2015 Fiscal Year Research-status Report
認知症の行動・心理症状(BPSD)に対するマニキュア療法の有効性の検証
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26502018
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
佐藤 三矢 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (10368722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 輝夫 大阪行岡医療大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00412247)
岡村 仁 広島大学, その他の研究科, 教授 (40311419)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知症 / 高齢者 / 女性 / BPSD / マニキュア療法 / 効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
【本研究の概要】 本研究の対象者は、認知症を呈している老人保健施設に入所中の女性高齢者である。介入内容については、対象者の左右手指爪のすべてにおいてマニキュアを施術するものとしている。主たる調査(評価)の内容としては、マニキュア施術という介入によって、対象者におけるBPSD(認知症による心理・行動に関する症状)やQOL(生活の質・人生の質)が、どのように変化(改善)するのかをシングルケース実験法を用いて追跡する。 【平成27年度に実施した研究の結果】 平成26年度に実施した予備的な介入方法を基盤とし、平成27年度は合計23名の対象においてマニキュア介入の実施と評価を実施した。その結果、QOL(生活の質・人生の質)を客観的に示す評価尺度であるQOL-Dの下位項目や、認知症高齢者におけるBPSD(認知症による心理・行動に関する症状)の程度を客観的に点数化する尺度であるNPIにおいて統計学的に有意な改善傾向が認められた。 【意義・重要性】 本邦では認知症を有している高齢者の人口が増加し続けており、認知症高齢者における人権や尊厳の確保の困難さとともに、介護者(家族・介護現場のスタッフ)における介護負担の増大が社会的な問題となっている。平成27年度の研究では、認知症を有する対象者の手指爪に対してマニキュアを施術するだけの簡単な介入によって、対象者におけるQOLの改善やBPSDの軽減を示唆する有意な傾向が確認された。このことは、未曽有の超高齢社会にある現在の日本が抱えている社会的な問題を軽減させる一助となりえる知見である。また、世界でも認知症者は20年ごとに倍増し、将来1億人を超えるとされている(World Alzheimer Report 2009)。よって本研究の知見は、国際社会における貢献をも期待でき、きわめて有意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施前、対象者に対してマニキュア療法の介入を実施することによるBPSDの改善を予測した。そして、BPSDの改善によって対象者が潜在的に有している認知機能やADL能力の出現、それにともなう介護者における介護負担感の軽減についても期待していた。 平成27年度の取組においては、マニキュア介入によって「BPSDが有意に軽減する傾向」が確認され、それとともに「介護者における負担感の有意な軽減」を認めることができた。また、QOLの有意な向上も確認することができ、このことは概ね当初の計画どおりに進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は9月末を目処にして、引き続きマニキュア療法の介入を続け、対象者を増やす予定である。10月以降は、本研究の成果を明文化(英文化)し、老年精神医学系の海外ジャーナルに投稿するとともに国内ならびに国外の学会でも発表を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度、海外の精神医学系の学会において、それまでの成果についての発表を実施する予定であったが、大学公務の関係から国際学会への参加と発表を行うことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、海外の「老年精神医学系雑誌」への投稿に関わる費用、学会への投稿や参加にともなう参加費や旅費等に使用する。
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