2015 Fiscal Year Research-status Report
ポータブルEPR放射線被ばく線量測定装置の生体への応用
Project/Area Number |
26462841
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
三宅 実 香川大学, 医学部, 教授 (20239370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 義郎 香川大学, 医学部, 教授 (10181687) [Withdrawn]
岩崎 昭憲 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (10437676)
山口 一郎 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (50311395)
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60250958)
欅田 尚樹 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (90178020)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポータブルEPR / 歯エナメル質 / 福島 / 被ばく線量測定 / 生体計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)口腔内共振器の改良:日本人の前歯により適応したループ径が小さい共振器(8.0mm から6.0mm)に改良し、日本人上顎中切歯の唇面に可及的に密着する形状(従来の径ループに湾曲を持たせた)にし、相対的検出感度の向上を図った。昨年度改良した共振器より検出感度が向上した。特異度を向上させるために効果的な改良であった。 2)エナメル質厚みが信号に与える影響の評価:マイクロCTを用い切端から歯頸部に至るエナメル質の厚みの分布とEPR信号強度の関連を調べ、最終的に0.3mmの厚みの違いが検出信号に約1.3倍程度の影響を与えることを確認した。今後中切歯唇面での測定部位の条件を画一化する必要性が確認された。 3)ボランティアからのEPR信号計測:平成27年5月29日から31日福島市松川工業団地内飯舘村避難所集会室、平成27年8月18日19日福島市新浜町の某保育所にて、ポータブルEPR生体計測装置を設置、ボランティアから計測を実施した。同年3月の福島県伊達市霊山町での計測を含め、合計34名の被験者(男性13名, 女性21名, 平均年齢50.2 歳)からデータ採取を行った。EPR/PDT信号強度比0.087±0.051であり、高線量被曝を示唆する信号は認めなかった。また計測を通じて、避難住民の方を含め、被爆に関連した精神的不安に対し、安心感を与えることができた。 4)研究室外部での計測の問題点の確認:今回の計測で、周辺での家電製品の使用や測定場所での電磁波強度が計測信号のS/Nと関係することを確認した。外部環境では、S/Nが低下し、最終的な検出感度が低下する。国立保健医療科学院の電波暗室(高周波・電磁波遮蔽暗室)では逆にS/Nが2倍程度向上することを確認した。従って、このS/Nに影響を与える因子を除外することが今後、現場での運用にあたり改善すべき点であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福島での計測は予定通り順調に進んでいる。装置が米国で開発されたもので、計測コンソールの、マイクロ波ブリッジ、モジュレーションアンプ、電磁石動作電源など全て米国での電源規格(115V, 60Hz)に昇圧させる必要があるが、昇圧トランスの不調があり、さらに電源からのノイズを減少させるために、安定化電源を導入し、装置全体の調整が必要でやや時間を要した。現地でのボランティアの確保等、地元コーディネータや福島の被ばく関連コミュニティーの協力が得られ、順調に計測が実施できた。8月の気温が高い状況での計測で、室温が30度を超える状況では、冷却能力が不足し、装置が停止することが発覚した。この原因究明に時間を要した。現時点では、エアコン等で、室温を25度程度に強制的に保つことが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ボランティアからの計測をさらに追加で実施し、データの取得を行う。 2)研究室外でポータブル装置を使って計測した際の問題点が、明らかになったので、その問題点を解決するための、装置の改良・開発を進める。①環境のノイズの削減のため安定化ノイズ遮断電源の使用②高周波ノイズを減少させるために遮蔽材の使用、電波暗室での測定③変調アンプ、掃引アンプの冷却の強化を実施 3)紫外線の影響の評価:特にUV-C領域の紫外線が歯のエナメル質にEPR信号を高効率で発生させることを実験で確認している。測定箇所が上顎中切歯であり、歯列形態によって太陽光に曝露される可能性もあり得るためさらに、UV-A,Bの影響も含めさらに詳細に検討を行う。 4)研究の最終年度に当たるため、研究成果をまとめ、国際学会(IRPA14:14th International Radiation Protection Association, Cape Town, South Africa )で発表を行う予定である。また論文発表も行う。
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Causes of Carryover |
特に物品費が前年度の購入分で測定がある程度賄えたため本年度の物品購入費が低くできた。また装置のメインテナンス費用等を、具体的な改良を次年度に繰り越したため支出が低くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
IRPA14:14回国際放射線防御学会参加を予定している。計測にかかる実費、福島および埼玉県和光市への旅費および臨床研究保険の追加契約費用も算定する必要がある。福島地域でのボランティアからの追加計測を計画しており、装置運搬にかかる費用等の計上を予定している。発表原稿や論文の英文校正費用や投稿料も必要になる。
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