2014 Fiscal Year Research-status Report
月面や火星における生命維持環境創成のナノレベルでの”その場”観察による研究
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26506011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塚本 勝男 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60125614)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 月面 / コンクリートの変質 / その場観察 / アラゴナイト / カルサイト / 溶解 / 核形成 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
月や火星などで人類が長期的に生活することを想定すると、生命維持に必要な酸素と水を作るだけでなく、安定した生命維持環境を長期的につくる必要がある。本年度は、まず、月面で安定供給する方法の基礎研究を行った。そのため、月面のレゴリスに多く含まれるイルメナイト結晶(FeTiO3)を真空加熱して酸素を、あるいは、水素雰囲気中で低温で水を、直接、効率よく抽出する方法を考えた。さらに、その水を使ってつくるコンクリート主成分鉱物(水酸化カルシウム)の安定性をその場観察法を駆使して研究した。 地球上のセメントの劣化では炭酸ガスをふくむ炭酸水との反応が重要である。この様子を位相シフト干渉法などを駆使して変質速度をナノレベルで測定し、月面での変質速度と比較する基準値を得た。それによると、水酸化カルシウムは水と反応することで、アラゴナイト、Ca(CO3)2を結晶表面に析出させ、それが、時間とともに別の構造をもつカルサイト、Ca(CO3)2に変化して劣化が進むことがわかった。つまり、変質には2ステップの溶解、核形成が連続的に必要であることも初めてわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンクリートの変質研究は構成物である鉱物界面でのミクロな現象としては捉えられてこなかったが、本代表者らは、コンクリートの主要な鉱物である水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の結晶界面で、炭酸水と反応して方解石やあられ石に変質していく過程を、ナノレベルでの“その場“観察することに初めて成功した。併せて、その変質や交代反応速度を月面での劣化速度と比較するための対象データが取得できたことで、順調に研究が進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
イルメナイト結晶を利用した水の製造のナノレベルの観察を行う。それには鉱物上でのわずかな水(一分子の厚み)を検出できる位相シフト干渉による精密な観察が必要である。その使用のための装置の調整(東北大学から名古屋大に移設した)を早急に行なう必要がある。結晶表面での水の製造に関わる分子レベルの研究は前例がないが、この干渉計によって水の発生メカニズムの詳細が分かると思われる。 宇宙環境での太陽風によるコンクリートの劣化を模擬する実験を行なう。そのために、原子解像度をもつFM-AFMを使用する。これは、これまでの本研究者らが使用してきた大変敏感な方法であり27年度より観察を開始する。
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Causes of Carryover |
東京出張を取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の出張費に充填する。
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Research Products
(34 results)