2015 Fiscal Year Research-status Report
食道癌術前補助化学療法抵抗性の分子機構における酸化ストレス系シグナル異常の解明
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26461971
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小杉 伸一 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (90401736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
石川 卓 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70586940)
羽入 隆晃 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (50719705)
小山 諭 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10323966)
廣瀬 雄己 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (10737365)
市川 寛 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50721875)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食道癌 / 術前化学療法 / 治療抵抗性 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
1)平成26年に引き続き,術前補助化学療法後食道切除症例(39例)の切除検体を用いて,NQO1の転写調節を行っているNrf2の免疫組織化学染色を行った.NQO1陰性例と陽性例の間でNrf2染色強度に明らかな差は認められなかった.抗Nrf2抗体の染色は39例全例に認められた.症例ごとのNrf2染色強度はほぼ同一であり,染色強度を評価する客観的な基準を設定できるほどの差は認められなかった.以上より,今回の解析対象においてはNQO1発現とNrf2発現の間に有意な相関関係は認められないと結論づけた. 2)NQO1の発現を調節する因子としては,Nrf2の他にNQO1遺伝子多型の影響が報告されている.そこで,NQO1遺伝子多型を反映する非腫瘍性扁平上皮のNQO1発現に着目して前補助化学療法抵抗性や癌再発との関連について検討した.術前補助化学療法後食道切除症例(43例)の切除検体を用いて非腫瘍性扁平上皮の免疫組織化学染色を行った.非腫瘍組織の基底細胞や血管内皮細胞が抗NQO1抗体で染色されない場合を陰性とすると,22例(51%)が陰性であった. 3)陰性例では術前補助化学療法後に原発腫瘍が消失あるいは表在癌化する例が41%に認められたが,陽性例では5%に認めるのみであった(p<0.01).全体としては,陰性例の46%と陽性例の10%で原発腫瘍の縮小が得られた(p=0.02).陰性例の3年無再発生存率は76%であり,陽性例の48%と比較して有意に良好であった(p=0.02).多変量解析でも非腫瘍性扁平上皮のNQO1発現陰性は独立した予後良好因子であった(リスク比0.30,p=0.04).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Nrf2発現とNQO1発現との間に有意な相関が認められなかったため,当初の目的であるp62-Keap1-Nrf2シグナルについての解析に着手できない状況となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
1)本年度の研究から今回の解析対象においてはp62-Keap1-Nrf2シグナルがNQO1発現に及ぼす影響は少ないと予想される.当初はこのシグナルを強制的に調節するin vitro実験系を確立する予定であったが,同実験は行わないこととする. 2)一方,非腫瘍性扁平上皮におけるNQO1発現が術前補助化学療法を施行した症例の治療効果や予後に関係していることが明らかとなった.その背景にはNQO1遺伝子多型が関係している可能性がある.この結果は研究計画段階では予想されていなかった新知見である.今後は非腫瘍性扁平上皮におけるNQO1発現と遺伝子型との関連を調べる必要がある.具体的にはパラフィン包埋検体からDNAの抽出を行い,Real-time PCRを用いてNQO1遺伝子型の解析を行う.また,前向き試験として術前補助化学療法を施行する食道癌患者の治療前生検検体の非腫瘍扁平上皮の免疫組織化学染色を行う.同時に凍結検体からDNAを抽出しNQO1遺伝子型を同定する.これらの結果と術前補助化学療法の効果や食道切除後の予後との関連を検討する.
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Causes of Carryover |
p62-Keap1-Nrf2シグナルを強制的に調節するin vitro実験系を確立する予定であったが,同実験は行わないこととしたため,食道癌細胞株の培養開始に必要な経費がかからず次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
非腫瘍性扁平上皮におけるNQO1発現が術前補助化学療法を施行した症例の治療効果や予後に関係していることが新知見として得られたため,まず非腫瘍性扁平上皮におけるNQO1発現と関連している可能性のあるNQO1遺伝子多型について切除標本や治療前生検検体を用いて調べる.
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