2014 Fiscal Year Research-status Report
近交系マウスエクソーム解析によるプレパルス抑制遺伝子同定と統合失調症での評価
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26461759
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
豊田 倫子 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 専門職研究員 (20392045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 武男 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30249958)
SHABEESH BALAN 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (70721588)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / ゲノム / 遺伝子 / 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムマッピング:我々がプレパルス抑制(PPI: prepulse inhibition)のQTL(Quantitative Trait Loci: 量的遺伝子座)解析に用いたC57BL/6N (NIH strain)とC3H/HeN (NIH strain)のゲノム配列については、パブリックデータベースに公開されていない。そこで我々は、両系統の全エキソン配列解析を行い、検出されたSNV (single nucleotide variant)の中から、「マウス染色体10番にあるQTLのタイピング」に用いるエクソン内多型を、申請書に記した方法で選別した。次にそれぞれのSNVにつき、PPI-QTLのロッドスコアをinterval mapping法とBayesian evaluation法の2つの統計解析方法を用いて計算した。その結果、アミノ酸置換を伴うCdh23 753A/Gが最も可能性が高いことが判明した。
Cdh23遺伝子の生物学的検討:本遺伝子はカドヘリンスーパーファミリーに属する一員で、カルシウム依存的細胞間接着を媒介するグリコプロテインをコードしている。エクソンは合計69個あり、いろいろなスプライスバリアントの存在が報告されている。Cdh23 753A/Gもエクソンスキッピングに関係することが知られている。これまでCdh23は内耳に発現されていることは報告されていたが、前脳部位での発現は殆ど報告がなかった。そこで我々はin situ hybridization法で、P0, P6, P21のC57BL/6Nマウス(雄雌両方)とC3H/HeNマウス(雄雌両方)脳での発現を調べた。その結果、Cdh23遺伝子は扁桃体、海馬、視交叉上核等で発現しており、発現量のピークはP6にあることが判明した。なお、発現パターンについては、マウス系統差、性別による違いは見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は、ゲノム上の6箇所のQTLをfine mappingする予定であったが、まず最大のピークを示した染色体10番のQTLを解析した。その結果、カドヘリンファミリーに属するCdh23 (Cadherin-Related 23)遺伝子を候補として同定することができた。カドヘリンファミリーは、基礎の神経科学分野ではこれまで多くの研究があるが、精神疾患との関連では報告が限られており、かつ機能まで掘り下げた研究は見当たらない。当初の計画を鑑みると解析範囲は狭まったものの、Cdh23にフォーカスすることにより、PPIを通した精神疾患の生物学的研究を深められる可能性が出てきたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Cdh23遺伝子についてより確かで直接的なエビデンスを得るためと、メカニズム解明研究のため、遺伝子改変マウス(ノックインマウス)を作成する方針である。
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