2015 Fiscal Year Research-status Report
Rho関連キナーゼが心不全病態を修飾する新規分子機構の解明と治療薬開発
Project/Area Number |
26461127
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹藤 幹人 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20709117)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 睦紀 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90304170)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 心不全 / キナーゼ / リン酸化 / 低分子量Rho |
Outline of Annual Research Achievements |
低分子量RhoAは細胞骨格形成、細胞遊走など様々な細胞内機能を制御しており、その機能は高血圧、癌などの疾患発症に関与していることが知られている。低分子量RhoAが制御する細胞内シグナルが疾患については長年、研究されてきたが、低分子量RhoAおよびその下流で機能する分子の心臓での働きは不明な点が多い。 本研究では低分子量RhoAの標的分子であるRho関連キナーゼに注目し、Rho関連キナーゼの心臓内での新規標的分子を明らかにする。Rho関連キナーゼを検討することにより、心不全発症のメカニズムについて明らかにすることを目的とする。キナーゼは新規治療薬開発の点からも注目されており、本研究は創薬にむけた基盤研究になりうる。 平成26年度は、心筋細胞に発現するRho関連キナーゼをPCR法により解析を行い、心筋細胞に発現するRho関連キナーゼを同定した。心筋細胞に発現するRho関連キナーゼの基質を生化学的手法により網羅的に解析を行った結果、心不全発症に関与する転写因子がRho関連キナーゼによりリン酸化されることを見出している。平成27年度は、前年度の細胞実験の結果をもとに、in vivo実験を中心に行った。Rho関連キナーゼの遺伝子欠損マウスを作製し、心不全の疾患モデルとして、アンギオテンシンII負荷モデル(マウス)および圧負荷モデル(マウス)を用い、Rho関連キナーゼと心不全の関連を検討した。Rho関連キナーゼ欠損により、心不全モデルでの心肥大および心機能低下は抑制されることを確認した。今後は、Rho関連キナーゼが心不全発症に関わるメカニズムを中心に検討していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に実施した研究内容について記載する。昨年度提出した研究計画では、1.アンギオテンシンII負荷心不全モデル、2.圧負荷心不全モデル、3.リン酸化の細胞生物学的意義についての研究計画を記述した。それぞれの項目について進捗状況を記載する 1.アンギオテンシンII負荷心不全モデル:心臓特異的Rho関連キナーゼ欠損マウスを作製した。遺伝子欠損マウスを1年間、観察したが、特に心機能低下などの所見を認めなかった。次に、アンギオテンシンIIを浸透圧ポンプに満たし、浸透圧ポンプをコントロールマウスとRho関連キナーゼ欠損マウスに植込み、 アンギオテンシンIIを4週間持続的に負荷した。コントロールマウスでは心肥大・心臓線維化を認めたが、Rho関連キナーゼマウスでは心肥大・心臓線維化ともに抑制した。 2.圧負荷心不全モデル:アンギオテンシンIIの負荷モデルに加え、 マウス心不全モデルのスタンダードモデルであるTAC術(transverse aortic constriction)を行い、圧負荷心不全におけるRho関連キナーゼの働きについても検討した。TAC術4週後の評価ではアンギオテンシンII負荷モデルと同様、心肥大を抑制した。またアンギオテンシンII負荷は比較的短期間(4週間前後)の評価が主であるが、TAC術モデルではより長期的な評価(6か月~1年間)が可能であり、TAC後24週前後から、Rho関連キナーゼ欠損マウスの生存率が改善傾向にあることを見出している。 3.リン酸化の細胞生物学的意義:平成26年度に生化学的手法・細胞生物学的手法により、Rho関連キナーゼの新規基質を同定している。このリン酸化が心不全関連遺伝子の発現との関連を検討し、BNPなどの心不全関連遺伝子の発現との関連を見出した。 以上、平成27年度の研究は、研究計画通りに、概ね進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の研究計画について記載する 1.In vivoマウス心不全モデルの解析:アンギオテンシンII負荷モデル・圧負荷心不全モデルともにn=6-8の検討であり、マウスの数を増やし、平成27年度に見出した所見の再現性を確認する。心臓の重量に加え、心臓超音波検査などにより心機能を評価する。また、圧負荷心不全モデルでは生存率(TAC後6~12カ月)を引き続き評価し、心肥大に加え、Rho関連キナーゼが心拡大へも影響についても検討する。 2.In vivoにおけるリン酸化の確認:細胞実験では、Rho関連キナーゼが新規基質をリン酸化することを確認している。抗リン酸化抗体を作製中であり、このリン酸化抗体が標的リン酸部位を認識することを確認後、心不全モデルのマウス心臓にて、心不全下により新規基質がリン酸化されるかを検討する。また、Rho関連キナーゼ欠損マウスでは、このリン酸化が抑制されるかを評価し、in vivoにおいても、Rho関連キナーゼが新規基質に対してキナーゼとして働くかを確認する。 3.Rho関連キナーゼの特異性:Rho関連キナーゼと他のキナーゼの相違について検討する。Rho下流のキナーゼとしてはRhoキナーゼが最も知られているが、本研究のRho関連キナーゼの新規基質として同定したリン酸化部位は、Rhoキナーゼはリン酸化できないことを生化学的実験で見出している。Rho関連キナーゼを他のキナーゼ(特にRhoキナーゼ)と比較検討し、Rho関連キナーゼの特異的な機能を同定する。 平成26年度、27年度、本年度の研究結果について、本年度中の論文投稿を予定している。
|
Causes of Carryover |
平成27年度にリン酸化抗体を完成する予定であったが、抗体価の優れたウサギ血清の作製に予定より時間がかかり、抗体精製を平成28年度に変更したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗体精製費用に使用する。
|
Research Products
(1 results)