2014 Fiscal Year Research-status Report
確率共鳴を利用した脳梗塞部の検出と被ばく線量軽減-ノイズは本当に有害因子なのか?
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26461821
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今井 國治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20335053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 啓輔 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40469937)
池田 充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184437)
川浦 稚代 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60324422)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 確率共鳴 / CT画像 / 信号検出能 / コントラスト分解能 / 白色ノイズ / 脳梗塞 / early CT sign / 脳溝狭小化型ファントム |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の主たる目的は、CT画像上で確率共鳴と呼ばれる非線形現象を発現させ、病変検出能の向上を図ることである。特に本年度は、確率共鳴の基本的な物理特性を重点的に解析した。その結果を以下に要約する。 1.脳溝狭小化型ファントムの作成 CT画像上で脳梗塞を示す病変信号の一つに脳溝狭小化がある。(early CT signの一つ)これをCT検査で検出することは臨床上極めて有益である。そこで、CT画像上でこの病変が現れるような頭部ファントムを作成した。ファントム作成自体は企業に委託したが、設計図の作成や材質の選定等は申請者らが、様々な実験を通じて決定した。設計及び作成に要した期間は6ヶ月で、計画当初よりも3ヶ月早く脳溝狭小化型ファントムは完成した。 2.CT画像における確率共鳴現象の基礎検討 本検討では、単純な信号で構成されているCT画質管理用ファントムを被写体として使用し、これを様々な条件で撮像した。その後、このファントム画像に白色ガウスノイズを付加し、確率共鳴の発現を検討した。その結果、ノイズを付加しているにも関わらず、コントラスト分解能の向上が確認され、CT画像上で確率共鳴が発現することを定量的に示した。そこで、最適なノイズ強度を検討するため、信号検出能の定量指標であるCNRとノイズ強度との関係を求めた。CNRはノイズ強度に対し最大値をとる特性を示し、この値を与えるノイズ強度は200HUであった。さらに、このノイズ強度は撮像条件にほとんど依存しないことも示された。この検討では白色ガウスノイズを対象としたが、白色非ガウスノイズであるコーシーノイズに関しても同様の検討を行った。コーシーノイズを付加することにより確率共鳴の発現は認められたが、白色ガウスノイズよりもコントラスト分解能の改善効率は低かった。このことから、コーシーノイズは信号検出能の改善にはあまり適していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は確率共鳴現象の基本的な物理特性に主眼をおいて検討を行った。これまで、ノイズは病変検出能を低下させる要因として広く認知されてきた。しかし、CT画像上で確率共鳴が発現すると、コントラスト分解能は改善し、信号検出能も向上することが示された。さらに、信号検出能を最大にするノイズ強度の存在も明らかとなった。この結果は、臨床応用を試みる上で、有益な知見になると思われる。そこで、更なる信号検出能の向上を目指し、白色ガウスノイズ以外のノイズとしてコーシーノイズによる確率共鳴の検討を行った。このノイズにおいても、確率共鳴の発現が認められたが、白色ガウスノイズほどの信号検出能の改善は示さなかった。このことから、白色ガウスノイズはコーシーノイズよりも効果的に確率共鳴を発現させることが確認された。ここまでは、脳溝狭小化ファントム作成を含めて、申請時の計画通りに研究が進んでいる。 その一方で、これらの研究成果から、新たなテーマを見出した。それは非白色ノイズによる確率共鳴の検討である。従来、確率共鳴の検討は白色ノイズを対象に行われてきたが、非白色ノイズによる報告はない。そこで、白色ガウスノイズを様々な周波数帯域に分解し、周波数帯域制限型ノイズと呼ぶ非白色ノイズを作成した上で、確率共鳴の発現について検討した。その結果、周波数帯域制限型ノイズを付加しても、確率共鳴は発現した。ここで特筆すべき点は、高周波ノイズを付加した際に、白色ガウスノイズよりも高いCNRを示したことである。このことから、高周波ノイズは更なる信号検出能の向上に役立つのではないかと考えられ、次年度以降、周波数帯域制限型ノイズも検討事項に追加した。 以上の内容は国内で開催された学会や国際会議で発表し、その一部は優秀研究に選ばれた。さらに総説等で、これらの研究も紹介した。 以上のことから、現在のところ、当初の計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定は、申請計画書で述べたとおり、 1.前回の科研研究で作成した早期虚血製脳梗塞ファントムを用いた検討 2.本申請研究で作成した脳溝狭小化ファントムを用いた検討 この二つの検討を行う予定であり、解析に使用するCT画像は、平成26年度に取得している。この画像に対し、様々なタイプのノイズを付加し、前年度と同様、確率共鳴が発現する最も効率の良い付加ノイズ強度を検討する。その際、これまでと同様、CNRによるコントラスト分解能の検討と情報理論に基づくあいまい度の検討を予定している。さらに、これ以降の検討では、被ばく線量との関連も視野に入れるため、X線線量の測定も行う。この測定に使用する半導体検出器は、既に作成済みであり、その配置部位も、リスク臓器の一つである水晶体に決定している。 以上の研究計画は、科研申請時に立案したものであるが、平成27年度以降は、研究計画当初に予定していなかった逐次近似CT画像も解析対象とすることにした。その理由は二つある。一つ目は逐次近似処理によるCT画像の不鮮鋭化、もう一つはノイズの違和感である。現在、これらの対処法として、FBP画像とのブレンドがあるが、目下のところ、これ以外の方法は見当たらない。申請者らはこれまでの研究で、確率共鳴現象の一つである確率同期と呼ばれる非線形現象も、CT画像上で確認している。この現象をうまく発現させれば、逐次近似処理による画像信号の不鮮鋭化をなくすことができると考えている。さらに、この現象の発現も、これまでと同様、ノイズ付加を伴うため、画像ノイズ全体を白色化する効果もあり、ノイズの違和感も取り除けるのではないかと期待している。以上のことから、確率同期によるCT画像の鮮鋭度改善及び違和感除去も、新たに検討項目に加えることにした。 これらの項目で得られた結果は、随時、国内外で開催される学会等で発表し、投稿論文として世界に発信する。
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Causes of Carryover |
研究協力者との打ち合わせのために使用予定だったが、日程の都合が合わなかったため、打ち合わせが中止となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力者との打ち合わせもしくは研究のために使用予定
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] 白色非ガウスノイズを用いた確率共鳴現象2014
Author(s)
五十嵐健吾, 山元勇輝, 内藤啓介, 藤井啓輔, 川浦稚代, 森政樹, 池田充, 今井國治
Organizer
平成26年日本生体医工学会東海支部学術集会2014
Place of Presentation
名古屋
Year and Date
2014-10-18 – 2014-10-18
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