2014 Fiscal Year Research-status Report
福島県の帰還困難区域内でみられる牛の皮膚多発性白斑の病態解明
Project/Area Number |
26511002
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐々木 淳 岩手大学, 農学部, 助教 (60389682)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 病理学 / 黒毛和種牛 / 福島 / 帰還困難区域 / 放射線 / 白斑 / 甲状腺 / 東京電力福島第一原子力発電所 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、福島県の帰還困難区域内で飼育・維持されている39例の黒毛和種牛について、皮膚にみられる多発性白斑やその他の病変の有無を病理学的に検索した。症例はHR牧場(24例)、O牧場(10例)、HG牧場(4例)、I牧場(1例)の合計39例で、年齢は11歳から原発事故後に生まれた2歳未満までの間で、去勢雄が18例、雌が21例であった。これらのうち、皮膚に多発性白斑がみられたのは、HG牧場の3例のみであった。その他の臨床症状として、O牧場の2例とI牧場の1例が起立困難がみられたが、その他の症例には著変は認められなかった。 肉眼所見として、皮膚の多発性白斑がみられた症例では、約1cm程度の被毛の脱色とともに皮膚も円形状に退色していた。後躯麻痺を示したO牧場の2例とI牧場の1例において、脊髄の硬膜外における肌色から白色を呈する不整な腫瘤が多発性に認められた。I牧場の1例では、心臓の心耳や心筋、第四胃壁および尿管などにおける腫瘍浸潤と、腸間膜リンパ節をはじめとするほぼ全身リンパ節の腫瘍化がそれぞれ認められた。甲状腺の腫大は、O牧場の1例(81.3g)、H牧場の1例(82.6g)の2例でそれぞれ認められた。 組織学的に、皮膚の白斑病巣では、表皮や毛におけるメラニン色素の減少や消失が限局的に認められた。O牧場の2例とI牧場の1例の脊髄硬膜外などに認められた腫瘤は、B細胞性リンパ腫と診断した。免疫組織化学的に腫瘍細胞はCD3に陰性、CD20に強陽性、Ki-67にはほとんどの腫瘍細胞が陽性を示した。甲状腺の腫大が認められた2例は甲状腺腫と診断した。いずれも異型性に乏しい上皮性細胞により構成される濾胞構造の増殖が認められた。濾胞内には、好酸性均質なコロイド物質が貯留していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は39例の黒毛和種牛を検討する機会を得ることができ、サンプリングの箇所についても全身諸臓器にわたって広範に採材することができた。それらのサンプルについては、現在のところ当初の予定通り検討を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、光学顕微鏡を用いた病理学的検索を継続しているが、今後は電子顕微鏡を用いた超微形態学的検討により、メラノサイトとメラニン色素の局在を明らかにしていく。
|