2014 Fiscal Year Research-status Report
大気汚染の疾病罹患・死亡・出生児アウトカムに与える影響の検討
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26460746
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
津田 敏秀 岡山大学, その他の研究科, 教授 (20231433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
頼藤 貴志 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (00452566)
土居 弘幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20452568)
鹿嶋 小緒里 広島大学, その他の研究科, 助教 (30581699)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大気汚染 / 循環器疾患 / 呼吸器疾患 / 心停止 / 浮遊粒子状物質 / 満期低出生体重児 / 行動発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、大気汚染物質の健康影響が全国的に注目を集めている。しかしながら、海外と比べ、国内では大気汚染の健康影響を評価した疫学研究は依然として少ない。本研究では、次の3点に着目し、大気汚染曝露の影響を評価している:短期曝露の疾病別罹患への影響、過去の歴史的データ(四日市ぜんそく)を用いた高濃度な大気汚染短期曝露の疾病別死亡への影響、大気汚染曝露の周産期・小児期への健康影響。 本年度は、大気汚染の短期影響に着目し、大気汚染曝露と循環器疾患発症・呼吸器疾患発症・心停止との関連を評価した。その際、2006年1月~2010年12月に救急外来を受診した岡山市住民の内65歳以上の患者で、循環器疾患10,949人、呼吸器疾患6,925人、心停止558人を研究対象とし、ケースクロスオーバーデザインを用いて評価した。研究期間中に岡山市内の観測地点で測定された浮遊粒子状物質(SPM)、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)、オゾン、および一酸化炭素(CO)の毎時濃度の情報を岡山県庁から取得した。条件付きロジスティック回帰を用い、大気汚染曝露と各健康アウトカムの関連を示す調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。結果として、大気汚染による短期曝露により、循環器疾患、呼吸器疾患、心停止による救急搬送のリスクが上昇していた。 また、厚生労働省が実施している21世紀出生児縦断調査のデータを対象とし、妊娠中の大気汚染曝露と満期低出生体重児や発達との関連の解析を行った。結果として、妊娠中の大気汚染曝露は満期低出生体重児を増加させ、発達にも影響を及ぼしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書には、平成26年度の研究計画として,①岡山市救急搬送データを利用した大気汚染短期曝露と疾病罹患の関連評価、➁大規模コホートデータを利用した大気汚染曝露と児の疾病罹患との関連評価の2点を挙げていた。 ①については、大気汚染曝露と循環器疾患発症・呼吸器疾患発症・心停止との関連について解析を行い、論文にまとめることができた。 ➁に関しては、21世紀出生児縦断調査のデータを利用した解析において、様々な仮説を検証することができ、妊娠中や出生後の児の環境と、出生時の健康やその後の健康・発達との関連を評価することができた。 よって、「順調に進展している」と自己評価できるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に従い、平成27年度は、①四日市市における大気汚染短期曝露と疾病別死亡の関連評価と②診療所を対象とした大気汚染曝露と周産期指標の関連評価の為の曝露モデル作成を行う予定である。①では、動態統計で集積された四日市市の1960-70年代の死亡データを厚生労働省より取得し、四日市市の当時の日々の大気汚染濃度とリンクをさせる。平成26年度の岡山市救急搬送データを利用した研究と同様に、短期的な影響を評価できるTime-series analysis又はCase-crossover analysisを利用し、大気汚染短期曝露と疾病別死亡(循環器系・呼吸器系死亡)との関連を評価する。また、気温と湿度の情報を解析で調整を行う。➁は、東海地方で年間約8千人出生のある産科診療所グループで出生する母児ペアを対象に研究を行う。本研究では、個人の住所情報が手に入るため、自治体の平均濃度を割り振るのではなく、個人レベルの大気汚染曝露濃度を予測するモデルを作成する。具体的には、Land Use Regression modelと言われるモデルで、対象者の居住環境近くにある道路情報や人口情報、地形情報などを利用し、個人の妊娠期間中の大気汚染濃度を予測するモデルを作成する。この方法により、対象者の曝露情報の誤分類を減らすことが可能となる。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究が、予想以上に効率よく進展したため。また、平成27年度に予定している、個人レベルの大気汚染曝露濃度を予測するモデルを作成するにあたり使用する、地理情報システム用ソフトウェア(ArcGIS)や中部地方の道路情報を購入するのに費用がかかる。加えて、四日市市の大気汚染濃度が電子データとして利用できない場合は、紙媒体から電子データに変換する作業が必要になると思われ、研究実施補助費用が必要になる可能性がある為に、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
地理情報システム用ソフトウェア(ArcGIS)や中部地方の道路情報を購入する費用として、また研究実施補助費用として利用する
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Research Products
(5 results)