2015 Fiscal Year Research-status Report
脂肪由来幹細胞を応用した骨軟部腫瘍切除後組織欠損の再生医療と蛍光イメージング評価
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26462271
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 克洋 金沢大学, 大学病院, 助教 (80507054)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / 脂肪由来幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
p53機能の低下を来たすと考えられるMDM2遺伝子(以下、MDM2)の増幅が異型脂肪腫様腫瘍(以下、ALT)に存在する。臨床的、病理形態学的にALTと診断した患者6人からALT組織を採取し、MDM2遺伝子のコピー数をリアルタイムPCRで解析し、増幅を確認した。p53は幹細胞において脂肪や骨分化を抑制するため、ALT由来間葉系幹細胞(以下、MSC)は、MDM2の増幅に伴うp53機能低下により脂肪や骨分化の抑制が外れ、脂肪や骨分化能が高いと予想される。 多くの腫瘍でp53機能低下が知られており、腫瘍の幹細胞に対する分化誘導療法が有効か、ALTを代表として用いて探っている。 ALT患者6人からALT組織と正常脂肪組織を採取し、各組織からMSCを作成し、それぞれのMSCで、MDM2のmRNA定量、gDNAのコピー数多型解析をリアルタイムPCRで行った。 脂肪分化能はオイルレッドO染色後、抽出液の吸光度を測定しStudent's t検定で評価した。骨分化能はALP染色およびアリザリンレッドS染色後にマクロ写真からImage Jを用いて特定色域面積を測定し、正常脂肪由来MSCの平均値に対する比に換算しマンホイットニー検定で評価した。分化能の比較では、脂肪分化能は正常脂肪由来MSCで、骨分化能はALT由来MSCで高い傾向があった。 骨分化能が予想通りALT由来MSCで高かったことについて、MDM2特異的阻害薬Nutlin-3を用いて、その濃度を0~10μMに段階的に変えて骨分化誘導培地に加え、同様に骨分化能を比較したところ、Nutlin-3の濃度が増すにつれ、骨分化能は低下し、最終的に骨分化能の差異が消失した。このことから、骨分化能の差異がMDM2の増幅により生じていたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALT組織と正常脂肪組織からの細胞分化能の差が見られ、そのメカニズムも部分的に解明できており、順調に研究はすすんでいる。分化に有利な幹細胞のシート培養も継続して行っており、in vivoの実験での確認を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪分化能が正常脂肪由来MSCで高かったことについての、MDM2が脂肪代謝経路におけるPPARαを介する経路を抑制することや、PPARαの活性化が脂肪細胞において脂肪酸酸化と脂肪分化を刺激することから、p53の機能低下による脂肪分化能の増大を反映できない可能性について、MDM2の抑制などで証明していく。 また、p53の発現を促す薬剤や放射線によって、p53機能低下をもつ腫瘍由来MSCと正常組織由来MSCのp53発現の差異を増幅した状態で脂肪や骨への分化誘導を行い、その分化能の差異が増幅するかを確認することを計画している。さらに担癌動物実験での確認を経て、最終的には抗がん剤や放射線治療に分化誘導療法を併用することにより腫瘍の治療効果があるかを検討していく。また、脂肪由来幹細胞シートによる骨形成の促進をin vivoで引き続き行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、金沢大学に転勤となり、研究体制のたちあげ等に時間がかかり研究開始がおくれ繰越金が約42万円発生していた。本年度に計画を取り戻したが、MDM2特異的阻害薬Nutlin-3による結果が順調にすすみ、培養液や試薬の購入が少なくすんだため、残額が残った。最終年度はin vivoの実験をすすめるため、物品費として使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度にすべて使用する予定である。主に物品費として使う予定である。
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