2015 Fiscal Year Research-status Report
防已黄耆湯はPXRを活性化することによって実験的胆汁うっ滞型肝疾患を改善するか?
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26460903
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡辺 志朗 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (00222406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 恭輔 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (70707538)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胆汁うっ滞性肝疾患 / リトコール酸 / 肝臓 / 小腸 / 吸収 / 排泄 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
リトコール酸(LCA)をマウスに経口投与することによって、胆汁うっ滞性肝疾患モデルにおける防已黄耆湯(BOT)の経口投与の影響を評価した。その結果、肝傷害の発症が顕著に抑制されることが確認できた。この時のマウス肝臓中のLCAの濃度の上昇が、BOTの投与によって顕著に抑制されることも見出された。またLCAの投与によって起こる血中の総胆汁酸濃度の上昇についても、BOTの経口投与が抑制効果を示した。以上の結果から、BOTのこのような効果は、経口的に負荷されたリトコール酸の消化管からの吸収の段階において起こる可能性を検証するために、本年度の研究計画にはなかったが、腹腔内投与されたリトコール酸による胆汁うっ滞性肝疾患モデルに対するBOTの経口投与の影響を検討した。すなわちリトコール酸が消化管を介することなく、直接肝臓へ取り込まれて肝臓の傷害を誘発した場合には、BOTが軽減効果を発揮するか否かを判定するための実験を行った。その結果、このモデルにおいては、BOTはまったく肝傷害を軽減しないことが判明した。またこのときのリトコール酸の肝臓内濃度ならびに血中総胆汁酸濃度の上昇は、BOTの投与によって影響を受けなかった。これらの結果から、BOTは肝臓に直接作用することによって、そこでのリトコール酸の蓄積の抑制したのではなく、消化管での吸収の抑制、もしくはそこで排泄・代謝を促進することを介して、結果的に肝臓へのリトコール酸の蓄積を軽減し、肝傷害の軽減に至ったと推測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
経口投与した防已黄耆湯がリトコール酸をマウスに負荷することによって誘導される胆汁うっ滞性肝疾患モデルの肝傷害を軽減する機構に、消化管における胆汁酸代謝機能の修飾が関与するか否かを示すための実験を優先して行った。そのために元来の本研究計画において進めるべきであった肝臓中の脂質構成に及ぼす影響の評価を行うことはできなかった。ただし上記実験を行うための肝臓試料はすでに調製・保存済みであるため、次年度の早い時期にこれに着手する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
リトコール酸誘導性胆汁うっ滞性肝疾患モデルにおける肝傷害の軽減にともなう肝臓の中性脂質含量ならびにPXR依存的な脂質代謝の変動の評価は、先年度において行うことができなかったことから、その実験を先に行う。その後研究計画通りのα‐ナフチルイソチオシアネート(α‐ANIT)誘発の胆汁うっ滞性肝疾患モデルに対する防已黄耆湯の影響を評価する。上述のように、防已黄耆湯の効果が消化管の胆汁酸代謝機能の修飾である可能性が示されたことから、α‐ANITを経口ならびに腹腔内投与した時に誘導される胆汁うっ滞性肝疾患について、防已黄耆湯の影響を評価する。さらに時間的余裕があれば、胆汁酸の小腸代謝の観点から、防已黄耆湯の影響の胆汁うっ滞性肝傷害の軽減機構の解析を行うことも想定している。
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Causes of Carryover |
計画していた肝臓脂質分析ならびに脂肪合成系分子の遺伝子発現解析を行わず、比較的必要経費が少ない動物実験と胆汁酸解析実験を追加して行ったことによって、少額であるが上記の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記未使用額分を次年度の使用分に合わせて使用する予定である。次年度では未着手の肝臓脂質分析ならびに脂肪合成系分子の遺伝子発現解析を行うことに加えて、当初からの計画実験を行うことから、できるだけ経費的に効率化を図って、予定の研究計画を遂行したい。
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Research Products
(8 results)