2015 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌の病原性発現へのファージの関与機構の解明とその殺菌力を用いる除菌法の開発
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26461504
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (00190439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 淳平 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20574619)
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (50263976)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / ファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、ピロリ菌 NY43 株と KMT83 株が、新規ファージである KHP30 様ファージ(それぞれ KHP30、KHP40)を菌内に保有していることを報告してきた。本研究の主要な目的の一つは、ピロリ菌の胃腸上皮細胞へ付着時における、これらのファージの当該上皮細胞関への影響の解明である。これまで NY43 株細胞中では、本ファージがエピソームとして存在することを明らかにしているが、KMT83 株ではの存在状態は未確定であった。そのため、本研究では、KMT83 株における KHP30 様ファージの存在状態を検討した。また、NY43およびKMT83 の両者の全ゲノム解読を行ない、最終確認を行なった。 ピロリ菌 KMT83 株 のDNAをパルスフィ-ルド電気泳動により分離後、ファージビリオン主要タンパク質遺伝子を標的にサザン解析を行なったところ、本ファージゲノムは細菌染色体中にはなく細胞質にエピソームとして存在することが予想された。また、NY43 株を単一コロニー分離を行なうと、ファージ KHP30 エピゾームがかなりの頻度(約80%程度)で脱落したが、KMT83 株からの KHP40 エピゾームの脱落は低頻度にとどまった。また、NY43 株および KMT83 株のゲノム DNA 塩基配列の解読を行なった結果、ファージのDNA が菌ゲノムから独立した状態で存在することを、最終的に確認した。 これにより、日本国内で分離された活性を有するピロリ菌ファージはすべて、宿主菌の中でエピソームとして存在していることが確認された。しかし、これらのファージの単一コロニー分離の際のファージエピソームの保持率が異なることから、宿主菌における細胞環境やエピゾームの構造、遺伝子産物の機能等は、相互に異なっていると予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KHP30様ファージを保有うるピロリ菌株における当該ファージの存在状況の確定は、これらの菌株と胃および腸管細胞の相互作用を検討するための基礎となるため重要である。そのため、この点をさらに確定する作業を行なった。これまで、当該菌株の1株NY43についてはビリオンタンパク質遺伝子を標的にしたサザン法により、KHP30ファージのゲノムがエピソームとして存在していることを報告していたが、他の1株MKT83においては未確定であった。本研究を通して、同様の方法によりKMT83株においても,内在するファージKHP40ゲノムがエピゾームとして存在していることを確認した。さらに、これら両株のゲノム解読を行ない、これらのファージゲノムが菌ゲノムには存在せず、独立したエピソームとして存在することを最終的に確認した。これにより、菌と細胞との相互作用に関する実験を行う基盤が確立された。
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Strategy for Future Research Activity |
KHP30様ファージ(KHP30、KHP40)をエピソームとして保有するピロリ菌 NY43、KMT83株とそれから本ファージエピソームが脱落した, NY43-1、KMT83-1株使用し以下の実験を行う。(1)これら4株の胃腸上皮細胞への付着状況の比較、(2)付着後の胃腸上皮細胞の形態的、生理的変化の確認、(3)付着後の当該上皮細胞内へのKHP30様ファージゲノムおよびインテグラーゼ遺伝子産物の移動の有無の確認、そして(4)in vitroでの Epstein-BarウイルスDNAとの相互作用の有無の検討を行なう。以上を通して、上記ピロリ菌ファージの胃腸における機能を推定する。
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Causes of Carryover |
当該年度において行う予定であったピロリ菌株と胃腸細胞の相互作用に関する実験を遂行する前に、想定される実験結果の判定を明瞭化を期するために、使用菌株におけるファージゲノムの保持状況を詳細に確定する必要が生した。そのため、菌株と上皮細胞の相互作用の解析が、次年度にまで延長されることになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の実験により、ピロリ菌2株においてKHP30様ファージのエピゾーム性が確定されたので、次年度においてこれらの菌株及びエピゾームを脱落した菌株を使用し、ピロリ菌と上皮細胞の相互作用に関する実験を行う。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Characterization of Pseudomonas aeruginosa phage KPP21 belonging to family Podoviridae genus N4-like viruses isolated in Japan.2016
Author(s)
Shigehisa R, Uchiyama J, Kato S, Takemura-Uchiyama I, Yamaguchi K, Miyata R, Ujihara T, Sakaguchi Y, Okamoto N, Shimakura H, Daibata M, Sakaguchi M, Matsuzaki
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Journal Title
Microbiol Immunol
Volume: 60 (1)
Pages: 64-67
DOI
Peer Reviewed
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