2015 Fiscal Year Research-status Report
著明な骨量減少をきたすNedd4遺伝子欠損マウスの機能解析
Project/Area Number |
26462304
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
関本 朝久 宮崎大学, 医学部, 講師 (60305000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
帖佐 悦男 宮崎大学, 医学部, 教授 (00236837)
黒木 修司 宮崎大学, 医学部, 医員 (40418843)
荒木 正健 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (80271609)
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (90211705)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子トラップ法 / ロコモティブシンドローム / 骨代謝異常 / Nedd4遺伝子 / モデルマウス / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームの病因・病態解明のために、『可変型遺伝子トラップ法』により樹立した変異マウス系統を用いて、骨軟骨代謝に関与する新規遺伝子探索の効率的なスクリーニングを実施している。我々はそれらトラップクローンデータをデータベース『EGTC』(Database for the Exchangeable Gene Trap Clones, http://egtc.jp) に公開し、骨軟骨代謝に異常をきたす疾患モデルマウスライブラリーを構築中である。現在このEGTCデータベースに登録したクローンから、特に骨軟骨にトラップした遺伝子の発現のみられるクローンを選別し、その遺伝子欠損マウスを作製して骨軟骨表現型および遺伝子機能を解析している。 そのライブラリーマウスの中で、Nedd4 (neural precursor cell expressed, developmentally down-regulated gene 4) 遺伝子欠損マウスは、骨軟骨スクリーニングにおいて著明な骨表現型異常を呈していた。しかしながら、これまでにNedd4遺伝子においてin vivoで骨代謝について報告例はない。 今回我々が可変型遺伝子トラップ法で作製したNedd4トラップマウスは体が小さく、マイクロCT検査では骨量の減少を認め、骨代謝にも関与している可能性が非常に高い。本研究ではNedd4遺伝子欠損トラップマウスを用いて、その骨代謝における機能解析を目的としている。 昨年度の結果から、Nedd4は骨代謝において重要な機能を担っている可能性が高いと報告した。今年度は昨年度に引き続きNedd4欠損トラップマウス解析を施行し、2次スクリーニング(マイクロCT、骨形態計測、骨力学試験、病理組織解析)を個体数や計測時期を増やして解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在我々は『可変型遺伝子トラップ法』によって単離されたトラップクローンを用いて、骨軟骨代謝に関与する新規遺伝子群の効率的なスクリーニングによる骨軟骨疾患モデルマウスライブラリー構築に取り組んでいる。 前述のEGTCデータベースを用いてそのライブラリーマウスの骨/骨髄組織に発現する遺伝子を検索したところ、Nedd4遺伝子でESTプロファイルが高スコア(Nedd4:835:bone 557, bone marrow 278)を示した為、Nedd4遺伝子トラップクローンからホモ・ヘテロ接合体マウスを作製し、骨軟骨表現型をスクリーニングしている。 昨年度は、Nedd4欠損トラップマウスにおけるvector insertion point解析、ゲノム構造解析、導入遺伝子の組織発現(X-gal染色)解析、マウス個体の遺伝子型解析、出生率、体重、生存日数調査、大腿骨のマイクロCT解析の結果から、Nedd4は骨代謝において重要な機能を担っている可能性が高いと報告した。今年度は昨年度に引き続きNedd4欠損トラップマウス解析を施行し、2次スクリーニング(マイクロCT、骨形態計測、骨力学試験、病理組織解析)を個体数や計測時期を増やして解析を行った。 Nedd4欠損トラップマウス表現型解析における結果は、ホモマウスはμCTにて著明な骨量減少を認め、骨形態計測では骨塩量、皮質骨厚や海綿骨厚、骨梁数が有意に減少し、骨力学試験でも有意に骨強度(最大点試験力)の低下を認めた。リアルタイムPCRではOsxやCol1a1、ALP、OCNの発現が有意に低値であった。大腿骨HE染色では1次海綿骨の減少を認め、骨芽細胞は細胞質が少なく扁平な細胞形態を示し、ALP染色を行うとALP活性が低かった。今回のNedd4欠損マウスの解析により、Nedd4は骨芽細胞の機能発現に重要な機能を担っている可能性が高いと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
Nedd4はE3ユビキチンリガーゼのひとつであるが、これまで複数の研究機関でNedd4ノックアウトマウスが作製されその機能解析が報告されている。IGF-1の低下とそれに伴うIGF-1 signalingの低下、胚の成長障害(Cao, 2008)、T細胞の活性化 (Yang, 2008)、神経筋接合部の異常(Liu, 2009)、神経突起の形成(Kawabe, 2010)などがノックアウトマウスや神経細胞のコンディショナルノックアウトマウス胚や胚組織から採取した培養細胞を用いてなされてきた。Nedd4はユビキチンをミスフォールディングタンパク質に付加する。ユビキチン化された異常または不要タンパク質はプロテアソームで分解されるため、Nedd4 の機能として細胞内のタンパク質の品質管理という重要な役割があると考えられている。しかしながらこれまで骨組織、骨代謝に言及した報告はない。 また、いずれの報告でもNedd4ノックアウトマウスは出生前に死亡すると報告されている。死因についても検討されているが、明らかにはなっていない。我々のNedd4トラップマウスに特徴的なことは、短命ではあるが生後一定期間生存することである。このためin vivoでの実験が可能であるというメリットがある。したがって、今後もNedd4トラップマウスを用いて、その骨代謝における機能を解析して行く計画である。既にNedd4トラップマウスは骨軟骨1次スクリーニング(EST profile、X-gal染色)、2次スクリーニング(マイクロCT、骨形態計測、骨力学試験、病理組織解析)で明らかな骨表現型異常を呈していた為、Nedd4は骨代謝において重要な機能を担っている可能性が高いと考えられる。今後は上記と共に更にNedd4トラップマウスのin vitroにおける骨芽細胞培養解析、マイクロアレイ解析等を進めて行く計画である。
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Causes of Carryover |
今年度は研究内容は予定通り進捗したが、予定額より少ない金額で実施できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、計画通り新規にin vitroで骨芽細胞培養実験や、マイクロアレイ解析など、新たな実験を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)