2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26462858
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
續橋 治 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (80333110)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 口臭 / 口臭測定 / 検査 / VSC / 口臭簡易検出キット |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔に対する美意識が高まってきている近年、口臭を社会的醜悪と考えて、フレッシュできれいな息を求める人々が増えている。そこで本研究は、口臭原因物質の産生メカニズムに着目し、細菌学的手法を利用した簡易でコストパフォーマンスに優れ、さらには多数の検体を同時に検査することが可能な口臭検出キットの開発を行うことを目的としている。 平成27 年度は、前年度に開発した口臭簡易検出キットを用い、臨床の場で応用可能であるかの確認を行った。ヒトから採取した試料を対象としているために、前年度に本学部倫理委員会に本研究の承認を既に得ており、本研究の被験者は本研究の目的と概要を説明し、同意者とした。前年度に購入した口臭測定器センサーガスクロマトグラフODSA-P2 を用いて被験者の口腔気体中のVSC を測定し、口臭を有する群と無口臭群に分類した。本検出キットの結果と比較検討することにより本検出キットの有用性の確認および基準値の設定を試みた。 被験者40名から得られた試料を用いて、本検出キットでの応用を試みたところ、口臭群と無口臭群でグループ分けした被験者間では、有意に酢酸鉛紙が完全に黒変するまでに要する時間が異なり、口臭群では顕著に短時間で黒変した。次に本検出キットの基準値を設定するために、両群間において最も短時間の培養で有意な差が認められる条件を検討した。その結果、口臭群は培養3時間後に、酢酸鉛紙の下部から2cmまで完全に黒変するのに対し、無口臭群では5時間以上の時間を要した。そのため、本検出キットの基準値は、試料を挿入してから培養後3時間で下部から黒変する距離が2cm未満とし、2cm以上黒変した場合は口臭を有する者と判定するように決定した。 今年度以降、被験者数を増やすことにより本検出キットのさらなる有用性が示され、臨床の場で応用可能であるならば、口臭診断における質の向上と補助に大いに貢献できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の研究の進行状況は、概ね予定通り進行している。 理由の一つとして、平成26年度の設備備品費で購入した簡易ガスクロ方式を採用した口臭測定器センサーガスクロマトグラフODSA-P2の測定制度が高く、また簡便であることから円滑に計画が実行可能であったことが挙げられる。また、昨年度に開発した口臭簡易検出キットの試作品で得られた結果が、臨床試料から得られた口臭測定器の測定値との相同性が得られたために、当初の計画通りに円滑に進行することが可能であった。そして、本簡易キットは、ヒト口臭の主たる原因ガスであるVSC(硫化水素、メチルメルカプタンおよびジメチルサルファイド)のうち、硫化水素を検出する原理を採用している。これまでに行った実験において、口臭群の全被験者が口臭測定器による硫化水素濃度の測定値が無口臭群と比較して有意に高かった。この結果は、申請時に仮定していた通りであり、本研究課題の進捗状況が順調に進展している最大の要因であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、さらに試料数を増やすことによって蓄積された臨床データを分析し、口臭診断における本検出キットの有用性の確認および歯周病の診断にも有用であるか否かを慎重に検討する。また、平成27年度で定めた本検出キットの培養時間と基準値についても、今後採取する試料を用いて得られた結果を踏まえて、再度検討を行う予定である。さらに、試験管的にVSC 産生菌群を培養し、それぞれの菌数を同数になるように調整して、本キットに接種し硫化水素量を判定するとともに、各菌種が培養時に発生するガスを採取し、口臭測定器センサーガスクロマトグラフODSA-P2 にてVSC(硫化水素、メチルメルカプタンおよびジメチルサルファイド) の濃度を調査する。これにより前年度と今年度の臨床応用で得られたVSC 産生菌群の各群のパターンと比較検討することにより、口臭の主たる原因菌を特定したいと考えている。これら蓄積したデータをもとに学会および論文発表を行っていくことも計画している。
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