2014 Fiscal Year Research-status Report
静脈内投与薬物の胃内移行動態に関する法医中毒学的研究
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26460893
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
守屋 文夫 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (40182274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮石 智 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90239343)
吉留 敬 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40304307)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 法中毒学 / 薬物分析 / 塩基性薬物 / 胃内排泄 / 尿中濃度 / 静脈内投与 / ガスクロマトグラフィー / ガスクロマトグラフ-質量分析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度取り扱った法医解剖201例を対象に、医療機関において死亡が確認された事例および医療機関外で静脈内に薬物を投与したことが疑われる事例を中心に、血液、胃内容および尿の薬物分析を実施した。胃内容と尿のイムノアッセイ(Triage DOA)を実施した後、GC-FTDとGC-MSによる薬物のスクリーニング、確認および定量を行った。捜査当局からインフォームド・コンセントの下に提供された医療機関等での薬物使用状況を詳査し、薬物分析結果を評価した。医療機関を経た事例の多くから、気管内挿管に由来するリドカインが検出された。しかし、気管内挿管に由来するリドカイン検出例は、口腔内や咽頭部に付着したリドカインの嚥下の問題があり、静脈内から胃内への薬物排泄動態を評価することは困難であるので、本研究の対象から外した。本年度は、多数例の薬物分析を実施したものの、本研究の対象となり得る事例は覚せい剤メタンフェタミンが検出された1例のみであった。そこで、本事例と静脈内投与された塩基性薬物(メタンフェタミン、エフェドリン、ミダゾラム、ジルチアゼム、ケタミン、ドキサプラムおよびリドカイン)が検出された過去の事例7例について、薬物の胃内への移行動態を探る新たな側面として胃内容濃度と尿中濃度を比較した。その結果、メタンフェタミンとエフェドリンは胃内よりも尿中への排泄量が多く、その他の薬物は尿中よりも胃内への排泄量が多いことが明らかになった。メタンフェタミンとエフェドリンは未変化体として尿中に排泄される割合が40%以上と高く、その他の薬物はその割合が3%以下と低いことが、それら薬物の胃内と尿中への排泄動態の差異の要因と考えられた。代謝が速く、未変化体として尿中に排泄される割合の低い塩基性薬物が静脈内投与された場合には、胃内容はそれら薬物の検査試料としてきわめて有用であると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
法医解剖例には医療機関を経た事例がかなり含まれるが、その中で本研究の対象となるもの、すなわち死亡の2、3日以内に塩基性薬物が使用されかつ静脈内投与のみが行われた事例の数は限られる。医療機関を経ないものについては、実質的に覚せい剤メタンフェタミン等に限定される。本年度は、研究対象候補事例の地道な薬物分析と死亡状況の詳査を実施したものの、対象事例は1例のみであった。しかし、過去の塩基性薬物静脈内投与事例(7例)と合わせ、薬物の胃内への移行動態を探る新たな側面として、胃内容と尿の薬物濃度の関係を解析し、新知見を得ることができた。したがって、研究はおおむね順調に進行したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、薬物が静脈内に投与された事例を地道に集積することが肝要である。したがって、本年度と同様に、研究対象候補と思われる事例の薬物分析と死亡状況の詳査を継続して実施する。一方、薬物が経口投与された事例についても、消化管からの吸収が完了した事例や代謝物が検出された事例は本研究の対象となり得るので、データの集積を行う。
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Causes of Carryover |
論文投稿料が必要なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬物分析に必要な試薬等消耗品費に充てる。
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