2015 Fiscal Year Research-status Report
新規Wnt5a関連細胞接着因子ALCAMを標的とした新しい乳癌治療法の開発
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26461947
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
角舎 学行 広島大学, 大学病院, 講師 (20609763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 守人 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (70446045)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Wnt5a / 乳癌 / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
分泌蛋白質Wnt5aは、Wntシグナル伝達経路の一つであるβ-カテニン非依存性経路の代表的なリガンドであり、胃癌、前立腺癌、肺癌などでは予後、悪性度に関連していることが報告されている。しかし、乳癌におけるWnt5a発現の臨床的意義は十分には解明されていない。 そこで我々は、乳癌病理検体を用いたWnt5a免疫染色を行い、①乳癌の約35%にWnt5aが過剰発現していること、②Wnt5a陽性乳癌はER陽性+HER-2陰性乳癌(luminal type)と非常に強い相関があることを明らかにしている。さらに、③Wnt5a発現乳癌細胞株を樹立し、DNAマイクロアレイを用いてWnt5a発現により誘導される新規蛋白質としてActivated leukocyte cell adhesion molecule(ALCAM)を同定し、④乳癌病理検体でもWnt5aとALCAMとが共発現していることを確認している。ALCAMは、これまでに細胞接着や浸潤を介して乳癌の悪性度、予後に関与していることが報告されており(Hein 2011)、申請者らが樹立したWnt5a発現乳癌細胞株でも、①ALCAMが過剰発現していること、②細胞接着が増強することを確認している。 そのため、我々はWnt5a→ALCAM経路が過剰発現することにより細胞接着や浸潤を促進し乳癌悪性度を増強しているというモデルを着想するに至り、本研究で今後、Wnt5a→ALCAM経路のメカニズム解析を行う予定である。さらに、Wnt5a、ALCAMを制御することによる全く新しい分子標的治療を開発し、臨床応用したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、Wnt5aによる乳癌悪性化のメカニズムを明らかにするため、乳癌病理検体を用いたWnt5a免疫染色のデータを蓄積するとともに、Wnt5aが高発現していたER陽性乳癌の細胞株であるMCF7細胞を用いて、Wnt5aの悪性化のメカニズムの解析を行っている。この細胞を用いた実験で、Wnt5aの発現により細胞遊走能が亢進していることが明らかになり、マイクロアレイのデータからWnt5a陽性乳癌細胞株ではALCAMの発現が上昇していることとあわせてWnt5aの発現によりALCAMが誘導され、細胞遊走能が亢進するのではと考えている。さらに詳細なメカニズム解析については、Wnt5a陽性乳癌細胞株ではJNKのリン酸化が亢進しており、Wnt5aの発現を低下させるとJNKのリン酸化は減少した事から、Wnt5,ALCAMははER陽性乳癌においてJNKのリン酸化を介して一つのグループを形成し、細胞接着、遊走、浸潤を亢進すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の乳癌治療開発の中心は分子標的治療であり、悪性度に関与していて、高頻度に発現している分子がよい治療標的となる。Wnt5aは①乳癌全体の約30%に発現しており、②乳癌の悪性度を高め、細胞遊走の亢進に関与するため治療標的として適している。さらに、Wnt5aのみならず、その関連因子であるALCAM、JNKも同時に抑制することにより治療効果を高める試みが独創的である。今後は、既に作成したWnt5a発現乳癌培養細胞株を用い、1)抗Wnt5a抗体、抗ALCAM抗体,JNK阻害剤による細胞増殖能、遊走能に与える影響の解析、2) 複数の治療薬の組み合わせによるWnt5a治療のin vtroでの相乗効果の検討、3)転移マウスモデルを用いたin vivoでの相乗効果の検討を行い、乳癌治療へと臨床治療応用したい。
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Causes of Carryover |
今年度は主に培養細胞を用いた実験を行ったため、試薬など少額の出費が中心であった。マウスなど動物実験を用いた実験を行う予定であったが、次年度にずれ込む予定である。そのためいくらかの差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は動物を用いた実験が増えるため、マウス、乳癌治療薬、抗体などの購入費用が増える予定である。
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Research Products
(2 results)