2015 Fiscal Year Research-status Report
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26460653
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
菱沼 昭 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40201727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小飼 貴彦 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40711693)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HMGA2 / 甲状腺 / 濾胞癌 / 転移 / 免疫染色 / サイログロブリン異常症 / 甲状腺腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは、サイログロブリン異常症にともなう発癌機序の培養細胞を用いた検索から、間葉系細胞の分化に関わる分化マーカーの1つである HMGA2 の発現が甲状腺における発癌機序の一端を担っていると考え、甲状腺腫瘍組織および甲状腺細胞モデルを用いて、その発現調節および作用機序の解明を目指している。 その過程で甲状腺腫瘍組織の免疫染色を行ったところ、多くの濾胞癌で被膜浸潤を示す腫瘍辺縁部に選択的にHMGA2の染色が認められ、濾胞腺癌の確定診断が被膜浸潤の有無で決定されることから、HMGA2 の免疫染色が濾胞癌の診断に応用できる可能性が示唆された。平成27年度には、これらの知見をもとに、HMGA2染色の感度に関する基礎的検討ならびに多数の濾胞癌検体を用いた免疫染色を施行した。その結果、増強剤の使用により、辺縁部・浸潤部のHMGA2 染色が、従来の病理診断で濾胞癌と診断された19例のうち11例で認められ、その全てが腫瘍被膜直下、ないし浸潤部に選択的であった。今回検討した19例のうち、手術前あるいは術後10年以内に甲状腺外に転移をきたした例は5例あったが、特筆すべき事に、その原発腫瘍全てにおいてHMGA2染色陽性で、しかもよりびまん性に染色が認められた。HMGA2染色を転移の有無の判断に適応したと考えると、感度100%、特異度50%、陽性的中率42%、陰性的中率100%であり、術後診断に際する転移の否定への応用が示唆された。今後、当院の病理検体のアーカイブを利用し、5年以上前の手術検体を用いて、追跡期間5年程度のコホート研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画(1)甲状腺組織の HMGA2 発現量の評価 甲状腺癌では HMGA2の発現量が低く免疫組織染色陰性となる例が多いため、染色の増強剤 (Can Get Signal, 東洋紡)を使用して染色の条件検討を行い、続いて、当院で甲状腺濾胞癌と診断された19例、および良性甲状腺腺腫と診断された11例について HMGA2発現を検討した。その結果、とくに、甲状腺濾胞癌の確定診断および転移予測におけるHMGA2 の免疫染色の応用の可能性が、“研究実績の概要”に記載したとおり示唆された。 研究計画(2)甲状腺組織内の HMGA2 制御 miRNA の発現の検討 当初の計画では甲状腺腫瘍組織で HMGA2 を過剰発現している検体を用いて、HMGA2 を制御する可能性のある miRNA の発現検討を行う予定であったが、免疫組織染色法により、組織内での HMGA2 の発現の不均一性が確認された。そこでマイクロダイセクション法の施行が検討されたが、設備、コストの点から現時点では困難と判断され、“今後の研究の推進方策”に示すとおり、培養細胞モデルを用いた包括的なRNA発現検索を優先することとした。 研究計画(3)甲状腺癌細胞株における HMGA2 遺伝子の転写後発現制御、および、研究計画(4) HMGA2 のターゲット遺伝子の検索と甲状腺癌におけるその発現の検討 本研究計画申請後、当院に次世代シークエンサーが導入され、想定されるHMGA2 の発現調節因子 (miRNA) やHMGA2のターゲット遺伝子の発現の検討を網羅的に行うことが可能となった。そこで平成27年には、トランスクリプトーム検索のための予備実験を行うとともに、HMGA2 の過剰発現を引き起こすサイログロブリン異常症に伴う甲状腺腫に合併するゲノム異常についての検索も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画(1)甲状腺組織の HMGA2 発現量の評価 本年度の予備実験により、甲状腺濾胞癌の診断へのHMGA2免疫染色の応用の可能性が示された。当初の計画のとおり、次年度以降もさらに検体数を増やしてHMGA2 の免疫染色の甲状腺癌の診断に対する有用性を確認する。とくに、当院の病理検体のうち過去5年から10年程度前に作成された濾胞腺癌のコホートにつき、HMGA2染色と手術後の転帰の関連について検索し、HMGA2 の予後予測マーカーとしての有用性も評価する。さらに、濾胞癌の転移巣についてもHMGA2の発現を検討する予定である。 研究計画(2)甲状腺組織内の HMGA2 制御 miRNA の発現の検討、および、研究計画(3)甲状腺癌細胞株における HMGA2 遺伝子の転写後発現制御 HMGA2 の強発現がすでに報告されている甲状腺乳頭癌細胞株 TPC1 、HMGA2発現を誘導する異常サイログロブリン遺伝子を強制発現させた濾胞癌細胞株 FTC-133を利用し、次世代シークエンサーによる網羅的な miRNA 発現プロフィールの検討を行う予定である。 研究計画(4)HMGA2 のターゲット遺伝子の検索と甲状腺癌におけるその発現の検討 甲状腺濾胞癌細胞株に HMGA2を強制発現させ、次世代シークエンサーによりトランスクリプトームの検索を行い、野生型の細胞株との比較を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究計画(1)甲状腺組織の HMGA2 発現量の評価における免疫組織的研究、ならびに研究計画(3)甲状腺癌細胞株における HMGA2 遺伝子の転写後発現制御、および研究計画(4)HMGA2 のターゲット遺伝子の検索と甲状腺癌におけるその発現の検討の予備実験を行なった。次年度使用額が生じた理由は、免疫組織症例が予想したほどには多くはなかったことと、遺伝子研究が予備実験に終わったことで、残余額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、研究計画(1)甲状腺組織の HMGA2 発現量の評価における免疫組織的研究、においてさらに多数例を追加して研究を推進する。また、研究計画(3)甲状腺癌細胞株における HMGA2 遺伝子の転写後発現制御、および研究計画(4)HMGA2 のターゲット遺伝子の検索と甲状腺癌におけるその発現の検討、で本格的に検討を開始したい。次世代シークエンサーを用いた解析には多額の消耗品が必要であり、本年度分も合算して支出する予定である。
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