2014 Fiscal Year Research-status Report
転写調節因子Irx3の初期軟骨細胞分化および軟骨形成過程における役割について
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26462805
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
玉村 禎宏 武庫川女子大学, スポーツ健康科学部, 博士研究員 (70431963)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 転写調節因子 / 軟骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、軟骨分化における発現および機能が未知である転写調節因子Irx3の初期軟骨細胞分化および軟骨形成における役割の解明を目的とし、本年度は主に前者についての研究を行った。Irx3のマウス軟骨発生における発現を免疫染色によって調べた所、前肥大軟骨および肥大軟骨細胞に強い発現がみられた。単離した初代マウス肢芽細胞の軟骨分化過程におけるIrx3発現をreal-time PCRにより調べた所、軟骨分化とともに経時的に発現が増大し、この所見は免疫染色像と合致するものであった。さらに、マウス初代肢芽細胞や多分化能をもつマウス線維芽細胞株C3H10T1/2細胞におけるIrx3発現の機能獲得および機能阻害実験によって、Irx3はこれらマウス間葉系細胞の軟骨分化を促進することが明らかとなった。また、同実験における軟骨細胞分化マーカー遺伝子の発現を調べた所、Irx3は、軟骨基質の大部分を占めるII型コラーゲンやアグリカン遺伝子ではなく、EpiphycanやLumicanなどのsmall-leucine rich proteoglycan遺伝子の発現を調節することが解った。最後に、C3H10T1/2細胞においてshRNAによるSox9の発現低下とIrx3の過剰発現を同時に行い、軟骨形成に必須の転写調節因子Sox9の機能低下による軟骨分化阻害をレスキューできるか調べた。その結果、Irx3の過剰発現によりアルシアンブルー染色低下を約30%回復できた。また、遺伝子発現に関しては、Irx3の過剰発現によって、II型コラーゲンやアグリカン遺伝子の発現低下は回復できなかったが、EpiphycanとLumican遺伝子発現は完全に回復できた。以上の結果から、Irx3は、Sox9の機能非依存性にEpiphycanやLumicanなどのsmall-leucine rich proteoglycan遺伝子の発現を促進することにより、軟骨細胞分化を促進することが明らかとなった。また、変形性関節症ではSox9遺伝子発現の減弱が報告されており、Irx3は本疾患の治療のための新たな標的分子になる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であるIrx3の発現の探索と初期軟骨細胞分化における役割の解明が終わったことが主な理由である。また、このテーマに関して第28回日本軟骨代謝学会において発表し、現在論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度にIrx3の後期軟骨細胞分化における役割の解明のために行っていた実験から、非常に興味深い結果が得られ、一つの実験テーマとしてまとめるストーリーを考え付いたので、平成28年度はこのテーマを学会発表し、論文投稿まで終えることを目標とする。
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Causes of Carryover |
購入予定であった物品が予定より少なく済んだため、次年度へ繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用予定の消耗品と合わせて使用する。
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Research Products
(2 results)