2016 Fiscal Year Research-status Report
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26506019
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
平井 宏昭 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50173208)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イネ / 超矮性 / 閉鎖環境 / 栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際宇宙ステーションなどで行われる宇宙での長期栽培は、生物学・生産上の基礎的課題を明らかにして地球の生物と生態系を理解するだけでなく、将来的な宇宙における植物栽培に関わる諸問題の解決にも重要である。特に植物の生活環と遺伝的変異に対する宇宙環境の影響の解明は、長期の有人宇宙活動に必要な生命維持システムの確立にも不可欠である。月面基地や有人火星探査のための食料生産への関心も高まってきている。これまでに宇宙で長期栽培された植物は葉菜類、シロイヌナズナ、コムギ、オオムギなどでイネの栽培は行われていない。イネは日本の米食文化を象徴し、宇宙における日本特有の栽培植物候補として極めて有用である。一般に栽培されているイネは草丈約1mと現状では、宇宙の限られた空間で栽培するには不適であり、矮性イネの利用が適する。 そこで、育苗中の実生苗から見出された後、15世代にわたり栽培を続け、品種登録した固定品種の超矮性イネ‘小僧の栖’を宇宙で栽培するイネの候補として提案した。本種は世界最小のもち種であり、水田において草丈約30cmのコンパクトな草姿は、宇宙の狭い空間での栽培に最適である。本種は既に航空機による微小重力実験に利用し、宇宙での栽培に向けた基礎データの収集を行っている。水田における慣行栽培では、一般のイネに比べ収量が半減するものの、収穫は容易である。しかし、閉鎖環境内における本種の栽培は、ほとんど検討が進んでおらず、本種を狭い空間内で短期間に収穫するための装置と管理方法の開発が必要である。また、宇宙での食料として栽培するには、食味についての評価も必要である。平成28年は容器栽培による生育・収量を調査するとともに、平成27年に引き続き、水田における栽培により、成分・食味について明らかにした。さらに、新たなイネ栽培装置を企画し、新規のLED照明を備えた装置を組み立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
超矮性イネ‘小僧の栖’は世界最小のもち種であり、昭和61年に育苗中の‘アキシノモチ’の中から見出された自然突然変異体である。水田において草丈約30cmのコンパクトな草姿は、宇宙の狭い空間での栽培に最適である。また、航空機による微小重力実験に利用し、宇宙での栽培に向けた基礎データの収集を行っている。 平成26年度は本研究を本格的に進めるための実験を計画し、先ずは、多くの栽培条件による実験や食味試験に供試できる十分な量の種子確保に向け、水田土壌を用いた露地栽培を行った。これにより、次年度以降の種子は確保でき、継続的な栽培により今後の実験用種子供給が安定して行えるようになった。簡易イネ栽培装置については、コンパクトな市販植物育成インキュベータと種々のLED照明を購入し、栽培実験の開始を計画した。また、購入したインキュベータはメーカー事情により、今後入手できないことが判明した。 平成27年度は簡易イネ栽培装置の実験に注力する予定であったが、‘小僧の栖’について物理化学的分析と食味評価の機会が得られたので、水田において食味評価に必要な収量を確保するための栽培を行った。収穫後には、平成28年2月実施の航空機による微小重力実験が急遽決まり、実験の対応に追われたた。航空機実験では、プロトタイプの小型簡易栽培装置を搭載し、微小重力下での動作確認ができた。また、この間に植物育成用インキュベータの新製品を企画開発した。 平成28年度は露地での容器栽培による生育・収量を調査するとともに、平成27年に引き続き、水田における栽培により、成分・食味について明らかにした。さらに、新たなイネ栽培装置を企画し、新規のLED照明を備えた装置を試作した。簡易イネ栽培装置による栽培実験は大幅に遅れ、平成29年度の実施となった。
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙での超矮性イネのためのコンパクトな栽培装置の開発を目標に、これまで対応できなかった簡易イネ栽培装置の下記要素技術などを検討する。また、栽培条件を様々に変え、モニタリングによるイネの生育診断をしながら、好適な環境条件を探索する方法についても検討する。 LED照明システム:宇宙実験で制限要因となる空間および電力を考慮し、かつ高等植物の生育に十分な光環境を与えられる植物育成用LED照明として選んだ機種の性能評価とイネの生育状況を確認する。 気流制御:植物群落内において葉の振動を生じず、均一な強さで流れるよう工夫する。 培地:水田土壌を主とし、問題が生じる場合には、ロックウール、ハイドロボール、人工培土による新たな培地を探索し、比較栽培を実施する。また、水耕栽培も行い、適切な培養液の確認に利用する。 培養液:本研究に適切なイネの培養液を選ぶ。
要素技術の検討を引き続き行うとともに、異なる管理方法による栽培を試み、栽培における問題点を検討する。航空機実験の経験を踏まえ、省スペース、省エネ、無重力仕様の装置化に向け、植物育成用インキュベータの制御能力を改善し、プロトタイプの宇宙用栽培装置を協力企業とともに提案する。そして、4年間にわたる研究の総括とする
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Causes of Carryover |
簡易イネ栽培装置による実験予定で物品費を確保していたが、平成27年度に続いて平成28年度も‘小僧の栖’について水田栽培のコメの食味を検討する機会が得られた。このため、水田栽培を中心に研究を行ったことと9月に急遽航空機による微小重力実験の機会を得たことで、本年度はイネの収穫時期と航空機実験の準備と実験が重なったために収量調査ができないままに、忙殺された。これらの理由により、平成28年度が最終年度であったが、平成29年度まで期間延長し、簡易イネ栽培装置の実験を平成29年度へ変更し、費用を確保したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度であり、大幅に遅れてしまった栽培装置による実験を重点的に実施するため、物品費として種々の消耗品購入に加えて謝金が必要であり、全額使用する。
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Research Products
(10 results)