2015 Fiscal Year Research-status Report
薬剤排泄ポンプを用いた多剤耐性菌簡易診断法の開発と感染制御への応用
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26460657
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
浅井 さとみ 東海大学, 医学部, 准教授 (60365989)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 排出ポンプ / 緑膿菌 / アシネトバクター / 多剤耐性 / 感染制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多剤耐性緑膿菌(MDRP)や多剤耐性アシネトバクター(MDR-Acinetobacter baumannii, MDR-A. baumannii) 臨床菌株において見られる多段階の耐性化と遺伝子変異の相互関係、耐性遺伝子獲得発現の関係を調査し、それに基づく検査診断法の開発および多剤耐性化回避法の確立を検討することを目的とする。 1.薬剤耐性緑膿菌(多剤耐性緑膿菌および2剤耐性緑膿菌)について ①これまでの研究結果より緑膿菌の多剤耐性化には排出ポンプの発現亢進が最も関与していることがわかった。臨床上抗菌薬耐性に関与するmex遺伝子は主要ポンプのうちmexAB, mexEF, mexXYの発現亢進が確認された。mexCDは臨床分離株では感受性株においても発現が亢進しており、文献上と異なる結果を得た。 ②薬剤排出ポンプの構成蛋白の基質となるペプチドを供給するβ-barrel assembly machinery (BAM)複合体に着目した。BamAとBamDに着目し、ウエスタンブロット法を用いて標準株(PAO1)と比較した。標準株と臨床分離株は明らかな差を示し臨床分離株に発現亢進傾向がみられたが、臨床分離株中の抗菌薬感受性株と多剤耐性株とでは明らかな差は認められなかった。 2.薬剤耐性アシネトバクター(多剤耐性および2剤耐性A. baumannii)について 開院以来2度目のアウトブレイクにおいて、水道管の深部まで汚染されている状況(感染源)を証明し、臨床分離株の耐性機構を検討した結果を論文化し受理された。また、その後集中治療室を中心に耐性株のシークエンスタイプ(ST)はST219であった。さらにアウトブレイク後ST219とST208の2剤耐性A. baumanniiが散発的に異なる患者から検出された。これらの菌株はrep-PCR法でほぼ同一のフィインガープリントパターンを示した。耐性遺伝子発現、排出ポンプの発現亢進なく従来まで観察されたST208とST219の臨床分離株と全く同様の結果を示した(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薬剤耐性緑膿菌の耐性獲得関与遺伝子の発現について統計学的分析がほぼ終了し、論文作成中である。②Bamのウエスタンブロット法の抗体作製に難渋したが。標準株と比べ耐性獲得株はBamAおよびBamDのいずれも軽度発現亢進傾向にあることが確認された。しかしながら、臨床分離株では感受性株であっても発現亢進が認められ、多剤耐性株と違いがなかった(H26年度の追実験を含む)。そこで確認のためのmexCDの発現をreal time RT-PCR法で行ったところ感受性株と多剤耐性株と差がないことが判明した。タンパク質レベルでは発現に差があるかどうかウエスタンブロット法による確認と追加実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.①論文執筆を進める。②mexCDの発現をreal time RT-PCR法で行ったところ感受性株と多剤耐性株と差がないことが判明したため、ウエスタンブロット法によるタンパク質レベルでの発現確認を行う。それぞれの発現による意味づけを考察し更なる原因追及を行う予定である。他のパーツ(BamB、BamC、BamE)の抗体も作製したためタンパク質発現も順次確認する。今後、それらのデータを解析し簡易診断システムの構築を行う。 2.薬剤耐性 A.baumannii臨床分離株の耐性獲得に共通に関与する遺伝子の簡易迅速診断法の構築を検討する。
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Causes of Carryover |
当初予想していた、または文献上の結果とは異なる結果を得たため、文献考察や追試の実験に手間取り、予定していた消耗品の購入がなされなかった。時間の無駄を省くため学会発表も差し控えた。最終年度である本年度の実験に、可能な限りの時間と費用を投ずることに計画を変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で必要な費用は、消耗品費にて購入する消耗品や試薬は研究遂行において必須の細菌培養、薬剤感受性試験、分子生物学的解析・タンパク発現解析、ペプチド作製等に用いる。RNA抽出試薬、逆転写酵素、DNA合成試薬、PCR、RT-PCR、real time RT-PCR法のプライマー作製費用や抗菌薬を含む試薬類、ウエスタンブロット法に必要な試薬類、培養に必要な薬品類、液体培地、血液寒天培地、培養フラスコやプレートチップ、チューブ類などである。実験装置は当該施設所有のものを借用するが、一部の施設は使用料が発生する。情報収集と研究成果発表のための学会参加費用として国内旅費、研究成果の発表報告のため外国論文校閲費と掲載に関わる費用を予定している。
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Research Products
(34 results)