2014 Fiscal Year Research-status Report
発達障がいの子どもの睡眠改善プログラムを基盤とした生活臨床に関する研究
Project/Area Number |
26463436
|
Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
下村 明子 愛知医科大学, 看護学部, 教授 (30310733)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 道子 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (30193288)
田中 秀樹 広島国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30294482)
張 暁春 梅花女子大学, 看護学部, 講師 (60382272)
西田 千夏 梅花女子大学, 看護学部, 助教 (60637966)
伊丹 昌一 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90463281)
三宅 靖子 天理医療大学, その他部局等, 准教授 (90557422)
神谷 美帆 愛知医科大学, 看護学部, 助教 (10737589)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 発達障がい / 昼夜逆転 / 不登校 / 育児ストレス / 睡眠教育 / 睡眠改善改善プログラム / 生活臨床 / サポートシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマは「発達障がいの子どもの睡眠改善プログラムを基盤とした生活臨床に関する研究」で,H26年度は半構成的面接調査と内容分析により,発達障がいの子どもの睡眠障害の実態を明らかにし,「発達障がいの子どもの生活リズムを含めた睡眠改善プログラム構築」に向け,質問紙調査票作成のヒントになるように研究を進めた。当初半構成的面接は発達がい児で睡眠障害,以前に睡眠障害があった養育者の30人のインタビューを目標にして進めたが,やはり睡眠障害の真っただ中にある養育者の方は,インタビューに応じる精神的にも時間的にもゆとりがなく,研究計画の予定期間内では18名に留まっている。しかしインタビュー内容の逐語録の内容分析を進める中で,生後新生児期より睡眠リズムがとれない子,nicuに収容された児で昼夜逆転の子,夜泣きが何年も続き離婚寸前に至るケースなど,当事者の凄まじい生活内容が明らかになった。診断がはっきりせず,病院を転々とし,眠れないからと睡眠剤や精神安定剤の薬物治療をしても,不眠症状が治まらず,不登校の大学生を前に行き詰まっている養育者等,いずれも,こうした子どもを真正面から受け止め,家族,特に夫の協力が得られている場合と,家族が母親の育児が悪いと全く協力しようとしない場合では,その後の子どもの睡眠障害や成長・発達に大きな違いがみられ,子育てのサポート体制の重要性が明らかになった。また,低出生体重児の子どもで睡眠リズムが何らかの原因でうまく取れない子は,入院中から「寝ない子」で通っており,退院後からその後も何年も入眠困難,夜間の中途覚醒,夜泣きと養育者の生活を脅かす状態へと続いていく過程から,養育者や家族だけでといったレベルでの対応が難しい状況が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反構成的面接のデータ収集は当初の最低30人の目標には至らなかったが,発達障がいでかつ,子どもの睡眠障害を抱えた養育者の壮絶な日常の生活状況は想像を超えており,本当に貴重なデータを得ることになった。仮説として,子どもに対する睡眠教育の重要性をあげ,独特の育てにくさがある発達障がいの子どもに対しては,正常な子どもに行う内容では無理があるとしていたが,その通りの結果となった。睡眠障害の子どもと向き合っている養育者は,心身ともにギリギリの状態で生活しており,睡眠教育が重要ではあるが,睡眠障害が重度の時は,特に母親は正常な心理状態を逸脱しており,子どもとの自殺や,泣き声に反応して枕を押し付けたくなった等の語りから,虐待や自殺予防,家族崩壊の危機から守るためにもサポートシステムの必要性が明らかとなり,発達障がいの養育者には,睡眠改善プログラムと合わせてサポートシステム構築の必要性が明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,睡眠改善プログラム構築に向けて,「ねむれる絵本」の読み聞かせをして,その前後に質問紙調査と睡眠日誌をつけていただき,睡眠教育の効果を判断して睡眠改善プログラム作成に向け研究を進める。健常な子どもや発達障がいの子どもで,睡眠障害が出現していないか,あるいは軽度の時には,生活リズムを整えるためにも養育者に対して正しい睡眠教育を普及させていくことが必要であるため,睡眠改善プログラムの構築は計画通り進めていく。 発達障がいの子どもの睡眠障害の重症度に応じては,サポートシステム構築を考える必要がある。こうした子どもに対して,フィンランドでは,親子が収容できるシステムがあるという情報を得ることができたため,学術交流セミナーが8月に予定されているため,この機会を利用してフィンランドの施設の情報収集に行くことを計画し,それを日本においてのサポートシステムに生かしていきたい。 さらに,低出生体重児で生まれた子どもに睡眠障害が高く表れることについて,胎児・損性時期における生物時計と光環境との関係性にも着目して研究を発展させていくことが必要と考えられる。
|
Causes of Carryover |
反構成的面接調査が当初の計画通りに研究協力者が得ることができず,また,マットレス下設置型センサーによる実態調査も同様に協力者が少なく謝礼額が少なく済んだことも有る。さらに,インタビューによる分析でテキストマイニング購入の段階まで進められなかったため,年度計画していた予算を使い切ることだできずに今年度の費用に回すこととなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,テキストマイニングの講習参加費と,必要時,テキストマイニングのソフトを購入する必要がある。また,睡眠教育の効果を見るための質問紙調査票の印刷から研究協力者への郵送,データの入力等を業者に委託し進めるための予算と,8月にフィンランドに発達障がいで睡眠障害の子どもに対する収容施設を訪れ,睡眠障害の子どもへのサポートシステム構築に向けて情報収集の費用に充てる計画である。
|