2016 Fiscal Year Research-status Report
男性不妊における酸化ストレスの意義と新しい治療法の探求
Project/Area Number |
26462459
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
千葉 公嗣 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40533766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤澤 正人 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30243314)
松下 経 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (20595699)
江夏 徳寿 神戸大学, 医学研究科, 助教 (30622550)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウロコルチン / 精索捻転 / 精巣虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、酸化ストレスモデルとして精索捻転ラットを使用した。当初は腹壁に片側精巣を固定する停留精巣ラットをモデルとしたが、停留精巣によるストレスがどの程度の期間で障害を示すのかが明らかにすることができなかった。そのため、より短期間で確実に障害を示すと予測される精索捻転ラットを動物モデルとした。7週齢ラットの左精索を時計回りに720°捻転させて虚血状態とし、1時間後に捻転を解除して血液を再還流させるという精巣虚血-再還流モデルを精索捻転ラットとして作成した。 評価項目として、虚血性心疾患治療後の心筋虚血-再還流障害に対して抗アポトーシス作用を示すと報告されているウロコルチンに着目した。ウロコルチンは酸化ストレスとの関連も示唆されているタンパクである。精索捻転ラットの捻転を解除して0,1,3,6,24時間後に精巣を摘除し、得られた組織を用いて経時的なウロコルチン発現量と生殖細胞アポトーシスとの関連について解析した。さらに、捻転解除の15分前にウロコルチンの拮抗物質であるアストレシンを精巣内投与し、コントロール群と比較した。 その結果、ウロコルチンは生殖細胞に発現し、6時間後までは経時的な増加を認めるが24時間後には減少することが示された。さらに、TUNEL染色の結果とあわせることでウロコルチン発現量と生殖細胞アポトーシスとの関連が示唆された。アストレシン投与群ではコントロール群と比較してTUNEL陽性生殖細胞が増加しており、ウロコルチンが精巣虚血-再還流障害に対して抗アポトーシス作用を持つことが直接示された。その分子メカニズムやシグナル伝達経路について解析した結果、ウロコルチンは抗アポトーシス蛋白の発現調節やMAPKを介することでラット精巣虚血-再還流障害による生殖細胞のアポトーシスを抑制することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精索捻転によるストレスを与えたラットを使用し、生殖細胞アポトーシスとの関連について検討した。ウロコルチンが抗アポトーシス蛋白の発現調節やMAPKを介することでラット精巣虚血-再還流障害による生殖細胞のアポトーシスを抑制することを解明することができた。 平成27年度までの研究により、ビタミンC、Eがラットとヒトの精巣、生殖細胞へ与える影響について検討したが、ラット、ヒトとも有意な改善は認められなかった。しかし、28年度にはビタミン剤以外の抗酸化物質の効果については検討できなかった。精液所見や生殖細胞所見を改善し、抗酸化物質についての検討、解析が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
熱ストレスモデル、精索捻転モデルにより有意な精巣内酸化ストレス、アポトーシスの誘発を確立できた。今後はこれらのモデルを用いて、治療への応用を視野に入れ、ビタミン剤以外の抗酸化物質投与に伴う精巣内の変化について研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度は精索捻転ラットをモデルとして用いたため、動物や手術に必要な薬剤、器具の購入費用が必要だった。アポトーシスやタンパク発現評価のために、各種試薬、抗体の購入費用も必要だった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度も同様の動物実験を進めていく予定である。そのため、やはり動物や薬剤、器具等の購入費用が必要となる見込みである。
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