2014 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1 pol遺伝子のSLSA1構造内1塩基置換による複製制御基盤の解析
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26460556
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
野間口 雅子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (80452647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 恭行 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (70607233)
足立 昭夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90127043)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HIV / Vif / APOBEC3G / 遺伝子発現 / ウイルス複製 / 適応・進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV-1ゲノムには複製制御に関与する種々の配列やRNA構造が存在する。我々はHIV-1の適応・進化研究から、スプライシングアクセプター1近傍の領域(SA1prox)に自然に存在する1塩基置換(nSNV, natural single-nucleotide variation)によりウイルス複製能が変動することを見出した。本研究では、この複製能変動をもたらすウイルス学的機構とSA1proxのウイルス複製における役割を調べた。SA1prox内のnSNVによりHIV-1 mRNA発現パターン、特にvif mRNA levelが変動した。そこで、HIV-1/SIVcpzシークエンス解析に基づき、vif mRNA/蛋白質は発現レベルを変動させるnSNVを新たに探索した。各nSNVを持つHIV-1は、Vif発現レベルに応じて低発現(7種)、高発現(3種)、過剰発現(2種)タイプに分けられた。Vif低発現および高発現タイプのウイルス複製能は、宿主細胞の内在性抗HIV因子であるAPOBEC3G発現レベル依存的に変化したが、過剰発現タイプのウイルス複製能はAPOBEC3Gレベルに依らず親株よりも低かった。過剰発現タイプにおけるウイルス複製能の低さは、ウイルス感染性や粒子産生能の低さに起因していた。いくつかのnSNVを複数持つウイルスの解析により、各nSNVはvif転写産物産生に関して相乗的に働くことが示唆された。HIV-2のSA1proxで認められるnSNVも、vif転写産物量を増減させ、ウイルス複製能に影響を及ぼした。これらの結果は、SA1proxの塩基配列・変異はVif発現レベルを規定することにより、APOBEC3Gとの拮抗やウイルス複製に重要な役割を果たすことを示す。SA1proxにおけるVif発現レベルを変動させるnSNVが存在することは、本領域が環境へのウイルスの適応に関わることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の目的は、SA1proxの1塩基置換によるHIV-1複製制御機構を明らかにすることである。当初の計画では、SA1proxの1塩基置換がHIV-1遺伝子発現の各過程(転写、スプライシング、核外輸送、翻訳)に及ぼす影響を解析することにしていた。しかし、SA1proxの1塩基置換によるvif mRNAレベルの変動に着目したことにより、今年度の研究は格段に進捗し、SA1proxのHIV-1複製における役割とそのウイルス学的意義を明らかにできた。SA1proxの1塩基置換はVif発現量を変動させた。Vifは、宿主細胞内の内在性抗HIV因子であるAPOBEC3Gと拮抗するため、VifによるAPOBEC3G抑制回避はウイルス複製とってクリティカルである。SA1proxの1塩基置換によるVif発現量変動は、APOBEC3Gとのパワーバランスを変え、それによってVifおよびAPOBEC3G双方の発現レベル依存的にウイルス複製能に影響を及ぼすことが分かった。これまで、Vif発現レベルを規定するHIV-1ゲノム内の配列・領域は明らかにされていなかった。今年度の研究により、SA1prox が塩基レベルでVif発現レベルを調節し、VifとAPOBEC3Gとのパワーバランスを変える役割を持つことが明らかになった。Vif発現量を変動させるSA1proxの1塩基置換は、全てHIV-1グループ・サブタイプのゲノム内に自然に存在するものであり、このことは、HIV-1がSA1proxの塩基配列を変化させ細胞内環境に適応していることを示唆している。以上のことから、SA1proxの1塩基置換によるHIV-1複製制御の基盤となるメカニズムを明らかにできたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
SA1proxの1塩基置換によるvif mRNAレベル変動の分子メカニズムを解明する。HIV-1はシングルゲノムから複数の蛋白質を産生するため、HIV-1ゲノムには4つのドナーサイト(SD1~SD4)と7つのアクセプターサイト(SA1~SA7)が存在し、選択的スプライシングにより40以上のmRNAsを作り出す。Vif mRNAはSD1とSA1のスプライシングにより産生される。SA1proxの1塩基置換によるvif mRNA/蛋白質レベルの変動は、SA1でのスプライシング効率の変化によって生じるのではないかと考えられる。スプライシング効率は、スプライシングサイト近傍の塩基配列とRNA構造の変化により影響される。SA1proxを含む領域はステムループ構造をとることが知られているため、RNA構造変化とスプライシング効率の変化を解析する。そのために、HIV-1ゲノムのスプライシングサイトとその周辺領域をつなげたミニゲノムを作製し、スプライシング効率の変化を簡便に検出できる実験系を確立する。SA1proxの1塩基置換によるRNA構造変化をmfold programで解析する。次に、ステムループ構造や安定性を変える1塩基置換をmfold programで探索・導入し、Vif発現レベルとウイルス複製能に及ぼす影響を調べる。スプライシングサイト近傍には、スプライシングを進行するための宿主蛋白質が結合する。SA1proxに結合し、vif mRNA産生に関わる宿主因子の同定を試みる。これらの研究の遂行により、SA1proxの1塩基置換によるvif mRNAレベル変動に関する分子基盤情報を蓄積し、将来、本領域を標的とする次世代の遺伝子発現・ウイルス制御法へ発展させることを目標とする。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Distinct combinations of amino acid substitutions in N-terminal domain of Gag-capsid afford HIV-1 resistance to rhesus TRIM5alpha.2014
Author(s)
Nomaguchi, M., Nakayama, E.E., Yokoyama, M., Doi, N., Igarashi, T., Shioda, T., Sato, H., and Adachi, A.
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Journal Title
Microbes and Infection
Volume: 16
Pages: 936-944
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Natural single-nucleotide polymorphisms in the 3' region of HIV-1 pol gene modulate virsl replication ability.2014
Author(s)
Nomaguchi, M., Miyake, A., Doi, N., Fujiwara, S., Miyazaki, Y., Yokoyama, M., Tsunetsugu-Yokota, Y., Sato, H., Masuda, T., and Adachi, A.
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Journal Title
Journal of Virology
Volume: 88
Pages: 4145-4160
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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