2014 Fiscal Year Research-status Report
我が国のがん検診における過剰診断の推計と医療資源消費に関する研究
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26460620
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
濱島 ちさと 独立行政法人国立がん研究センター, がん予防・検診研究センター, 室長 (30286447)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医療経済学 / 過剰診断 / 過剰治療 / 医療資源 / がん検診 |
Outline of Annual Research Achievements |
OECDの報告によると、我が国における診断機器の設置率が高いことが指摘されている。2011年の人口10万人あたりの設置数は、OECD平均でCT 2.4件、MRI 1.3件と報告されている。同年の人口1,000人あたりの検査数は、OECD平均でCT 131.0件、MRI 55.4件である。我が国のCTやMRIの設置数・検査数はともにOECD平均をはるかに上回っている。 CTやMRIは診療ばかりではなく人間ドックなどではがん検診として用いられている。CTやMRIによるがん検診については死亡率減少効果は示されていない。一方、マンモグラフィによる乳がん検診は死亡率減少効果が認められることから対策型検診として推奨され、全国の市町村で実施されている。しかし、マンモグラフィの受診率は20%代に留まっている。そこで、マンモグラフィ、CTやMRIの供給状況について、医療施設調査などを用いて検討した。 過去10年間に、CT設備は1.4倍に、CT検査数は5.8倍に増加した。同時期に、MRI設備は2.5倍に、MRI検査数は10.3倍に増加した。2008年から2011年の間の、マンモグラフィ装置と検査件数増加は10%に留まっていた。10万人あたりの検査装置数は、CT 10.2件、MRI 4.7件、マンモグラフィ6.2件であった。10万人あたりの検査件数は、CT 22,464件、MRI 10,627件、マンモグラフィ7,983件であった。福島県を除く46都道府県でCTの10万人あたりの検査装置、検査数はマンモグラフィを上回っていた。MRIについては、9県で10万人あたりの検査装置数がマンモグラフィを上回っていた。しかし、10万人あたりのMRI検査件数は9県でマンモグラフィを下回っていた。 CTが過剰供給される一方で、マンモグラフィの供給は必ずしも充足していない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん検診の導入の判断には、その利益となる死亡率減少効果と不利益のバランスを考慮して検討する必要がある。各種がん検診の死亡率減少効果については、我が国での検証もすすみつつあるが、不利益の中で最も大きな影響をもたらす「過剰診断」についての検討は進んでいない。これまで「過剰診断」の推計は無作為化比較対照試験やモデルによる方法が報告されているが、我が国における実態は明らかではない。しかし、不必要な治療や過剰治療をもたらす「過剰診断」は医療資源消費の観点からも推計が必要である。海外における観察研究やモデルなどによる「過剰診断」推計方法のシステマティック・レビューを行い、我が国に適した推計方法を検討する。さらに、「過剰診断」がもたらす医療資源消費を推計し、医療経済学的観点から検討する。このため、以下の5課題の検討を目標としている。 1)「過剰診断」推計方法の検討、2)がん検診関連医療技術のoveruseと医療資源消費の推計、3)我が国のがん検診における「過剰診断」推計方法の開発と推計、4)がん検診における「過剰診断」による医療資源消費の推計、5)利益・不利益バランスに基づくがん検診効率化の検討。 平成26年度は、2)がん検診関連医療技術のoveruseと医療資源消費の推計を検討した。科学的根拠のあるがん検診としてマンモグラフィ、根拠のない検診としてCT、MRIを取り上げ、その供給状況について検討した。 次年度以降は、さらに1)「過剰診断」推計方法の検討、3)我が国のがん検診における「過剰診断」推計方法の開発と推計、4)がん検診における「過剰診断」による医療資源消費の推計、5)利益・不利益バランスに基づくがん検診効率化の検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降、我が国におけるがん検診の「過剰診断」を推計するための方法を開発・推計し、「過剰診断」に伴う医療資源消費を検討する。 【①「過剰診断」推計方法の検討】無作為化比較対照試験・コホート研究に基づく推計方法や、がん罹患・死亡からの推計方法が行われている。特に、乳がん、前立腺がん検診については、国際的に検討が進んでいる。これらの推計方法について、システマティック・レビューを行い、各方法の妥当性を検証したうえで、我が国のがん検診における「過剰診断」推計への応用を検証する。 【②がん検診関連医療技術のoveruseと医療資源消費の推計】地域保健・健康増進事業報告やがん検診実施状況調査などの官庁統計をもとに、がん検診におけるoveruseを推計し、それに伴う医療資源消費を検討する。 【③我が国のがん検診における「過剰診断」推計方法の開発と推計】①の検討に基づき、我が国におけるがん検診の過剰診断を推計するための方法を開発し、対策型検診として行われている5つのがん検診における「過剰診断」の割合を推計する。 【④がん検診における「過剰診断」による医療資源消費の推計】③の検討に基づき、過剰診断により誘発される「過剰診断」に伴う医療資源消費についての推計を行う。 【⑤利益・不利益バランスに基づくがん検診効率化の検討】がん検診の利益(死亡率減少効果)と不利益(過剰診断)のバランスを比較検討し定量化することで、不利益を最小化する対象集団(ハイリスクグループ、年齢など)の検討を行う。
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Research Products
(22 results)