2015 Fiscal Year Research-status Report
幼齢期ストレスによる精神発達障害のメカニズム解明と新規薬物治療戦略
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26460637
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
山口 拓 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (80325563)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 幼齢期ストレス / 精神発達障害 / 自閉症 / 抑うつ行動 / 幼児・児童虐待 / 社会的行動 / 薬物治療 / 行動薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、HPA axisの中心的なストレスホルモンの一つであるACTHの幼若期反復投与処置による「幼若期薬理学的ストレス負荷ラット」を作製し、幼若期に受けたストレスが成長後の行動学的および内分泌学的応答性、また情動機能と密接な関連がある縫線核に存在する細胞群に及ぼす影響について検討した。 離乳した幼若期(3週齢)のWistar系雄性ラットに、ACTHの活性アナログである酢酸テトラコサクチド(100ug/rat)を5日間反復皮下投与した(ACTH群)。対照群として生理食塩水を同様に投与した。 今年度は行動学的特性の解析として、特に幼若期ACTH反復投与ラットの成長後の抑うつ様行動について、スクロース嗜好試験および新奇環境摂食抑制試験を実施した。その結果、それぞれの抑うつ様行動の評価試験において10週齢(成熟期)時のACTH群にのみ抑うつ行動と考えられる行動変容が観察されたが、6週齢(発達期)では認められなかった。また、成熟期のACTH群では対照群と比較して副腎肥大が観察された。抑うつ様行動のさらなる確認のために無快感症状を評価するスプラッシュ試験および抑うつ様行動の神経内分泌学的応答性を検討するためにデキサメタゾン抑制試験、自閉症様行動の検討のために超音波啼鳴試験が現在進行中である。さらにストレスに関連する脳部位の一つである縫線核における神経細胞の変化について免疫組織化学的に検討したところ、背側および正中縫線核の5-HT含有細胞数に変化はなく、GABA含有細胞に有意な減少を認めた。 ACTH群の成熟期では、情動行動障害のひとつとして抑うつ様行動を誘引し、その背景として縫線核に存在するGABA含有細胞群の機能低下との関連性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、平成26年度に得えられた幼若期ACTH投与モデル動物における行動学的評価の結果を受けて、特に抑うつ様行動に関連する行動学的特性評価を中心に実施した。その結果、本モデルラットは、スクロース嗜好試験および新奇環境摂食抑制試験のいずれの抑うつ様行動評価試験においても抑うつ様行動を示した。この本モデルラットが示す抑うつ様行動は、昨年度に得られた不安惹起様行動の発現と同様に発達期では変化がなく、成熟期という成長後にのみ発現するという行動発現時期に感受性期があることも新たに見出した。したがって、うつ病患者に認められる場合が多い副腎肥大の有無を検討したところ、本モデルラットにおいても副腎肥大が認められた。これを受けて、抑うつ行動のさらなる確認のために無快感症状を評価するスプラッシュ試験および抑うつ行動の神経内分泌学的応答性を検討するためにデキサメタゾン抑制試験(うつ病患者に多く認められるデキサメタゾン誘発コルチゾール分泌「非抑制」の有無)を現在実施しているところである。また、自閉症様行動の検証のために超音波啼鳴(USV)試験に用いる測定装置を導入したが、その基礎検討および得られた結果の妥当性を検証する実験に時間を要している状況なので、これを急ぎ確立し、モデルの評価を行いたい。また、縫線核における免疫組織化学的に検討したところ、背側および正中縫線核の5-HT含有細胞数に変化はなく、GABA含有細胞に有意な減少を認めた。この神経形態学的な変化と行動学的変容を結びつけるための行動薬理学的な評価系を構築し、幼若期ACTH投与モデル動物が示す成長後の異常行動における発現メカニズムの解明に迫りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1)行動学的評価:①Social interaction試験 [社会的行動]、②隔離誘発性超音波啼鳴試験[不安症状を背景とする言語的コミュニケーョン機能]、③毛繕い行動を指標に行動異常としての反復行動[常同行動] 、抑うつ行動として④スプラッシュ試験 [無快感症状の評価]、を測定することによって、幼若期薬理学的ストレス負荷ラットの行動学的特性をさらに詳細に検討する。 2)神経内分泌学的応答性の評価:うつ病患者においてはデキサメタゾン抑制試験においてコルチゾール分泌の「非抑制」が多く認められる。このような神経内分泌学的応答性が本モデルラットにも認められるか否かを検討するために、デキサメタゾン負荷時におけるコルチコステロンの分泌応答性について評価する。 3)自閉症様行動の発現に関わる脳内分子の探索:自閉症発症の成因においては様々な候補遺伝子が提唱されていることから、幼若期ストレス負荷ラットの脳内においても自閉症関連遺伝子の転写産物であるタンパク質発現の変動についてその特異的抗体を用いてウェスタンイムノブロット法によって解析する。必要に応じて関与が認められた関連分子の脳機能を推察するための脳内分布検索を念頭においた免疫組織化学的解析を実施する。 4)幼若期薬理学的ストレス負荷ラットが示す異常行動に対する行動薬理学的検討:これまで幼若期薬理学的ストレス負荷ラットに認められた行動異常に対して、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を中心とする向精神薬の効果を行動薬理学的に検討する。また、本モデルラットにおける脳内分子の挙動に関する結果、特にGABA神経系を考慮に入れて、それに相応する薬物を選択し、神経化学的な変化と行動学的変容を結びつけるための行動薬理学的な評価系を構築して検討する。 以上、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を学会発表および学術論文によって報告する。
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Causes of Carryover |
平成27年度では約3万円の次年度使用額が生じたが、本研究においては切れ目の無い継続的な実験動物の飼養と維持管理が必要であるため、実験動物の餌や床敷きを購入するためにかかる費用を常に確保しておく必要がある。この平成27年度で生じた次年度使用額は、年度を跨ぐ期間に必要な実験動物の維持管理費用に当てるため、ほぼ計画通りの予算運用の範囲内と考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度申請分において生じた次年度使用額の約3万円は、本研究における継続的な実験動物の飼養と維持管理のため、年度を跨ぐ期間に必要な実験動物の餌や床敷きを購入するための経費(消耗品費)として使用する。したがって、平成27年度申請分において生じた次年度使用額は、翌年度分として請求した助成金に影響しない。本年度分助成額(交付予定額500千円)は当初の計画どおりに、実験動物の飼養と維持管理、実験試薬購入のための消耗品費(300千円)、学会参加費および旅費(150千円)および英語論文投稿の英文校正のための謝金(50千円)として運用する予定である。
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Research Products
(12 results)