2015 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクスで解明する宇宙環境におけるマッスルメモリー
Project/Area Number |
26506021
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉原 利典 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 特任助教 (20722888)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 久士 順天堂大学, その他の研究科, 教授 (70188861)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 廃用性筋萎縮 / マッスルメモリー / ヒストン修飾 / 運動不足 / トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、活動制限による不活動はラットヒラメ筋のヒストンH3におけるK9のトリメチル化(K9me3)を増加させるが、運動・トレーニングの実施はK9me3の発現を低下させることを示した。本年度は、上述した運動刺激および不活動刺激に対するマッスルメモリーが、その後の不活動による筋萎縮の抑制に貢献するか否かについて検討を行った。 前年度までと同様に、若齢のWistar系雄性ラットを対照群、運動不足群、トレーニング群の3つのグループに分け、尾部懸垂開始前(8週間の運動不足およびトレーニング後)、3日後、7日後に下肢骨格筋(ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋)を摘出した。なお、運動不足刺激およびトレーニング刺激は前年度までと同様の方法で与えた。 本研究の結果、ヒラメ筋、足底筋および腓腹筋の筋重量は、時間の経過とともに尾部懸垂による有意な低下が認められた。しかしながら、いずれの筋においても長期間の持久的なトレーニングによる抑制効果は認められなかった。興味深いことに、ヒラメ筋および腓腹筋のような遅筋線維を含む骨格筋においては、8週間の運動不足による相乗的な筋重量の低下が認められた。すなわち、長期間の運動不足刺激により構築されたマッスルメモリー(リジン残基9のトリメチル化等)が廃用性筋萎縮時において負の影響をもたらす可能性が考えられる。 今後は、本年度までと同様に解析を進め、宇宙環境における廃用性筋萎縮に影響尾を与えるエピジェネティクス制御機構について明らかにしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は長期間(8週間)のトレーニングおよび運動不足が、その後に招来される廃用性筋萎縮に与える影響について検討を行ったが、本年度に行うべき実験の筋サンプルの最終は既に終了している(n=49)。現在は、ウェスタンブロット法を用いたヒストン修飾解析を実施しているところである。タンパク質発現解析が終了次第、遺伝子発現解析およびクロマチン免疫沈降法を用いた塩基レベルでのヒストン修飾解析を実施する予定である。 以上のことから、最終年度で本研究を完遂するための進捗はあったと考えられるため、本年度内に行うべき研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度までに採集した筋サンプルの解析を進めるとともに(タンパク質発現解析、遺伝子発現解析およびクロマチン免疫沈降によるヒストン修飾解析)、国内外の学会においてこれまでの研究成果を発表する予定である。また、これらの成果は国際的な学術論文に積極的に公表できるように準備を進めていく。
|
Causes of Carryover |
本年度に参加した国際学会が年度をまたいだ開催であったことから、本年度使用する予定であった外国旅費を会計処理の都合上、前年度末に使用することになったため次年度使用額が生じることとなった。また、タンパク質発現解析および遺伝子発現解析に必要な消耗品の一部は、前年度までに購入したもので賄うことができたため、消耗品費の使用も当初の予定よりは抑えることができた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、これまでに得られた筋サンプルを用いて、タンパク質発現解析、遺伝子発現解析およびヒストン修飾解析を高頻度で実施していく予定なので、使用用途としては当初の計画と変更なく、解析に必要な消耗品を購入する予定である。 また、当初は研究成果発表を行う学会として、国際重力生理学会を選定していたが、本研究のデータ公表や研究調査の場として考えた場合、アメリカスポーツ医学会の方が適切であると判断し、そのために渡航先や日数、費用に変更が生じることとなった。その外国旅費の不足分は、本年度から繰り越した外国旅費を使用する予定であり、他の項目は当初の予定通り使用するものとする。
|