2015 Fiscal Year Research-status Report
静脈内投与薬物の胃内移行動態に関する法医中毒学的研究
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26460893
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
守屋 文夫 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (40182274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮石 智 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90239343)
吉留 敬 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40304307)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 法中毒学 / 薬物分析 / 塩基性薬物 / 塩基性代謝物 / 胃内排泄 / 静脈内投与 / ガスクロマトグラフィー / ガスクロマトグラフ-質量分析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度取り扱った法医解剖170例を対象に、血液および胃内容の薬物分析を実施した。その結果、本研究の対象となる事例は、アミトリプチリン経口摂取事例2例、ジアゼパム経口摂取事例1例、カルバマゼピン経口摂取事例2例、およびメタンフェタミン静脈内投与事例4例であった。 アミトリプチリン経口摂取事例の代謝物ノルトリプチリンの胃内容/血液比はそれぞれ4.6および4.3であった。ジアゼパム服用事例の代謝物ノルジアゼパムの胃内容/血液比は3.0であった。代謝物のように血中濃度が徐々に上昇するものでも塩基性の性質を維持していれば胃内に移行しやすいことが示唆された。 カルバマゼピン経口摂取事例は、いずれも摂取後数時間以上経過していた。カルバマゼピンの胃内容/血液比はそれぞれ0.32および0.34ときわめて小さい値を示した。カルバマゼピンは、pHに関わりなく高い疎水性を有していることから、血中から胃内への分泌が制限されることが明らかとなった。 メタンフェタミン静脈内投与例事例のメタンフェタミンの胃内容/血液比は、3例では21.5~52.0ときわめて大きい値であったが、1事例では4.4とさほど大きくなかった。同比が4.4であった事例では、H2受容体拮抗薬により胃酸分泌が抑制され、胃内メタンフェタミン濃度が十分に上昇しなかった可能性が考えられた。 また、静脈内投与された塩基性薬物の胃内移行動態を実験的に検討するため、家兎に1 mg/ml酢酸フレカイニド生理食塩液を1 ml/kg静脈内投与し、その15分後の血液および胃内容のフレカイニドの濃度を測定した。その結果、フレカイニドの胃内容/血液比は5.6~6.4(平均6.0)であり、フレカイニドは静脈内投与後きわめて速やかに胃内に排泄されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
法医解剖例には医療機関を経た事例がかなり含まれるが、その中で本研究の対象となるもの、すなわち死亡の2、3日以内に塩基性薬物が使用されかつ静脈内投与のみが行われた事例の数は限られる。医療機関を経ないものについては、実質的に覚せい剤メタンフェタミン等に限定される。本年度は、経口投与された塩基性薬物の代謝物に着目してそれらの胃内移行動態を検討し、新知見を得ることができた。また、カルバマゼピンの溶解度からその胃内移行動態を解析し得た。メタンフェタミンの胃内移行動態に影響する因子についても若干考察をすることができた。さらに、動物実験により血中塩基性薬物がきわめて速やかに胃内に移行することも確認し得た。したがって、研究はおおむね順調に進行したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様に、研究対象候補と思われる事例の薬物分析と死亡状況の詳査を継続して実施する。薬物が静脈内に投与された事例を地道に集積するとともに、薬物が経口投与された事例についても、消化管からの吸収が完了した事例や代謝物が検出された事例について引き続きデータの集積を行う。
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Causes of Carryover |
論文投稿料が必要なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬物分析に必要な試薬等消耗品費に充てる。
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