2015 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中患者の音楽療法併用リハビリにおける看護支援プログラムの開発
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26463454
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 淑恵 東北大学, 医工学研究科, 特任助教 (90459131)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音楽 / 運動準備電位 / タッピング / 補足運動野 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,中等度麻痺患者の音楽併用リハビリの看護支援プログラムを構築するために,健康被験者を対象に最適な音楽の選定について検討している.本年度は,健康被験者10名を対象に,研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲を聴取しながら指タッピング運動を行い,脳波計測により運動準備電位(bereitschaftspotential; BP)とNS(negative slope)を解析した.これらの指標は,BPが運動開始前の1-2 sec.,NSが500 msec. に出現する陰性電位で,随意運動に特異的な運動皮質の準備状態を反映する.つまり,音楽を聴取し指タッピング運動を行うことで,運動準備電位の潜時が増大することが明らかになれば,補足運動野などの運動開始時の運動制御に影響を与える可能性が大きいということになる. 実験では,音楽課題(結婚行進曲Mendelssohn作曲「真夏の夜の夢」より)と,メトロノーム(81 Bpm)課題を600 sec.で提示し,4回繰り返し聴取させた.その間,被験者には開眼し注視点を見て,8拍ごとに一回程度の指タッピングを行うよう指示し,約600試行の指タッピング時の脳波を加算平均し検討した. その結果,C3領域のBP成分が,音楽聴取時にメトロノームより有意に大きい潜時を示した(p=0.005).CzおよびC1・C2・C4の領域でもC3領域と同様に,BP成分は音楽で大きい値を示したが有意差はなかった.NS成分においては,課題間で有意差はなかった. 以上より,指タッピングのような微細で協調が必要とされる随意運動では,音楽を併用した際に運動準備電位が大きくなることが示された.これは,補足運動野の神経活動が大きいことを示し,随意的な意図した行動を惹起するために音楽を併用した運動が推奨できる可能性について示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度に,健康被験者のリクルートが進まないうえ,機器の不具合が生じ,データ解析ソフトを購入しなおした.その関係で,27年度も引き続き健康被験者のデータを収集した.27年度も脳波計測により頭部へのペーストを塗布する関係で被験者の公募に苦戦したが,着実にデータの集積が行えている.確実なデータ収集には,電極の電気抵抗を減弱する対策は必要となるため,頭皮および顔面のアルコール綿での消毒とペースト塗布は欠かせない.実験終了後に毛髪についたペーストを拭き取り,乾燥させるための対策(タオルドライとドライヤー使用)などの改善処置を準備し,最終年度となる本年度にも引き続き健康被験者のデータを収集する必要があるだろう.また,本年度は健康被験者への実験で得られた音楽併用運動の効果を解析し,同時並行で,脳卒中患者への音楽併用リハビリを実施し,支援プログラムの有用性を評価する.本来であれば最終年度である本年には,健康被験者で得られたデータより検討した音楽併用リハビリのプログラムを,脳卒中中等度片麻痺患者のリハビリに反映し,評価する予定であった.これについても,初年度の計画が順調に進まなかった影響により,介入研究に遅れが生じている.ただし,本年度,介入フィールドも確保でき,健康被験者のデータ収集が終わり次第,患者への介入に移行できる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は20歳代から70歳代にある健康被験者を30名程リクルートし,引き続きデータを収集し,音楽とメトロノームの各課題下における指タッピング運動時の運動準備電位の違いについて検証する.運動準備電位の分析より導き出される結果の予測に関しては,現在得られている傾向同様に,音楽におけるBPの潜時が有意に大きくなる傾向にあると仮定している.ただし,現在はC3でのみの有意差であるため,BPが検出されやすいCzなど,他の電極でも有意差が出る傾向にあるかと考えている.また,被験者のリクルートに関しては,今後も引き続き,公募制で行う.現段階で研究参加の希望者を募ったところ,予定人数が確保できる予定である.しかし,研究責任者が28年度より所属機関に変更があったため.研究倫理の再申請があり,6月ごろから実験を再開する予定である. また,脳卒中中等度麻痺患者のリクルートは所属機関付属の回復期リハビリテーション病院で行う予定である.まずは9月ごろより,10名程度の患者を対象に,音楽を併用したリハビリテーションプログラムを提供し,6か月程継続した上での効果について解析,検討する予定である.
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Causes of Carryover |
健康被験者および脳卒中中等度麻痺患者への介入が遅れ,謝金等の支出が少なかったため,本年度の予定支出を下回ってしまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は健康被験者および脳卒中中等度麻痺患者への介入が中心となるため,順当に予算を消費していくことができる予定である.健康被験者のデータがまとまった時点で,論文作成,論文投稿へと移行していき,介入研究の基礎論文を広く告知できるよう,活動を行っていく予定である.
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