2014 Fiscal Year Research-status Report
治療法の進歩からとり残された高リスク骨髄腫に対する新しいコンセプトによる創薬研究
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26461432
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
服部 豊 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (20189575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳川 弘志 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (40327672)
木内 文之 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60161402)
須貝 威 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60171120)
山田 健人 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60230463)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 髄外病変 / 上皮間葉系移行 / nucleophosmin-1 / TC11 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄腫の予後は新規薬剤の登場により改善したが、ハイリスク症例の予後は未だに不良である。我々はt(4;14)転座を有するハイリスク骨髄腫細胞では、上皮間葉系移行遺伝子(EMT関連遺伝子)が高発現していることを見出した。このことから、ハイリスク骨髄腫細胞はもはや造血細胞の形質を失い、上皮間葉系細胞に細胞分化のリプログラミングを来しているのではないかと考え、hematopoietic epithelial mesenchymal transition(HEMT)理論を打ち立てた。実際に、骨髄腫細胞におけるNあるいはE-cadherinの異所性発現を見出し、いずれかのcadherinを発現する骨髄腫細胞はSCIDマウスに皮下形質細胞腫を形成し易い。 一方我々は、既存のIMiDsを凌駕する抗骨髄腫作用を有するTC11を開発し、それに直接結合する蛋白質としてNPM-1およびαtubulinを見出した。すなわち、TC11は催奇形性にかかわるcereblonには結合せず、NPM-1やαtubulinを介した別の分子機構により腫瘍細胞のアポトーシスを誘導していると推測される。現在、NPM1のノックダウン、NPM1発現量とTC11への感受性との相関、NPM1のオリゴマー形成やリン酸化など多方面からの検討が進行中である。 さらに新たなハイリスク骨髄腫克服薬開発のために、天然資源物ライブラリーのスクリーニングを進めている。 骨髄腫細胞株には、SCIDマウスの皮下に2-3週で形質細胞腫を形成する細胞群とそれをまったく作らない群がある。形質細胞腫形成にかかわる骨髄腫細胞の背景因子を追及し、髄外病変の分子機構を明らかにしようとしている。まず26年度は、GFPでgene markingを行った骨髄腫細胞株をSCIDマウスに皮下注射し、形質細胞腫からの細胞回収を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究の大きな3つの柱である(1)新しい概念による病態解明、(2)克服薬スクリーニングシステムの確立、 (3)創薬シーズの開発を掲げた。(1)については、ハイリスク骨髄腫細胞がhematopoietic epithelial mesenchymal transition(HEMT)を来していることの根拠の一つとして、EおよびN-cadherinやEMT関連遺伝子の骨髄腫細胞における異所性発現をとらえることができた。これとは別に、我々自らが合成したフタル酸誘導体TC11や既存のサリドマイド誘導体(IMiDs)がnucleophosmin-1(NPM-1)に結合することも見出した。これらの分子の骨髄腫細胞における生物学的意義は何か、さらに新たなハイリスク骨髄腫治療の標的分子となり得るかについての検討が開始されているが、まだ結論に至っていない。(2)(3)についてはin vivoでの骨髄腫細胞の増殖抑制の検討も含めてシステムが完成しつつある。このシステムを用いて天然資源物質のライブラリーをスクリーニングし、実際にハイリスク骨髄腫治療薬として有望なジテルペン化合物を見出し、腫瘍縮小や毒性、薬物動態などin vivoでの検討も開始した。以上を踏まえて、研究の柱が順調にスタートできている。その一方で、ハイリスク骨髄腫の髄外病変の病態解明や克服薬開発という最終目標にはさらなるデータの積み重ねが必要であり、研究初年度として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、N,E-cadherinやEMT関連遺伝子産物の生物学的意義を明らかにするために、t(4;14)陽性骨髄腫細胞で高発現するFGFR3とN-cadherinのhetero-dimer形成と増殖シグナルの伝達を明らかにしてゆく。一方で骨髄腫細胞におけるcadherin群発現の臨床的意義を明らかにするために、骨髄腫患者検体を用いて免疫組織学的検討を行い予後や新規治療薬に対する奏効などとの関連を追跡する。 これとは別に、TC11の結合分子であるNPM-1の機能解析も進行している。骨髄腫細胞におけるNPM-1蛋白質の発現量とTC11やレナリドミドに対する感受性の相関、TC11によるNPM-1の細胞内ターンオーバーなどについて検討を加える。NPM-1ノックダウンにより骨髄腫細胞は中心体形成不全によりアポトーシスに陥るか、多量体形成への影響、リン酸化は重要な評価項目である。 一方、ある骨髄腫細胞株は容易にこのSCIDマウスにplasmacytomaを形成するが、別の細胞腫はこれを形成しない。この皮下plasmacytomaを、骨髄腫治療のハードルとなっている髄外病変に見立てて、どのような腫瘍内因子がplasmacytoma形成に寄与しているのかを追求してゆきたい。現在plasmacytomaからgene markingした骨髄腫細胞を抽出し表面マーカーの特長を検索中である。plasmacytoma形成する細胞集団のmicroarray検索を行い、髄外病変形成に関与する遺伝子分離を行いたい。また、このマウスモデルを用いて、新規ジテルペンの骨髄腫治療薬開発に向けて検討を進める。
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[Journal Article] A novel phthalimide derivative, TC11, has preclinical effects on high-risk myeloma cells and osteoclasts.2015
Author(s)
Matsushita M, Yoshie Ozaki Y, Hasegawa Y, Terada F, Tabata N, Shiheido H, Yanagawa H, Oikawa T, Matsuo K, Du W, Yamada T, Hozumi M, Ichikawa D, and Hattori Y.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 10(1)
Pages: e0116135
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant