2015 Fiscal Year Research-status Report
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26460745
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岡野 淳一 鳥取大学, 医学部, 講師 (00343278)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / サーベイランス / 非B非C型 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥取県の基幹7病院において2014年度に診療した146例の初発肝細胞癌(HCC)の実態を調査した。成因は、B型肝炎ウイルス(HBV)19.9%、C型肝炎ウイルス(HCV)39.0%、非B非C型(NBNC)60例41.1%であった。主な背景因子は、男性67.8%、肝硬変合併46.2%、飲酒歴あり6.4%、喫煙歴あり43.5%であった。成因別の特徴は、NBNCは男性の占める割合が81.7%と高く、飲酒歴ありが41.4%と高いことであった。主な生活習慣病の合併率は、高血圧41.1%、糖尿病(DM)38.6%、脂質異常8.2%、脂肪肝3.5%、肥満23.2%、平均BMI 22.8 kg/m2であり、NBNCはHBVやHCVに比べて高血圧55.0%、DM 50.0%、肥満30.0%の合併率が高い特徴があった。高血圧・DM・脂質異常症のいずれかの生活習慣病を有する症例の割合は、HBV 44.8%、HCV 50.9%、NBNC 81.7%とNBNCで高かった。初発HCCの性状は、平均最大腫瘍径4.2 cm、AFP値11458 ng/mL、PIVKA-II値16547 mAU/mL、単発54.1%、2個11.6%、多発またはびまん型34.2%であった。HCCの治療法は、肝動脈塞栓術(TACE)単独が27.4%と最多で、手術18.5%、無治療15.8%、TACE+エタノール注入療法(PEIT)あるいはラジオ波焼灼療法(RFA)の経皮治療15.1%、経皮治療単独13.7%、ソラフェニブ4.1%、肝動注(TAI)3.4%などであった。無治療あるいはTACE単独・TAI・ソラフェニブの姑息的治療が選択されている割合は、HBV 51.9%、HCV 46.4%、NBNC 56.7%と高かった。サーベイランス遵守率は36.3%であり、NBNCは16.7%と極めて低く、HBV、HCV陽性者の遵守率もHBV 31.0%、HCV 59.6%と低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って研究が進み、一定の成果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
HBV、HCV陽性だがサーベイランス逸脱となった原因は、HCC診断時に医療従事者や患者が肝炎ウイルス陽性と認識していた症例は、HBV 81.8%(9/11例)、HCV94.4%(34/36例)と比較的良好なサーベイランス遵守率であったが、サーベイランス逸脱例の多くは肝炎ウイルス陽性非認識例であり、HBV HCCの62.1%、HCV HCCの33.3%は偶発的なHCC診断時に初めてHBVやHCV陽性と判明した症例であった。 以上の結果、HBVやHCV陽性の通院例に関しては、一部医療従事者の画像検査の不徹底が見受けられたものの概ねサーベイランスは遵守されていること、肝炎ウイルス陽性非認識による偶発的なHCC診断例が多く存在することが分かった。なお、サーベイランス遵守例は逸脱例に比べてより早期にHCC診断がなされており、根治的治療の実施率はサーベイランス遵守例71.7%、逸脱例34.4%であった。 HCCの早期診断を徹底していく方策は、未診断の肝炎ウイルス陽性者の 掘り起こし活動を行うことと、NBNC HCC高危険群の設定およびそのサーベイランスを実施することである。未診断の肝炎ウイルス陽性者の掘り起こし対策は、既に本県では肝炎ウイルス保健所無料検診と肝炎ウイルス医療機関検診や肝炎ウイルス精密検査費助成事業が実施されているのだが、出張型検診を取り入れることや、新聞折り込みチラシなどを用いた肝炎ウイルス検診受検の啓発活動など、新たな取り組みを行いたい。NBNC HCCの早期診断対策は、今回の結果からその高危険群は、高血圧、DMを有する60歳以上の男性で特に飲酒者と肥満者と判明したが、マンパワーを考慮してまずは60歳以上のDM男性を囲い込みの対象とした6ヶ月に1回のAFP測定と腹部超音波検査によるHCCサーベイランスを、肝臓内科医師とその他の診療科医師との連携を図りながら、パイロット的に始めたい。
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Causes of Carryover |
予定と比べて物品費等を少なくできたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究実施に必要な物品費用、会合の会場費用、交通費等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)