2014 Fiscal Year Research-status Report
単純ヘルペスウイルス感染現象におけるリン酸化制御機構のさらなる解析
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26460548
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 哲久 東京大学, 医科学研究所, 助教 (40581187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 寧 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60292984)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / リン酸化プロテオーム解析 / UL12 / VP26 / 神経病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、先行研究において独自に開発した信頼できるHSV PK試験管内リン酸化反応系と超高感度リン酸化プロテオーム解析を駆使し、HSVの病態発現機構におけるリン酸化現象の重要性を示唆してきた。これらの後続研究である本研究は、これらの技術的基盤及び独自の知見を活用し、(i) HSV病態発現能を制御するリン酸化現象のさらなる解明、(ii) 超高感度リン酸化プロテオーム解析より得たリン酸化情報のデータベースの量的・質的な拡充、以上の2点を目的とした。
(i) に関する実績:超高感度リン酸化プロテオーム解析により得られた新規リン酸化部位の生物学的意義を解明するため、先行研究に引き続き順次、リン酸化部位特異的なアラニン置換体を作製し、培養細胞系におけるウイルス増殖およびマウス感染モデルにおける病態発現への影響の解析を継続した。その結果、UL12、VP26及びVP5に、3つの機能性リン酸化部位を見い出した。これらのうち、UL12 Tyr-371及びVP26 Thr-111に関して、各分子の機能発現機構への詳細な影響も解析し、国際学術誌であるJ. Virol. 88:10624-34. (2014)及びJ. Virol. (in press) (2014) に報告した。
(ii)に関する実績:HSV-1感染細胞を対処とした超高感度リン酸化プロテオーム解析は、上皮系細胞、血球系細胞において報告されていたが、神経系細胞では未報告であった。HSV-1は神経指向性ウイルスであることからも、神経系細胞におけるリン酸化情報は重要であると考えられる。申請者は、HSV-1感染神経芽腫瘍細胞を超高感度リン酸化プロテオーム解析に供し、200ヶ所を超える新規リン酸化部位を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した通り、本研究は、(i) HSV病態発現能を制御するリン酸化現象のさらなる解明、(ii) 超高感度リン酸化プロテオーム解析より得たリン酸化情報のデータベースの量的・質的な拡充、の2点を目標とし、その2点ともに順調に推移している。
(i)に関しては、研究実績の概要の記載通り、UL12およびVP26というこれまで機能的なリン酸化部位が未報告だった2つのウイルス因子に関して、効率的なウイルス増殖および病態発現能に関わるリン酸化部位を同定した。特に、UL12に関しては全てのヒト・ヘルペスウイルスに保存されていたことから、その責任リン酸化酵素が広域スペクトル・抗ヘルペスウイルス剤の標的分子となりうることを示せたことから、十分な成果が得られたと考える。
(ii)に関しても、当初の目標通り、超高感度リン酸化プロテオーム解析の技術的な進捗を適時取り入れ、さらなる高感度にも至った。そして、実際、リン酸化情報を大幅に拡張できていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請当初の予定では、本年度および来年度は以下の(i)~(iv)を解析予定であった。
(i) 申請者が見出した新規機能性リン酸化部位であるVP26 Thr-111及びUL12 Tyr-371に関して、各ウイルス因子の特性を考慮し、感染細胞におけるリン酸化制御の詳細な生物学的意義を解析する。(ii) 申請者らの先行研究より、HSV-1のモルキュラー・クローンからのウイルスの再構築に必須であることが明らかとなっているVP5の新規機能性リン酸化部位を解析するため、まずHSV組換え系であるBAC-systemを駆使し、VP5欠損ウイルスゲノムを作製する。なお、VP5はHSV増殖にとって必須遺伝子である。そこで、VP5発現細胞も作製し、VP5欠損ウイルスを1サイクルのみ増殖させる形で、VP5欠損ウイルスを再構築する。 (iii) 平成26年度に拡充させたリン酸化プロテオーム解析の結果より、同定されたウイルス基質のリン酸化部位の中で、保存性や二次構造上の位置等から興味深いものに関して、アラニン置換(リン酸化を阻害する変異)およびグルタミン酸又はアスパラギン酸置換(リン酸化を模倣する変異)を導入したウイルスを作製する。(iv) (iii)において作製した組換えウイルスをマウス感染モデルに供し、病態発現能を制御するリン酸化部位をさらに同定する。(v) (iv)で同定されたHSV-1の病態発現能の制御に関与するリン酸化部位に関して、順次解析する。
これらの内、(i)は既に完了しているため、他に注力する。 (ii)に関しても、予定通り、HSV組換え系であるBAC-systemを駆使し、VP5欠損ウイルスゲノムを作製した。しかしながら、VP5の高い細胞毒性が障壁となり、VP5発現細胞の作製が難航している。本年は、Tet-On/Off system等を駆使し、この問題の解決に望む予定である。また、(iii)~(v)に関しては、2つの分子(合計5ヶ所)のリン酸化部位が大変興味深いため、より詳細な機能解析を継続する。手法等の変更は特になし。
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Causes of Carryover |
平成26年度11月末に、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染神経芽腫瘍細胞を対象とした超高感度リン酸化プロテオーム解析を実施したところ、実施済みの上皮系細胞におけるリン酸化部位を数を大きく上回るリン酸化部位が同定された(新規リン酸化部位、200ヶ所以上)。このため、培養細胞系やマウス病態モデルを用いた高額の解析系の実施を延期し、よりHSV増殖に重要なリン酸化部位のスクリーニングを優先することとなった。本スクリーニング系は、低額であるたるため、次年度使用額が生じた。しかしながら、この変更により、本研究の最終目標であるHSV増殖および病態発現により重要なリン酸化部位を同定できる可能性が高まっており、妥当な研究計画の変更であると考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度、当初の予定数を大きく上回るリン酸化部位特異的変異ウイルスを作製したため、培養細胞系におけるウイルス増殖の解析に約20万円、マウス病態モデルにおける病態発現能への解析に約20万円が必要である。加えて、これらの最新の動向調査のための学会参加に、約30万円も必要となる。そして、一連の知見の公表のため、英文校閲や論文投稿費として、約20万円が必要となる。
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Remarks |
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野(川口研究室)ホームページ http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/kawaguchi-lab/kawaguchilabtop.html
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Research Products
(30 results)
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[Journal Article] Long noncoding RNA NEAT1-dependent SFPQ relocation from promoter region to paraspeckle mediates IL8 expression upon immune stimuli.2014
Author(s)
K. Imamura, N. Imamachi, G. Akizuki, M. Kumakura, A. Kawaguchi, K. Nagata, A. Kato, Y. Kawaguchi, H. Sato, M. Yoneda, C. Kai, T. Yada, Y. Suzuki, T. Yamada, T. Ozawa, K. Kaneki, T. Inoue, M. Kobayashi, T. Kodama, Y. Wada, K. Sekimizu, N. Akimitsu.
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Journal Title
Molecular Cell
Volume: 53
Pages: 393-406
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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