2014 Fiscal Year Research-status Report
蝸牛において予想されるTRPM4チャンネルの特異的機能の解明
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26462568
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
村田 潤子 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (80332740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久恒 智博 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10321803)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | TRPチャンネル / 内有毛細胞 / 血管条 / 蝸牛 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度難聴児は新生児1,000人に1人の割合で生まれそのうち50%は遺伝子の関与が推測され、一方加齢に伴う難聴にも大きな個人差があり、遺伝的背景が関与していると考えられている。 哺乳類聴覚器の蝸牛では、高K+低Na+濃度の特異的な組成をもつ内リンパが、endocohlear potential (EP)と呼ばれる80 mVの高電位を有し、聴覚受容において重要な役割を有する。内リンパとEPは蝸牛側壁の血管条により形成され、血管条辺縁細胞頂側の電位依存性K+チャンネルKCNE1/KCNQ1がK+の内リンパ腔への最終的な移動で主な役割を果たしている。一方で1990年代はじめに同部位における非選択型陽イオンチャンネルの存在がパッチクランプ法によって確認された。 この非選択型陽イオンチャンネルの特性がTRPチャンネルのひとつのTRPM4と極似していたため、我々はTRPM4に対してのカスタム抗体による免疫染色を行い、TRPM4の血管条辺縁細胞頂側と内有毛細胞体部での特異的発現を明らかにした。TRPM4の発現量についてもmRNAレベルで検討し、聴覚開始時期の生後1週齢から2週齢の間での急激な発現量上昇を確認した。以上の結果より我々はTRPM4が内リンパ液の高K+組成の維持と内有毛細胞の再分極において重要な役割を有すると考察した。 H26年度は上記の結果を研究代表者が責任著者として英文論文にまとめ、Journal of Neuroscience Researchに採択された。同時に論文中の写真は表紙に採用された (Spatio-temporal expression of TRPM4 in the mouse cochlea Mayumi Sakuraba, Junko Murata, et al., J Neurosci Res. 2014 Oct; 92(10): 1409-18.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哺乳類聴覚器の蝸牛では、高K+低Na+濃度の特異的な組成をもつ内リンパが、EPと呼ばれる80 mVの高電位を有し、聴覚受容において重要な役割を果たしている。内リンパとEPは蝸牛側壁の血管条により形成され、血管条辺縁細胞頂側の電位依存性K+チャンネルKCNE1/KCNQ1がK+の内リンパ腔への最終的な移動において主要な役割を果たしていることが既に明らかにされているが、一方で1990年代はじめに同部位における非選択型陽イオンチャンネルの存在がパッチクランプ法によって確認された。 このチャンネルの特性が実はTRPM4と極似していたため、我々はTRPM4に対してのカスタム抗体による免疫染色を行い、TRPM4の血管条辺縁細胞頂側と内有毛細胞体部下方での特異的発現を明らかにした。TRPM4の発現量についてもmRNAレベルでも検討し、聴覚開始時期にあたる生後1週齢から2週齢の間での急激な発現量上昇を確認した。我々は以上の結果を英文論文として報告し、TRPM4が内リンパ液の高K+組成の維持と内有毛細胞の再分極において重要な役割を有すると考えた (Sakuraba M, Murata J, et al., J Neurosci Res. 2014)。 さらに上記の仮説を検討するために、まずTRPM4 KOマウスの聴覚を解析し、KOマウスとコントロールマウスの間で有意差があるかどうかを明らかにすることを計画した。我々はハンブルグ大学薬理学研究所のMarc Freichel 博士とMTAを取り交わし、TRPM4 KOマウスの供与を受けて順天堂大学に導入し、飼育・繁殖を開始した。現在は聴性脳幹反応 (ABR: auditory brain response)を利用して、生後4週齢から週齢をおってのKOマウスとコントロールマウスの聴覚評価を開始したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
蝸牛では、高K+低Na+濃度の特異的な組成とEPと呼ばれる高電位を保持する内リンパが、重要な生理学的役割を有している。内リンパ液とEPは蝸牛側壁の血管条で形成され、血管条辺縁細胞には電位依存性K+チャンネルKCNE1/KCNQ1の他に非選択型陽イオンチャンネルの存在がパッチクランプ法によって確認されている。この非選択型陽イオンチャンネルの特性がTRPM4と極似していたため、我々は免疫染色により、TRPM4の血管条辺縁細胞頂側と内有毛細胞体部での特異的発現を明らかにし、mRNAレベルでの発現量が聴覚開始時期に急激に上昇していることも確認した。(Sakuraba M, Murata J, et al., J Neurosci Res. 2014)。 以上の結果から、我々はTRPM4が内リンパの高K+組成の維持と内有毛細胞の再分極において重要な役割を有すると考え、この仮説を検討するために、TRPM4 KOマウス(ハンブルグ大学Marc Freichel 博士)を導入して聴性脳幹反応 (ABR: auditory brain response)を利用して聴覚を解析し、KOマウスとコントロールマウスの間で有意差があるかどうかを明らかにすることを計画した。特に血管条辺縁細胞においては主なK+の移送は電位依存性K+チャンネルKCNE1/KCNQ1が担当していることが既に報告されているため、TRPM4はその役割を補助/修飾している可能性が考えられる。即ち生理的レベルでは明らかでなくとも、加齢や強大音響等の負荷を伴う病理的レベルでTRPM4が活性化され機能する可能性がある。従ってABRによる聴覚評価では生後4週齢から1年半頃までの長期にわたって経時的に測定し、さらに強大音による音響負荷時のKOマウスとコントロールマウスの間の閾値上昇程度の差異などについて今後検討していく予定である。
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