2014 Fiscal Year Research-status Report
メカニカルストレスに対する軟骨細胞の小胞体ストレス応答の解明
Project/Area Number |
26462303
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
水田 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60174025)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 隼 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (40433007)
岡元 信和 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70600162)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 小胞体ストレス / メカニカルストレス / 軟骨細胞機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】高齢化の進む我が国では、変形性関節症(OA)の進行を抑制する原因療法の開発が急務であり、そのためにはOA病態の分子メカニズムの解明による治療標的分子の同定が不可欠である。我々は先行研究で、OA軟骨の変性に小胞体ストレスが関与することを明らかにした。本年度の目的は、OAの局所要因として最も重要なメカニカルストレスと小胞体ストレス応答について解明することである。 【方法】5週齢雄wistarラットの大腿骨頭と膝関節から関節軟骨を採取し、酵素的に軟骨細胞を単離した。初代培養細胞を5% CO2 incubator内に設置した培養細胞伸展装置STB-140で培養後、0.5Hz,10%伸展刺激(CTS)と15%圧縮刺激をそれぞれ0,4,12,24時間加えた。その後、qPCRにより小胞体ストレスをGrp78,Chop,Xbp1sの発現で、軟骨細胞機能をCol2a1,Acan,Mmp13の発現で評価した。また、アポトーシスをELISAとTUNEL染色によるDNA断片化で評価した。 【結果】4時間の10%CTSでは、刺激前と比べて小胞体ストレスとアポトーシスは同等であり、Col2a1,Acan,Mmp13がそれぞれ28%,31%,23%増加した。一方、12時間の10%CTSではXbp1sが増加し、Grp78,Chopはそれぞれ11%,49%の増加、アポトーシスは35%の増加、Col2a1,Acanはそれぞれ33%,42%の低下、Mmp13は13%の増加を認めた。24時間の10%CTSではこれらの変化が増強し、Xbp1s増加は顕著となり、Grp78,Chop増加はそれぞれ31%,88%、アポトーシス増加は52%、Col2a1,Acan低下はそれぞれ53%,50%、Mmp13増加は22%であった。以上のことから、過剰な伸展刺激では短時間の刺激で軟骨細胞機能が亢進するが、刺激が長時間継続すると小胞体ストレスは増加し、アポトーシスが亢進し軟骨細胞機能が低下することが示された。一方、15%圧縮刺激の解析は現時点では完全には終了していないが、10%伸展刺激と同様に長時間の刺激で小胞体ストレスが亢進し、アポトーシスが増加し軟骨細胞機能が低下する傾向にあった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の当初の計画では、C56BL/6Jマウスより単離した培養細胞を使用する予定であったが、多数の条件検討を行うために大量の軟骨細胞が必要であったことから、1匹あたり採取できる軟骨細胞の多いラットを使用することに変更した。また、刺激の程度について、申請書では5%の伸展刺激で遂行する予定であったが、この刺激では刺激時間に関わらず軟骨細胞機能の低下やアポトーシスの増強が認められなかったことから、RS Zhengらの報告(Chinese Journal of Tissue Engineering Research, 2012)に従い10%伸展刺激に変更した。一方、15%圧縮刺激については、実験は終了し全てのサンプリングは完了しているが、現時点では解析の一部が完了していないため、当初の計画と比べてやや遅れていると判断した。これに関しては平成27年度の計画研究と並行して行い、平成27年5月中に終了予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
【平成27年度】 1. 低酸素状態における検討:生体内の関節環境に近似させるために、低酸素条件下で機械的刺激を行う。平成26年度と同様に、wistarラットより単離した軟骨細胞をマルチガスインキュベーターMG-70M内に設置したSTB-140で培養し、低酸素(酸素濃度1%)下に10%CTSを負荷する。解析は平成26年度と同様に行う。 2. AGEsを蓄積させた軟骨細胞における検討:高齢者の生体内環境を再現するために、細胞内にAGEsを蓄積させて機械的刺激を行う。STB-140内で培養したwistarラットの軟骨細胞にAGEs前駆体Glycolaldehyde(100uM)を添加し、10%CTSを負荷する。解析は平成26年度と同様に行う。 【平成28年度】 小胞体ストレス関連分子を抑制あるいは過剰発現させた軟骨細胞での検討:メカニカルストレスによる小胞体ストレス応答の分子メカニズムを解明するために、小胞体ストレス関連分子を抑制・過剰発現させたATDC5細胞に対し、機械的刺激を行う。ATDC5細胞をITS培地により分化誘導後、Perk、Ire1、Atf6遺伝子発現の抑制と過剰発現を行う。その後、STB-140内で培養し10%CTSを負荷する。解析は平成26年度と同様に行う。
|
Research Products
(1 results)