2016 Fiscal Year Research-status Report
MALDI-TOF MSを用いた高病原性微生物の網羅的検知
Project/Area Number |
26460896
|
Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
藤浪 良仁 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (30335632)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | MALDI / 生物剤 / 病原微生物 / 賦形剤 / マススペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】生物剤が疑われる白い粉のような未知資料に対して病原微生物の迅速検出が望まれているが,その微生物が製剤化されていることも想定される。そこで未知資料中の微生物を同定するための分離培養なしの迅速スクリーニングとしてMALDI-TOF MSを用いるときに様々な賦形剤が混入する場合,検出阻害があるのか,また賦形剤はMALDI-TOF MSで同時検出可能かを試みた。【実験方法】微生物としてセレウス菌 ATCC4342の栄養型を普通寒天培地で好気培養したものを使用し,賦形剤はスターチ・ラクトース・ヒドロキシプロピルセルロースを使用した。市販されている乳酸菌製剤は複数社の錠剤型,細粒型を用いた。新鮮な細菌と賦形剤を段階的な比率で混和し,CHCA溶液を用いて,測定範囲m/z 2,000-20,000の範囲でMALDI-TOF MSで検出し解析を行った。市販細菌製剤についても段階希釈し同様に行った。【結果及び考察】セレウス菌に賦形剤を添加したところ,スターチとラクトースは菌体の絶対量が維持されていれば,セレウス菌マススペクトルパターンへの検出阻害は殆どなかった。しかしヒドロキシプロピルセルロースはセレウス菌の低分子領域のピークは検出されたが高分子領域は検出されない傾向であった。一方,賦形剤の同時検出を試みたが,測定領域にフラグメントは検出されなかった。また市販乳酸菌製剤から直接乳酸菌由来のピーク検出を試みたが,含有量が少なかったためか検出できなかった。よって分離培養を介さずに直接MALDI-TOF MSで病原体検出するとき,賦形剤により製剤化されていても十分量の菌体が含有していれば著しい阻害はなく検出可能であるが,含有量が賦形剤に対し僅かであれば検出困難と思われた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生物剤が疑われる白い粉のような未知資料から病原微生物を検出する時、微生物が製剤化されていることも想定される。そこで未知資料中の微生物を同定するための分離培養なしの迅速スクリーニングとしてMALDI-TOF MSを用いるときに様々な賦形剤が混入する場合,検出阻害があるのか,また賦形剤はMALDI-TOF MSで同時検出可能かを試みた。その結果、分離培養を介さずに直接MALDI-TOF MSで病原体検出するとき,賦形剤により製剤化されていても十分量の菌体が含有していれば著しい阻害はなく検出可能であるが,含有量が賦形剤に対し僅かであれば検出困難と思われた。今年度にMALDI-TOF MSを用いた細菌検出を完了する予定であったが、ギ酸抽出では同一の炭疽菌株であっても栄養型と芽胞型で大きく異なることを見出しこれを利用し精製度に伴う危険度迅速検知の可能性を新たに見出したため、計画を変更し新たに精緻な精製度解析を行うこととした。このため、精緻な精製度解析を次年度に行うこととした。
|
Strategy for Future Research Activity |
芽胞から栄養型へのジャーミネーションの進行段階をマススペクトルで判断出来るかどうかを検討する。芽胞形成細菌の中でも特に炭疽菌は、栄養型の莢膜発現過程についても検討を行う。 動物への感染実験においては、マウス等の実験動物を用いて感染実験を行い、感染臓器に形成される菌塊から微生物の感染時特有のスペトルパターンが得られるか検討し、同時に感染臓器からの感染時特有のスペトルパターンが得られるか検討する。さらに感染臓器の組織切片を作製し、感染臓器断面のMALDI-Imagingを行い、病巣での病原体検出が可能かどうかを検討する。
|
Causes of Carryover |
平成28年度にMALDI-TOF MSを用いた細菌検出を完了する予定であったが、、ギ酸抽出では同一の炭疽菌株であっても栄養型と芽胞型で大きく異なることを見出しこれを利用し精製度に伴う危険度迅速検知の可能性を新たに見出したため、計画を変更し新たに精緻な精製度解析を行うこととした。また平行して実験動物への感染実験を平成28年度に実施予定であったが、平成29年度に実施することとしたため、動物実験に必要な経費が次年度使用額として生じた。 次年度使用額は、精緻な芽胞精製度解析と動物実験を次年度である平成29年度に行うこととしたので、これらに必要な経費に充てることとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
芽胞から栄養型へのジャーミネーションの進行段階をマススペクトルで判断出来るかどうかを検討する。これら検討に必要な、芽胞化培地作製、芽胞精製、発芽および栄養型の生理活性の測定の試薬に経費を充てる。 また動物への感染実験における感染臓器断面のMALDI-Imagingを行い、病巣での病原体検出が可能かどうかを検討する。これら検討に必要な、実験動物、飼育ケージ、床敷き用フレーク、費用、麻酔薬、手術道具、MALDI用マトリックスおよびMS-Imaging用スライドグラスの購入費用に経費を充てる。
|
Research Products
(1 results)