2014 Fiscal Year Research-status Report
新規ER制御分子BIG3を介した内分泌療法耐性機構の解明および新規治療法の開発
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26461948
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉丸 哲郎 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 助教 (80424729)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 内分泌療法耐性乳がん / エストロゲン受容体 / 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がんは、内分泌療法に対して不応な症例や治療初期には奏効するものの経過とともに耐性を獲得して再発する症例があり、臨床上大きな問題となっている。申請者らは、乳がんで高頻度に発現亢進を認めるエストロゲン受容体(ERα)制御分子BIG3が、乳がん細胞においてERα活性抑制分子Prohibitin2(PHB2)と結合し、PHB2の抑制機能を封じ込めることでERαの恒常的な活性化を導くという新たなエストロゲン(E2)依存性乳がん細胞の増殖シグナル・モデルを提唱した。また、このモデルに基づいて、PHB2のERα活性抑制機能の再活性化を利用するBIG3-PHB2相互作用阻害ペプチド(ERAPペプチド)を開発し、ER陽性乳がんに対してin vitroとin vivoで抗腫瘍効果を有することを実証して、ERAPペプチドが乳がんの新規治療薬となる可能性を示している。本年度は、臨床的に問題となっているE2と増殖因子のシグナルのクロストークによる内分泌療法耐性獲得に対して、ERAPペプチドの投与が抑制効果を有しているかどうかを検討した。 ERAPペプチドはERαとIGF-1Rβ、EGFR、HER2のような増殖因子シグナルとのクロストークによる細胞増殖、ならびにAktとMAPKのリン酸化を効率的に抑制した。さらに、抗E2製剤のタモキシフェンとの併用が細胞死を誘導することを明らかにした。以上の成果は、BIG3とPHB2の相互作用の阻害薬がluminalタイプ乳がん、特に内分泌療法耐性乳がんに対して、既存の内分泌療法とは異なる新たな治療薬になりえる可能性を示唆するものである。本研究の成果は、2報の国際学術誌および国内の学会発表で発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アロマターゼ阻害剤(AI)治療に対する耐性メカニズムのひとつである、ERαと膜型受容体(IGF-1Rβ、HER2、EGFR)のクロストークによる迅速な細胞増殖関連のリン酸化カスケードを、ERAPペプチドが制御することを明らかにし、国際誌に発信した。また、内分泌療法の耐性にBIG3-PHB2の複合体が重要なターゲットであることを実証し、国際誌に報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
ERAPペプチドがエストロゲンと増殖因子のクロストークによるシグナル活性を抑制することを明らかにしたことから、今後、異なる耐性機序を有する複数のアロマターゼ阻害薬(AI)耐性細胞株の細胞増殖およびシグナル分子のリン酸化に対する抑制効果を検証するとともに、分子標的治療薬との併用効果(感受性の亢進)を検討する。 また、AI耐性乳がん細胞株を移植した同所性マウスを作製し、IGF-1存在下でERAPペプチドならびに分子標的治療薬(mTOR阻害剤など)との併用を腹腔内投与して、in vivo抗腫瘍効果を検討する。 さらに、AI耐性細胞株にERAPペプチドを添加後に発現変動を認める遺伝子、および細胞内タンパク質のリン酸化状態を、マイクロアレイ解析とリン酸化プロテオミクス解析により解析し、耐性獲得に関与する分子病態、ならびにタンパク質の同定とパスウェイ解析を試みる。
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Causes of Carryover |
当初計画していた動物実験を遂行することができなかったため、次年度に繰り越している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した助成金を動物実験に使用する。ただし、マイクロアレイの関連試薬が高価なため、一部をマイクロアレイ解析への使用も考えている。
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Research Products
(6 results)