2014 Fiscal Year Research-status Report
肺癌・中皮腫の微小環境に着目したベバシズマブの耐性関連バイオマーカーの探索
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26461191
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
後東 久嗣 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (00437641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
埴淵 昌毅 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (80335794)
柿内 聡司 徳島大学, 大学病院, 講師 (50380100)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管新生阻害剤 / 薬剤耐性 / 悪性胸膜中皮腫 / 肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト悪性胸膜中皮腫細胞(Y-MESO-14細胞)同所移植モデルマウスを用いて、血管新生阻害剤(抗VEGF抗体ベバシズマブ)の耐性メカニズムを解明することを目的としている。既に、上記マウスモデルでベバシズマブ治療実験を行うと獲得耐性現象が認められ、耐性化した腫瘍には宿主側のfibroblast growth factor (FGF2) が有意に増加していることを確認している。平成26年度はベバシズマブ獲得耐性におけるhost FGF2の重要性の検証およびその産生細胞の同定を行った。FGF2がベバシズマブ耐性化に寄与しているか否かについて、FGF受容体阻害薬(BGJ-398)を用いて、ベバシズマブとの併用効果について検討した。Y-MESO-14細胞を胸腔内に移植後、7日目からベバシズマブによる治療を開始し、21日目から35日目にかけてBGJ-398を連日経口投与した。その結果、併用治療群においては単剤治療群よりもさらに生存期間の延長を認めた。以上から、本モデルにおけるベバシズマブ耐性化に腫瘍内のFGF2産生が寄与していることが明らかとなった。次に、FGF2産生細胞について検討を行った。これまでの報告から、ベバシズマブ耐性化に関与する細胞としてMyeloid-derived suppressor cells (MDSC)やマクロファージが報告されている。そこで、MDSCのマーカーであるGr-1、マクロファージのマーカーであるCD68とF4/80による免疫染色を行った。しかしながら、いずれのマーカー発現細胞もFGF2との共染色をほとんど示さなかった。一方、FGF2はCXCR4およびタイプIコラーゲン染色と共染色を示し、これらのマーカー発現から、FGF2を発現する主な細胞はfibrocyteであることが明らかとなった。実際に、タイプIコラーゲンとCXCR4の二重染色法では、両マーカーを発現するfibrocyteと考えられる細胞が、ベバシズマブ耐性腫瘍内で約2倍に増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、平成26年度は次の3項目について重点的に検討することとしていた。1.FGF2シグナルを阻害することで、FGF2の血管新生再増生に対する役割を調べる。2.腫瘍組織内において、宿主側FGF2がどの細胞から産生されているのかを単球、線維芽細胞、好中球等の表面マーカーとFGF2を免疫染色することで検討し、責任細胞を同定する。3.FGF2がどのようなメカニズムで宿主細胞から産生されるのか調べる。がん細胞側が何らかの因子を放出してFGF2を産生する宿主細胞を集積している可能性が考えられるため、がん細胞側の遺伝子変化を網羅的に解析することで、その因子の同定を試みる。1.2.については既に結果が出ており、3.についても既に研究を開始している。よって研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
宿主側細胞であるfibrocyteよりFGF2産生が惹起されるメカニズムについては、がん細胞が関与していると考えられる。がん細胞側が何らかの因子を放出してFGF2を産生するfibrocyteを集積している可能性を考え、現在がん細胞側の遺伝子変化を網羅的に解析中である。これらの因子を同定後、fibrocyteの腫瘍への遊走、集積に関わるメカニズムをin vitro研究を中心に明らかにしつつ、同時にベバシズマブを含む化学療法を行ったヒト肺腺癌症例の腫瘍組織切片において、FGF2およびfibrocyteを免疫組織学的に検出し、ヒトでもマウスと同様の現象が起きていることを確認する。これまで、FGF2を含むいくつかの液性因子がベバシズマブをはじめとする抗VEGF療法の耐性関連因子として報告されてはいるものの、そのすべてがマウスモデルや末梢血を用いた検討であり、その産生細胞レベルでの報告は皆無である。実際、これらの液性因子は実臨床においてベバシズマブ耐性のバイオマーカーとはなり得ていない。がんの薬剤耐性は組織内で起こるため、そのメカニズムを調べるにあたって臨床組織切片を使用し、液性因子のみならず細胞レベルでのバイオマーカーを同定することは非常に重要であると考えている。
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Causes of Carryover |
平成27年3月納品となり、支払いが完了していないため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年4月に支払い完了予定である。
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Research Products
(4 results)