2014 Fiscal Year Research-status Report
子宮体癌・卵巣癌においてアポトーシスを誘導する新規分子標的治療法の探索
Project/Area Number |
26462515
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
織田 克利 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30359608)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 子宮体癌 / アポトーシス / オートファジー / クロロキン / シスプラチン耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】近年、細胞内のタンパク質を分解するための機序の一つであるオートファジー(自食作用)と癌の関係性が注目されているが、子宮体癌において、オートファジーの役割については、十分な知見が得られていない。そこで、オートファジー阻害剤の子宮体癌における抗腫瘍効果、アポトーシス誘導作用を解明することを研究の目的とした。 【方法】子宮体部細胞株6種類を用いて、オートファジー阻害剤(抗マラリア薬として実地臨床使用歴あり)クロロキンを添加し、MTTアッセイ法、Flow cytometry法にて細胞増殖抑制能を評価した。また、Annexin V法にてアポトーシス誘導能を検討した。さらに、Ishikawa株を用いてシスプラチン耐性株(CP-r)を樹立し、クロロキンの効果を親株と比較した。 【成績】子宮体癌細胞株6種類にクロロキンを添加した。クロロキン添加により、LC3蛋白の蓄積やオートファゴソ―ムの形成が認められており、オートファジーが実際に阻害されていること確認した。MTTアッセイを施行したところ、全6株において、クロロキンは濃度依存性に子宮体癌細胞の増殖抑制効果を示した。Flow cytometryによる細胞周期の解析では、いずれの細胞株でもSub-G1の比率が濃度依存性に上昇しており、Annexin V法にて、アポトーシスを誘導することが示された。さらに、MTTアッセイにてシスプラチン耐性株CP-rでは、クロロキンの感受性が高まり、シスプラチンとクロロキンの併用により、シスプラチンの感受性が高まることが示された。 【結論】クロロキンはオートファジー阻害剤として、子宮体癌の増殖抑制、アポトーシス誘導作用を有しており、有望な新規分子標的治療法として期待される。さらに、オートファジーはシスプラチン耐性とも関連しており、シスプラチン耐性を示す子宮体癌細胞において、薬剤耐性を克服する手段としても有効である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
順調に研究を遂行できており、研究の成果を英語論文としてすでに投稿を行った。査読において改訂を求められたが、追加実験を行ったうえで再投稿まですでに済ませており、初年度としては、当初の計画以上に研究成果が得られているといえる。また、子宮体癌における放射線照射の感受性規定因子に関する研究でも成果が得られ、すでに論文投稿を行った。卵巣がんを用いた他のプロジェクトも現在進行中である。H26年度のAmerican Association for Cancer Research (AACR) Annual Meetingをはじめ、国内外の学会発表の場でも研究成果を報告している。以上の通り、本研究プロジェクトは非常に順調であり、当初の計画以上の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、子宮体癌においてアポトーシスを誘導する新たな分子標的治療法としてクロロキンが有望であることを明らかとした。H27年度以降においても、これまでの成果をもとに子宮体癌・卵巣癌におけるアポトーシスを誘導する新規分子標的治療法の探索研究を遂行していく予定である。 今後については、以下の2つのプロジェクトを中心に研究をさらに推進していく予定である。 一つは、子宮体癌における放射線照射の感受性を予測する因子の解明、放射線感受性を増強し、アポトーシス誘導効果を示す分子標的薬の探索である。子宮体癌における治療選択肢の一つである放射線治療をより効果的に活用することのできる、新たな治療法の提唱を目的とする。 もう一つは卵巣癌におけるアポトーシス誘導能を有する分子標的治療法の探索である。卵巣粘液性腺癌や明細胞腺癌といった、抗癌剤感受性の低い組織型を中心に研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は昨年度までに購入した物品・消耗品を主に使用しながら効率的に実験を進めたために、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度をまたぐプロジェクトの総合的推進に向けて、本資金を次年度に有効活用する予定である。
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Research Products
(31 results)
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[Journal Article] Positive peritoneal cytology at interval surgery is a poor prognostic factor in patients with stage T3c advanced ovarian carcinoma: A retrospective study.2015
Author(s)
Nagasaka K, Kawana K, Tomio K, Tsuruga T, Mori-Uchino M, Miura S, Tanikawa M, Miyamoto Y, Ikeda Y, Sone K, Adachi K, Matsumoto Y, Arimoto T, Oda K, Osuga Y, Fujii T
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Journal Title
J Obstet Gynaecol Res
Volume: 41
Pages: 755-762
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] CCAR2 negatively regulates nuclear receptor LXRalpha by competing with SIRT1 deacetylase.2015
Author(s)
Sakurabashi A, Wada-Hiraike O, Hirano M, Fu H, Isono W, Fukuda T, Morita Y, Tanikawa M, Miyamoto Y, Oda K, Kawana K, Osuga Y, Fujii T
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Journal Title
J Steroid Biochem Mol Biol
Volume: 149C
Pages: 80-88
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Characterization of novel transcripts of human papillomavirus type 16 using cap analysis gene expression technology.2015
Author(s)
Taguchi A, Nagasaka K, Kawana K, Hashimoto K, Kusumoto-Matsuo R, Plessy C, Thomas M, Nakamura H, Bonetti A, Oda K, Kukimoto I, Carninci P, Banks L, Osuga Y, Fujii T
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Journal Title
J Virol
Volume: 89
Pages: 2448-2452
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] SIRT3 positively regulates the expression of folliculogenesis- and luteinization-related genes and progesterone secretion by manipulating oxidative stress in human luteinized granulosa cells.2014
Author(s)
Fu H, Wada Hiraike O, Hirano M, Kawamura Y, Sakurabashi A, Shirane A, Morita Y, Isono W, Oishi H, Koga K, Oda K, Kawana K, Yano T, Kurihara H, Osuga Y, Fujii T
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 155
Pages: 3079-3087
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Oral vaccination against HPV E7 for treatment of cervical intraepithelial neoplasia grade 3 (CIN3) elicits E7-specific mucosal immunity in the cervix of CIN3 patients.2014
Author(s)
Kawana K, Adachi K, Kojima S, Taguchi A, Tomio K, Yamashita A, Nishida H, Nagasaka K, Arimoto T, Yokoyama T, Wada-Hiraike O, Oda K, Sewaki T, Osuga Y, Fujii T
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Journal Title
Vaccine
Volume: 32
Pages: 6233-6239
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 抗マラリア薬クロロキンはオートファジーを阻害し子宮体癌細胞の増殖を抑制しシスプラチン抵抗性を克服する2015
Author(s)
福田友彦, 織田克利, 平池修, 曾根献文, 稲葉可奈子, 池田悠至, 樫山智子, 宮坂亜希, 牧井千波, 谷川道洋, 上原ゆり子, 松本陽子, 有本貴英, 矢野哲, 川名敬, 大須賀穣, 藤井知行
Organizer
第15回関東ホルモンと癌研究会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-01-31 – 2015-01-31
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[Presentation] 子宮平滑筋肉腫15例の検討2014
Author(s)
鶴賀 哲史, 織田 克利, 大木 慎也, 江口 聡子, 冨尾 賢介, 足立 克之, 長阪 一憲, 松本 陽子, 有本 貴英, 川名 敬, 大須賀 穣, 藤井 知行
Organizer
第52回日本癌治療学会学術集会
Place of Presentation
横浜
Year and Date
2014-08-28 – 2014-08-30
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[Presentation] 子宮体癌においてPI3K/mTOR同時阻害剤と低用量のMEK阻害剤との併用は新たな治療戦略となりうる2014
Author(s)
稲葉 可奈子, 織田 克利, 宮坂 亞希, 樫山 智子, 福田 友彦, 牧井 千波, 池田 悠至, 蔵本 博行, 平池 修, 川名 敬, 大須賀 穣, 藤井 知行
Organizer
第66回日本産科婦人科学会学術講演会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-04-18 – 2014-04-20
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[Presentation] PI3K/mTOR経路阻害剤NVP-BEZ235はp53変異の有無によらず子宮体癌の放射線感受性を増強する2014
Author(s)
宮坂 亞希, 織田 克利, 池田 悠至, 樫山 智子, 神尊 貴裕, 稲葉 可奈子, 福田 友彦, 牧井 千波, 平池 修, 川名 敬, 大須賀 穣, 藤井 知行
Organizer
第66回日本産科婦人科学会学術講演会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-04-18 – 2014-04-20
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[Presentation] 卵巣明細胞腺癌における統合的ゲノム・エピゲノム解析2014
Author(s)
神尊 貴裕, 織田 克利, 上原 ゆり子, 浅田 佳代, 池田 悠至, 宮坂 亞希, 中川 俊介, 恩田 貴志, 平池 修, 川名 敬, 大須賀 穣, 藤井 知行
Organizer
第66回日本産科婦人科学会学術講演会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-04-18 – 2014-04-20
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[Presentation] 血中遊離DNAを用いた次世代シーケンサーによる遺伝子変異検出法の検討2014
Author(s)
浅田 佳代, 織田 克利, 神尊 貴裕, 池田 悠至, 宮坂 亞希, 稲葉 可奈子, 福田 友彦, 平池 修, 矢野 哲, 川名 敬, 大須賀 穣, 藤井 知行
Organizer
第66回日本産科婦人科学会学術講演会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-04-18 – 2014-04-20
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[Presentation] プラチナ抵抗性またはプラチナアレルギーを呈した再発卵巣癌におけるネダプラチンの有効性の検討2014
Author(s)
金 愛理, 織田 克利, 有本 貴英, 松本 陽子, 長阪 一憲, 足立 克之, 鶴賀 哲史, 冨尾 賢介, 江口 聡子, 川名 敬, 大須賀 穣, 藤井 知行
Organizer
第66回日本産科婦人科学会学術講演会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-04-18 – 2014-04-20
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