2016 Fiscal Year Research-status Report
法医中毒薬毒物のQTOFデータに対する包括的マルチプロセス解析の検討
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26460891
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
林田 眞喜子 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60164977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植草 協子 日本医科大学, 医学部, テクニカルスタッフ (50409215)
安部 寛子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任研究員 (40707204)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 法医中毒学 / 質量分析 / 薬毒物分析 / QTOF / LC-MS / 代謝物 / 代謝経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的な法医中毒薬毒物であるアコニチン系アルカロイド(AA)を主要毒性分とするトリカブト植物体についてQTOFを用いたAll Ions MS/MS法、AutoMSMS法で測定したデータをもとにMetabolite IDを用いて代謝物の探索を行い,トリカブト苗を購入してアコニチン中毒となった事例(救命救急患者試料/法医剖検試料)に応用し検討した。 トリカブト植物体を全草分析するための試料全処理法を検討しトリカブト種の違いによる含有成分の部位別差異などについてQTOF分析を行った。エゾトリカブト、オクトリカブトなど12種類53体について、12時間凍結乾燥し秤量後マルチビーズクラッシャー(MBC)で粉末化の後QTOF分析を行い EPIC理論によるプロダクトイオンスペクトルの妥当性評価で同定を行った。エゾトリカブト、オクトリカブト等にAAは高濃度で分布に差異は認められず、C19ノルジテルペン系ならびにC20ジテルペン系アルカロイドが認められた。ウゼントリカブト、ヤチトリカブトなどではAAは低濃度であったが、C19ノルジテルペン系ならびにC20ジテルペン系アルカロイドが多量に含まれていた。QTOF分析では同定されたAA以外の標準品が入手できなくても分布量の違いなどを明瞭にしえた。 通販サイトより自殺目的で購入した「オクトリカブト」の根3株を食し、多型性心室頻拍で重篤なアコニチン中毒と診断された症例についてLC/MS/MSならびにQTOF分析を行った。症例が摂取したものはジェサコニチン・メサコニチンを多く含むものであり、既報の死亡例と比較してもAAが高く重篤な臨床症状も認められた。摂取した植物体からはC19ノルジテルペン系ならびにC20ジテルペン系アルカロイドなどが検出されたが、生体試料からは検出が困難で、これらの新規AAが生体に及ぼす影響については明瞭に考察出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LC-MSMS法ならびにQTOFデータベースライブラリを用いた広範囲薬物包括分析法を危険ドラッグ、アコニチン系アルカロイドが関連する中毒患者試料や剖検資料に応用、代謝物探索用ソフトウエアを用いて代謝物の探索を含めたスクリーニングを実施した。代謝物についてはその精密質量プロダクトイオンスペクトル及びEPIC理論による代謝物推定を行った。 QTOF質量分析データに含まれる大量の化合物情報のなかから目的とする結果を導き出すための包括的マルチプロセス解析を簡明に示し分析困難な法医中毒薬毒物が関連する中毒患者試料や剖検資料のQTOFノンターゲット分析でのデータ集積を進め、広範囲薬物包括分析法を構築した。 トリカブト株由来アコニチン系アルカロイドに関連する新規化合物やその代謝物の探索については、親化合物の同定が困難を極め、親化合物が同定できないかぎり代謝物の探索は不可能であった。今回QTOFノンターゲット分析を利用した包括的マルチプロセス解析だからこそこのような化合物の推定が可能になった。危険ドラッグの新規代謝経路の推定・確認、新規のアコニチン系アルカロイドのデータベースの構築によって分類・整理した。本研究が法医中毒学分析、特に分析困難薬物の解析に寄与するところが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Mass Hunter Metabolite IDブラウザを用いた法医中毒薬毒物(危険ドラッグ、アコニチン系アルカロイド)QTOFデータ解析 2.危険ドラッグ、アコニチン系アルカロイドに対する包括的マルチプロセス解析の構築 本研究で得られた知見について分担研究者・研究協力者とのデータ共有の拡充を目指すとともに本研究で得られた知見について国内外に広く報告しまとめる期間としたい。
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Causes of Carryover |
トリカブト植物体分析の最適化ならびに膨大な試料のQTOFデータ解析に予定外の時間がとられたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、分担研究者・研究協力者とのデータ共有の拡充を目指すとともに本研究で得られた知見について国内外に広く報告しまとめる期間としたい。
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