2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア移植ツーリズムに関する社会調査の実施とそれに基づくELSIの検討
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26460602
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
粟屋 剛 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20151194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宍戸 圭介 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (10524936)
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
大林 雅之 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 教授 (50176989)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移植ツーリズム / 渡航移植 / 患者の人権 / ELSI |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は前科研「中国移植ツーリズムに関する社会調査の実施とそれに基づくELSIの検討」の延長線上にあるものであるが、昨年度は初年度ということもあり、まず、アンケート総数が不足していた中国渡航移植患者への調査を充実させた。結果(の一部)は次のようである(2015年2月18日時点、有効回答55名)。 移植を受けた臓器はうまく機能しているか、という問いに94%の人がYESと答えている。移植結果に満足しているか、という問いに93%の人がYESと答えている。中国の移植技術の水準については85%の人が高いと思うと答えている。現地の医師や看護師は好意的であったか、との問いには89%の人がYESと答えている。ドナーが死刑囚であることの説明を受けたか、との問いには52%の人がNOと答えている。中国で移植を受けることに葛藤や迷いがあったか、との問いには53%の人がYESと答えている。中国で移植を受けたことを後悔しているか、との問いには91%の人がNOと答えている。 中国の(今は亡き)ドナーに感謝しているかとの問いには98%の人がYES、中国の医師や看護師などに感謝しているかとの問いには100%の人がYES、通訳・サポート(ないし仲介)業者に感謝しているかとの問いには94%の人がYESと答えている。帰国後に、中国で移植を受けたことを理由に診療拒否をされた経験があるか、との問いには44%の人がYESと答えている。 上記データ及びその分析を含めて、アジア移植ツーリズムの全体像を第121回日本法政学会シンポジウム(岡山大学、2014年11月15日)で報告した。とくにアジア渡航移植患者の人権(全国的に見られる患者帰国後診療拒否事例など)について問題提起を行った。大多数の参加者は実態を知らず、多くの驚きの声が聞かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者は昨年度、精力的にアジアの国々(具体的には、5月カンボジア、9月ベトナム、今年1月フィリピン)を巡り、移植ツーリズムや臓器売買を含めて広く臓器移植事情に関する諸種の情報を得てきた。また、代表者は 1992年からアジア全域で現地調査を含めて臓器売買に関する諸種の調査をしてきており、それらの調査は今回の科研の一環である「アジア移植ツーリズム調査」のベースとなるものである。さらには、近時、二本の論文を執筆し、現在、校正中である(粟屋剛「臓器売買・移植ツーリズム」甲斐克則編『臓器移植と医事法(医事法講座第6巻)』(信山社、6月刊行予定)及び粟屋剛「アジア渡航移植患者の人権」法政論叢(日本法政学会)第51巻第2号、6月刊行予定:これは、第121回日本法政学会シンポジウム(岡山大学、2014年11月15日)での同名の報告を活字化したものである)。 このような事情から、残るのはほぼアンケート調査及び聞き取り調査(さらには、それらの分析)のみとなったので、「おおむね順調に進展している」との評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように昨年度、全体状況がほぼつかめたので、今年度は中国渡航移植患者も含めてアジア全域での渡航移植患者へのアンケート調査及び聞き取り調査を集中的に行う。具体的には、(前期は講義や業務で多忙なので)9月以降、渡航移植サポート業者を含めて知己の移植医療関係者からの紹介、協力等を得て、個々の渡航移植患者にアンケートを発送する。そのうち返送があったもの(回答)を集計し、統計学的解析を含めて総合的な分析を行う。また、回答時に個別聞き取り調査に同意していた渡航移植患者に対しては、先方に出向いて面談の形で聞き取りを行う。それらも、できる限り今年度内に、集計の上、分析を行う。さらには、それらのデータを分析し、適宜、ホームページなどで公開する。これも、できる限り、今年度内に行う。なお、もちろん、個人情報の取り扱いには細心の注意を払う。
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Research Products
(5 results)