2014 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中患者の音楽療法併用リハビリにおける看護支援プログラムの開発
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26463454
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 淑恵 東北大学, 医工学研究科, 特任助教 (90459131)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音楽併用リハビリ / 運動準備電位 / QOL / 中等度麻痺患者 / 看護支援プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,中等度麻痺患者の音楽療法併用リハビリテーションの看護支援プログラムを構築するために,高齢者を対象に研究を行う.本年度は,健康高齢者を対象に,本人が選好した楽曲と運動リズム形成に優れた楽曲の2種類を用いた音楽リハビリを行い,脳波測定で音楽の精神作用を客観的に評価することを計画した.高齢中等度麻痺患者のQOLを低下させる最大の問題が行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia; BPSD)ということから,評価指標の選定,使用楽曲の選定に時間を要した.その結果,健康な高齢被験者5名を対象に,実験を行った.現在,結果は現在解析中である. 本年度は健康な高齢被験者の実験を終了する予定でいた.BPSDへの音楽併用リハビリテーションの効果を検討するうえで,運動指標の評価の見直しが必要となった.当初,ADLの評価にBarthel Indexを用いる予定であった.しかし,短期長期的な介入効果を評価する指標としては,身体機能上のわずかな変化を評価するのが困難であると分かった.よって,脳波計測により,運動準備電位(readiness potential; RP)を解析することとした.解析方法や指示課題の変更により,本年度は試行実験が中心となった. 音楽を併用することでRPに異なる変化を認める傾向にあるため,今後は本実験デザインで研究を進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成26年度は,右利き健康被験者5名を対象として無作為に3群に分け,3種類の音楽課題と同時に,運動機能を評価するための視覚刺激キューを用いた選択反応運動課題を行わせた.3つの音楽課題は,(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA. Rossini 作曲「スイスの行進」),(2)本人の選好による楽曲,(3)楽曲聴取なしとし,選択反応課題中の脳波計測を行った.脳波の解析には運動準備電位を指標に用いた.行動データは,選択反応課題の反応時間を評価した.現在,各群が1名から2名と少ないため,統計解析およびデータの傾向解析に関しては実施できていない.また,福島市または仙台市内の病院に協力を得て,麻痺患者群を対象とした音楽療法併用リハビリの臨床応用に関する検証については,認知機能障害や聴覚障害を伴わない軽度から中等度までの麻痺患者(Brunnstrom Stage 3-4 ),30名を対象として,ランダムに3群に分け,(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA.Rossini作曲William Tell Overtureよりスイス軍の行進)を併用したリハビリ,(2)本人の選好による楽曲を併用したリハビリ,(3)通常のリハビリのみの効果を8週間行う予定であった.しかし,健康被験者のデータが解析完遂できておらず,患者を対象とした臨床介入に進めることができなかった.この理由としては,健康被験者のリクルートが推定より困難であったこと,機器の不具合によりデータ解析ソフト内に保存したデータ一新したため,比較検討できなくなったことなどがあげられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には,精神神経疾患や整形外科疾患を有さない右利き正常被験者の公募で集まった25人をランダムに3群に分け,選択反応運動課題を行わせ,同時に(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(曲名)および(2)本人の選好による楽曲を聴取させることによる運動機能の変化を測定して,音楽を聞かせない場合と比較する.その上で,福島市または仙台市内の病院に協力を得て,麻痺患者群を対象とした音楽療法併用リハビリの臨床応用に関する検証を行う.具体的には,認知機能障害や聴覚障害を伴わない軽度から中等度までの麻痺患者(Brunnstrom Stage 3-4 )30名を対象として,ランダムに3群に分け,(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA.Rossini作曲William Tell Overtureよりスイス軍の行進)を併用したリハビリ,(2)本人の選好による楽曲を併用したリハビリ,(3)通常のリハビリのみの効果を8週間行う.対象患者の性別,年齢,麻痺の程度などは各群調整し被験者を公募する. 研究最終年度に向けて,正常被験者と患者群のデータの最終的とりまとめと統計的解析を行って,客観的な評価をおこなう.研究結果は,学術大会での発表,学術雑誌に投稿して,研究成果を積極的に社会的に還元する予定である. ただし,平成26年度の計画内容が完遂していないため,データの解析等に時間を要し,計画内容を一部変更する可能性がある.また,患者群への介入を実施できる施設が最終決定していないため,介入開始時期が遅れる可能性がある.その上,介入後3か月の結果を追い,音楽療法併用リハビリの長期効果を検証する予定である.よって,患者群への介入時期や実施患者の累計が30人に満たない場合は,平成28年度に計画を繰り越して追加データ収集をおこなう.
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Causes of Carryover |
本年度,健康被験者のデータが解析完遂できておらず,患者を対象とした臨床介入に進めることができなかった.そのため,謝金として計上した予算を計画通りに執行することができなかった.健康被験者を対象とした研究を計画的に勧めることができなかった理由としては,所属機関の移動に伴い,本研究に取り組む時間が十分に確保できず,エフォートが下がったことも一因となった.次年度は状況の改善が可能となるため,計画に準じた研究進捗で予算の執行を行っていく. 物品費では,データを保存加工するうえで,迅速に作動するPCが必要となったため,デスクトップのパソコンを購入した.これまでデータを管理していたデスクトップパソコンが不具合をおこし,データの保管・管理に支障をきたしたため必要不可欠な機器として購入し対応した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度,計画通りに被験者および患者を対象とした研究を遂行し,予算計上をしている謝金を使う.また,十分なデータを収集し,分析できなかったため,学会発表を計画することができなかった.本年度は蓄積された健常者データを関連学会に発表し,患者データの進捗状況によっては別途学会発表を計画し,旅費として計上した予算を執行する.物品費に関しては,不具合を起こしたパソコンを購入したが,データ解析のために必要な脳波解析ソフトを購入し,運動誘発電位の解析を迅速に行えるようパソコン周囲環境を整えていく.
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