2014 Fiscal Year Research-status Report
小児CKD新規治療法開発のための間質線維化での接着分子Hic-5の役割と機能解析
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26461613
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
近藤 秀治 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (00380080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香美 祥二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00224337)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腎尿細管間質 / 細胞増殖 / 線維化 / 細胞接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の小児慢性腎臓病(CKD)の治療戦略上重要な疾患は、先天性腎尿路奇形/異常(CAKUT)、遺伝性腎疾患、嚢胞性腎疾患である。これらの疾患の治療法の開発には、進行期の共通病理像である尿細管間質の線維化をターゲットとした基礎的研究を行い、新規治療法を検討する必要がある。我々は、TGF-βが誘導する接着斑蛋白Hic-5に関して、糸球体疾患の慢性病変形成への関与に関する研究を行ってきたが、間質の線維化においては、Hic-5を含めた細胞接着分子の役割を十分明らかにできていない。本研究の目的は、間質の線維化でみられる尿細管細胞障害、間質における細胞増殖や細胞外基質(ECM)蓄積に関してHic-5の役割やシグナル伝達機構を解明し、これらの基礎的研究成果をもとに、新たな薬剤開発へ治療戦略を創出することである。 平成26年度の研究実施計画では、間質線維化病変形成モデルを作成し、病理組織を検討することが目的であった。我々は、Hic-5遺伝子欠損(Hic-5-/-)マウスの系統を確立し、このマウスの1側尿管を結紮することで、腎尿細管間質の炎症・線維化をきたすモデルを確立することに成功した。現在この組織病変やHic-5の蛋白発現を検討しており、Hic-5の間質線維化での役割を検討中である。さらに本年度はHic-5の細胞増殖に関する役割解析に関するデータの整理が終了したため論文投稿し、PLOS ONE (2015年3月31日時点でin press) の論文掲載に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画では、間質線維化病変形成モデルを作成し、組織を検討することが目的であった。間質の線維化を評価するために、12週齢の野生型(Hic-5+/+;C57BL6)及びHic-5-/-マウスの左側腎尿管を結紮し、尿細管間質線維化病変形成モデルを作成した。このモデルの作成により、先天性腎尿路奇形/異常(CAKUT)、遺伝性腎疾患、嚢胞性腎疾患の進行期の共通病理像である尿細管間質の線維化を解析することが可能となった。我々は、このモデルでHic-5+/+及びHic-5-/-のモデルマウスを、尿管結紮後0,3,7,14日で左側腎と対象の右側腎を採取した。組織採取前に、採尿、採血を施行した。また、組織は、病理解析用標本と蛋白及び遺伝子解析用サンプルを収集整理して解析中である。現在尿細管や間質線維芽培養細胞の樹立を進めている。これに関しては、確立が難しいと判断した場合は、共同研究などによる分与等の方策も検討している。 この実験と並行して、本年度はHic-5の細胞増殖に関する役割解析に関するデータを整理終了しPLOS ONE (2015年3月31日時点でin press) の論文掲載に至った。本研究の成果は、動物実験においてHic-5-/-腎炎マウスはHic-5+/+腎炎マウスと比較して、糸球体細胞数のさらなる増加を認めたこと、培養実験でPDGF-BBやTGF-β1での刺激により、Hic-5+/+細胞の増殖に比してHic-5-/-細胞がより強く細胞増殖を示すことが判明した。Hic-5-/-細胞にサイクリンD1の発現増強やp21蛋白発現抑制が認められたことより、Hic-5の細胞増殖抑制作用は細胞周期蛋白の発現変化を介したものであることが明らかとなった。 以上の状況から、平成26年度の達成度は概ね順調に経過していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度(初年度)にHic-5の研究成果をまとめ、論文採択されるまでに至った。報告論文の研究においては、腎炎急性増悪期でのHic-5の役割の解明に焦点が当てられていた。腎疾患は慢性に進行する疾患であり、現時点では慢性進行期におけるHic-5の役割は十分に解析された訳ではない。Hic-5自体の役割の分子レベルでの解析に加えて、今後は腎疾患の予後を含めた慢性腎臓病(CKD)全体におけるHic-5の役割を解析・探究していく方針である。そのためには、第1に現在進行中の間質線維化病変形成モデルにおいて、Hic-5発現が我々の示唆してきた細胞増殖抑制と関連をもって変化するのかを明らかにすること、腎疾患の共通病理像である間質線維化においてHic-5の発現自体が、改善に作用するのか増悪進行に影響するのかを探索していく方針である。 第2に、尿細管間質細胞を用いた研究であるが、細胞培養系の確立が現在進行中である。この培養系の確立が困難と判断した場合は、共同研究による細胞供与等の対応に加えて、細胞レベルでの遺伝子発現や蛋白発現の制御が必要になる。この課題に関しては、現在の研究状況を確認しながら今後の方針を慎重に判断したいと考えている。そして、平成27年度の研究課題としてHic-5発現が腎尿細管や間質細胞において、接着や細胞機能に如何に影響を与えるのか、増殖、接着、遊走などの細胞機能解析を含めて検討していく方針である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Clinical practice guideline for pediatric idiopathic nephrotic syndrome 2013: general therapy2015
Author(s)
Kaku Y, Ohtsuka Y, Komatsu Y, Ohta T, Nagai T, Kaito H, Kondo S, Ikezumi Y, Tanaka S, Matsumoto S, Sako M, Tsuruga K, Nakanishi K, Kamei K, Saito H, Fujinaga S, Hamasaki Y, Chikamoto H, Ishikura K, Iijima K
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Journal Title
Clin Exp Nephrol
Volume: 19
Pages: 34-53
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Clinical practice guideline for pediatric idiopathic nephrotic syndrome 2013: medical therapy2015
Author(s)
Ishikura K, Matsumoto S, Sako M, Tsuruga K, Nakanishi K, Kamei K, Saito H, Fujinaga S, Hamasaki Y, Chikamoto H, Ohtsuka Y, Komatsu Y, Ohta T, Nagai T, Kaito H, Kondo S, Ikezumi Y, Tanaka S, Kaku Y, Iijima K
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Journal Title
Clin Exp Nephrol
Volume: 19
Pages: 6-33
DOI
Peer Reviewed
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