葉類条虫(エキノコックス)と幼虫が無性的に増殖しない円葉類条虫(有鉤条虫とHymenolepis microstoma)との比較で同様の違いを検出できるかでおこなう。エキノコックスに関しては、幼虫増殖の著しい多包条虫と増殖が穏やかな単包条虫の両方のゲノムが報告されているので(Nature. 2013 Apr 4;496(7443):57-63, Nat Genet. 2013 Oct;45(10):1168-75)、検証には統計的手法の適用が可能であると考えられる。
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Causes of Carryover |
芽殖孤虫はつくばの国立科学博物館で維持されているため、複数回の研究打ち合わせとサンプル採取のための予算を計上していたが、次世代DNAシーケンサによるデータの取得が順調に進みアセンブルも予想より高品質であったため、今年度に予定していた打ち合わせを次年度に振り替えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度に当たるため、芽殖孤虫の維持やデータの最終確認など国立科学博物館と綿密に打ち合わせる必要があり、旅費として計上する。
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Research Products
(5 results)