2014 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌における上皮細胞増殖因子および腫瘍壊死因子関連新規分子標的遺伝子の機能解析
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26460978
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
小笠原 尚高 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (00433219)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 炎症 / 短鎖脂肪酸 / TNF-α |
Outline of Annual Research Achievements |
【短鎖脂肪酸によるADAM活性抑制の検討】 短鎖脂肪酸がADAM10の活性を抑制することがすでに判明しているが、TNF-α前駆体のshedding誘導に関与するADAM17について、短鎖脂肪酸による活性抑制を検討するため以下の実験を遂行した。大腸癌培養細胞(CaCo2)ならびに大腸上皮培養細胞(HT29)において、酢酸(短鎖脂肪酸)によるADAM17の活性に対する影響をWestern blot法ならびに定量的PCR法で検討した。CaCo2およびHT29に酢酸(50mM、100mM)を投与したところ、Western blot法にてADAM17の発現が容量依存的に抑制された。また、定量的PCR法においても同様にADAM17の発現が容量依存的に抑制されることが確認された。CaCo2およびHT29に酢酸(50mM、100mM)を投与したのち、ADAM17活性に関与するIL-1βあるいはIL-8を投与したところ、IL-1βあるいはIL-8によるADMA17の活性は、酢酸により発現抑制された。また、定量的PCR法においても同様にADAM17の発現が容量依存的に抑制されることが確認された。 【TNF-α-CTFの核内移行の解析】 抗TNF-α抗体を用い、大腸癌培養細胞(CaCo2)ならびに大腸上皮培養細胞(HT29)内でのTNF-α-CTFの局在、IL-1β、IL-8によるshedding誘導後のおけるTNF-α-CTFの核内移行について蛍光免疫染色法を用いて検討した。前処理のない状態でのCaCo2ならびにHT29におけるTNF-α-CTFの局在は細胞膜であるが、IL-1βあるいはIL-8によりADAM17の活性を亢進させTNF-α前駆体のshedding誘導したところ、TNF-α-CTFは核内へ移行することが蛍光顕微鏡にて確認された。CaCo2およびHT29に酢酸(50mM、100mM)を投与したのち、ADAM17活性に関与するIL-1βあるいはIL-8を投与したところ、TNF-α-CTFの核内移行が抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる研究目的である短鎖脂肪酸によるADAM活性抑制の検討ならびにTNF-α-CTFの核内移行の解析は上述のように予定通り順調に行うことができた。しかしながら、TNF-α細胞内ドメインの結合転写因子の同定については、データベースに存在する遺伝子の中から、TNF-α-CTF結合構造を持つ炎症関連転写抑制遺伝子を同定する解析が十分に遂行できていないため、今後引き続き解析を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【今後の推進方策】 TNF-α-CTF結合構造を持つ炎症関連転写抑制遺伝子を同定したのち、TNF-α-CTF関連転写抑制遺伝子のsiRNAによるノックダウン状態とTransfection vectorによる高発現状態からmRNAを調整し、DNAチップによるMicro array解析を行う予定である。マウス(C57BL/6)に対し、2%DSSを5日間自由飲水させマウス潰瘍性大腸炎モデル(DSS腸炎マウス)を作成する。マウス大腸組織からmRNAならびにタンパクを抽出し、ADAM17活性、TNF-α-CTFならびに関連転写抑制遺伝子の発現とその局在を検討する。また、大腸摘出組織標本を作製し、病理組織学的に炎症性細胞浸潤の程度もあわせて検討する。 【次年度の研究費の使用計画】 平成27年度の計画である特異抗体によるマウス潰瘍性大腸炎モデル(DSS腸炎マウス)の大腸組織におけるADAM17活性、TNF-α-CTFならびに関連転写抑制遺伝子の発現とその局在の検討を行うにあたり、光学顕微鏡の購入を予定している。また、ADAM17活性、TNF-α-CTFならびに関連転写抑制遺伝子のモノクローナル抗体を用い、DSS腸炎マウスの大腸組織免疫染色を行うことで大腸組織での発現意義を検討するため、免疫染色された大腸病理組織を観察するため光学顕微鏡が必要である。DSS腸炎マウスから採取した大腸組織を用い、ADAM17活性、TNF-α-CTFならびに関連転写抑制遺伝子の発現のmRNAとタンパク発現を検討するにあたり、RNAを抽出する試薬、RT-PCRを行うためのプライマー、タンパク発現を検討するための抗体やそれに伴う試薬を購入する予定である。また、TNF-α-CTF関連転写抑制遺伝子の標的遺伝子を同定するため、Micro array解析を行う予定であり、Micro arrayプレートの購入を予定している。
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