2017 Fiscal Year Annual Research Report
Japanese Contract Law Reform and the Effect on the Japanese real estate markets
Project/Area Number |
26504011
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
瀬下 博之 専修大学, 商学部, 教授 (20265937)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Caveat Emptor / Caveat Venditor / Adverse Selection / 瑕疵担保責任 / 保険契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年4月に施行される「民法の一部を改正する法律(債権法改正)」について、その不動産取引へ与えうる影響を経済学的な観点から検討・分析した。今回の改正において重視したのは、瑕疵担保責任の概念が債務不履行責任という概念上で捉えられるようになったという点である。なぜならこの規定は、欧米に比較して低いとされる中古住宅市場の取引において重要な規定だからである。分析においては、今回の改正が、従来の大陸法的な契約法の内容から、英米法的な内容へと変わりうるものと捉えられてきたことを前提に、英米法での取引ルールとして主として採用されている買い主責任と日本の瑕疵担保責任で具現化されてきた売り主責任の二つのルールを比較して議論する必要がある。買い主責任とは、取引された商品の品質が悪くても買い手の自己責任とされるルールであり、売り主責任とは、その際に補償や修繕などが売り手に求められるルールである。 注意すべきは、取引における売り手と買い手の間で、情報の非対称性と呼ばれる問題が存在していることである。たとえば、売り手の方が買い手よりも取引する商品や不動産の品質についてより良く知っている。他方、買い手の嗜好やリスク負担能力などは、買い手の方がよく分かっている。分析の結果、売り手が自身で利用している商品や不動産を取引する中古市場では、通常の製品と違い、情報の非対称性があっても、売り主責任より買い主手責任の方が効率的であることが示された。特に売り主責任で瑕疵担保責任を履行させるときに法的費用が発生する場合、市場そのものが機能しなくなる可能性があり、買い手責任の下では、いわゆる逆選択と呼ばれる問題が発生しうるとしても、売り主責任よりも望ましい可能性がある。さらに民間の品質保証制度の利用可能性についても検討し、その場合でも買い主責任の方が効率的になりうることを示した。
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